【世界初】南極の深海でサメが撮影される!巨大ザメの正体とは?

世界で初めて、南極の海で泳ぐサメが撮影されました。

2025年1月、南極半島近くのサウス・シェトランド諸島沖、水深490mほどの深海に設置されたカメラに、大きなサメが泳ぐ様子が記録されていました。

映像に映っていたのは推定3~4mほどオンデンザメの仲間で、海底に沿ってゆっくりと泳いでいる様子が確認できます。

実際の映像はコチラ↓

この映像を撮影した研究チームの一員であるアラン・ジャミーソン氏をはメディアの取材に対し、南極にサメがいるなんて予想外だったとするコメントをしています。

  • では、南極にサメが現れるのはどれほど珍しいのか?
  • 映っているサメはどの種のサメなのか?
  • サメが現れたのは環境変化の影響なのか?

今回は「南極で撮影されたサメ」というテーマで、上記のような疑問にお答えしていきます。

目次

解説動画:【世界初】南極の深海でサメが撮影される!巨大ザメの正体とは?

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2026年3月4日です。

そもそも寒い海にサメはいるのか?

「南極でサメが撮影された」というニュースを聞いて、

そんな寒い海にサメって棲めるの?

と驚いた人もいると思います。

一般的に「サメは暖かい海にいて、夏の時期の海水浴場に現れたりサーファーを襲ったりする」というイメージがあると思います。

サメ映画でもサメが冷たい環境に出てくるのは、だいたいキワモノという印象です・・・。

しかし、実際は水温が非常に冷たい環境にも多くのサメが生息しています。

分かりやすい例が深海ザメです。ミツクリザメやラブカは水深1000m以上の深海にも生息しているとされていますが、そこまで深くなると水温は2~4℃程度になります。

他にも、ネズミザメというサメはベーリング海やアラスカ湾、オホーツク海などの冷たい海にも分布しています。

さらに、南極の反対側である北極の海にはニシオンデンザメというサメが生息しています(このサメについては後でまた触れます)。

ミツクリザメ
ネズミザメ

このように、冷たい水温の海に暮らすサメは結構います。

そのため、「南極のような冷たい海にサメがいた」ということ自体は、そこまで驚くべきではありません。

南極でサメが記録されるのは本当に初めてか?

冷たい海にいるサメが珍しくないのだとしたら

南極でサメが確認されたのは本当に初めてなの?

という疑問も出てくると思います。

これに関する僕の見解は、「非常に稀なことは確か。そして映像で生きている姿が捉えられたのは恐らく初めて」です。

2001年に遠洋水産研究所から公開された研究報告によれば、ニシネズミザメやミナミカラスザメなどのサメ類が南極海やその周辺海域で捕獲されています。

具体的な捕獲場所までは分からなかったのですが、少なくとも南極海の周辺でサメが見つかった事例はこれまでもあったようです。

研究チームの一員ジャミーソン氏もメディアの取材の中で南極にサメがいないことを「a general rule of thumb」と表現していました。

We went down there not expecting to see sharks because there’s a general rule of thumb that you don’t get sharks in Antarctica

First-ever shark recorded in Antarctic waters filmed at 490 meters in near‑freezing water』より引用

「rule of thumb」を直訳すると親指のルールですが、これは英語のイディオムで「経験則」・「大まかな基準」・「暗黙のルール」などを意味します。

つまり、「南極にサメは絶対にいない!いるはずがない!」と否定されてきたわけではないものの、いないものと思われてきたという感じだと思います。

仮に南極で獲れたサメの標本記録があったとしても、少なくとも生きて泳ぐ姿が撮影されたのは今回が初めてでしょうね。それくらい今回の映像は貴重です。

映っていたサメはオンデンザメの仲間

では、映っていたサメの正体は何でしょうか?

現時点での見解を先に述べると、「オンデンザメの仲間であることは確かだが、種名までは特定できない」です。

オンデンザメの仲間たち

オンデンザメはツノザメ目オンデンザメ科オンデンザメ属に分類されるサメです。日本近海にも分布していますが、深海域に生息するサメであり、滅多にお目にかかることはできません。

もっとも一般的にはその近縁種であるニシオンデンザメの方が有名かもしれません。同じくオンデンザメ属のサメで、こちらは日本近海にはおらず、北極海や北大西洋などに分布しています。

ニシオンデンザメは水晶体の放射性炭素同位体を用いた年齢推定で、全長5mの雌の年齢が392歳であると推定されました。この推定方法には多少の誤差があるものの、現時点でニシオンデンザメは世界最長寿の脊椎動物とされています。

オンデンザメ類の見分けは難しく特定は困難

では映像のサメはどっちなのか?あるいは別のサメなのか?はっきりさせたいところですが、この映像だけでは僕は明確には分かりません。

オンデンザメ類を見分けるには、二つある背鰭間の距離と吻先から一番前のエラ孔までの距離の比率、歯の本数、背鰭の高さなどの細かいポイントを確認する必要があります。目視だけでの断定はまず不可能です。

なお、このニュースを報じるほとんどのメディアは「Sleeper shark」というオンデンザメ類のどの種に使っても良さそうな名称を用いていましたが、一部の記事は「Southern sleeper shark(Somniosus antarcticus)」と学名付きで種まで紹介していました。

Southern sleeper sharkは名前の通り南半球で確認されているオンデンザメの仲間です。これまで分かっている分布域的にも、このSouthern sleeper sharkという説が最も有力な気がします。

一部文献でニシオンデンザメが南半球や南極周辺海域にいると記載されているのも、このSouthern sleeper sharkであった可能性があります。

ただし、どの記事も「it might have been a Southern sleeper shark」や「what is likely a southern sleeper shark」などの記載だったので、まだ確定的な情報は公開されていないようです。

上記のような事情を考慮し、現時点では「オンデンザメの仲間」とだけしておきます。

映像でガンギエイの仲間も確認

今回公開された映像に実はエイも映っていました。このエイが気になっていた人もいたようなので簡単に触れておきます。

大前提として、サメとエイは共に軟骨魚類という、骨格のほとんどが軟骨でできている動物です。その中でもサメとエイは板鰓類という非常に近いグループの仲間に分類されています。

「このエイについては珍しくないのか?」と思うかもしれませんが、エイが南極の海にいることは前から知られていたそうです。

このエイも正確な種は分かりませんが、冷たい水温の深海にいることや体の形状からガンギエイの仲間なのは間違いないと思います。

ガンギエイ目の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 深海域や冷水域など水温の低い場所に多くが生息する
  • 一般にエイとしてイメージされるアカエイに比べるとスペードあるいはステルス機みたいな体型をしている
  • エイの中では珍しく卵生(ほとんどのエイが胎生)

日本近海にもガンギエイの仲間は生息していて、背中の模様が特徴的なコモンカスベやメガネカスベ、ドブカスベなどが挙げられます。食用にされることもある一方、個体数の減少が心配されるグループです。

今回はこれくらいで紹介は留めますが、ぜひガンギエイ、カスベの仲間にも今後注目して欲しいです。

ツマリカスベ
ドブカスベ

南極のサメ出現は地球温暖化の影響か?

今回南極で初めてサメが撮影された件について、

気候変動の影響で海水温が上がったことの表れではないか?

と心配する声もありました。

気候変動の影響とは必ずしも言えない

現時点での僕の見解は「必ずしもそうとは言い切れない」です。

先程触れた通り、南極海またはその周辺海域でのサメの記録はこれまでもありました。

また、南極の海中に設置されているカメラ自体が少ないでしょうし、このカメラが運用されているのは南極における夏の期間12~2月だけなんだそうです。

さらに、オンデンザメ類はもともと水温がかなり低い環境に生息することが分かっています。

以上のようなことを考慮すると、単純にこれまで撮影されてこなかっただけで、気候変動の影響に関係なく元から南極でサメが泳いでいた可能性もあると思います。

未知の生態系がいつの間にか壊れないように

ただし、南極における環境問題が深刻であることもまた事実です。

地球温暖化による氷床の融解、それに伴う海水面上昇や地球規模の海流の変化は、南極で暮らす生き物だけでなく僕たち人類全体に多大な影響をもたらす恐れがあります。

また、昨今問題視されているマイクロプラスチックが南極でも確認されています。南極は文明社会から遠い場所に思えますが、僕たちの生活から漏れ出た汚染が届いてしまっているんです。

今回のような興味深い発見、今後明らかになるかもしれない未知の生物や生態系も、僕たちが引き起こす環境問題によって、知らぬ前に壊れつつあるのかもしれません。

そんなことにならないよう、一人一人が声を上げ、できるところから環境に配慮するのは大事なのかなと思います。

参考文献

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