『温泉シャーク2 九州大決戦』のネタバレあり感想&サメ解説【BGサメ映画レビュー】

邦題温泉シャーク2 九州大決戦
原題温泉シャーク2 九州大決戦
公開年2026年
監督井上森人
出演柴田瑠歌 / 椎名すみや / 金子清文
制作国日本
ランク準A級(世間的にはB級だが個人的にはお勧めしたい。)
ストーリー★★★★☆
演出や絵作り★★★☆☆
サメの造形★★★☆☆

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目次

あらすじ

暑海市の温泉シャーク騒動から2年後。温泉から現れたサメを退治した男”サメ太郎”の伝説が残る九州の湯国町は、アジアのイエローストーンと称される観光地だったが、現在は活気を失っていた。

ある日、湯国町で暮らす女子高生・速見天満は、町で祀られている”サメ太郎”の象を壊してしまう。そして、像の中から一尾の温泉シャークが解き放たれる。

その日から湯国町では行方不明の事例や不審な事故が連続するようになる。

天満は「自分がサメを解き放ったせいだ」と思い、観光協会職員の桐咲怜に打ち明ける。

しかし、湯国市では温泉シャークを利用した大掛かりな計画が進行しており・・・。

これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。

前作を超えるブッ飛びを見せつけた待望の続編

前作の時点で既にふざけ倒していましたが、今回はそれを遥かに上回ってきました。

舞台は九州にある架空の観光地・湯国町(熊本県小国町がモデル)。「温泉に現れたサメと、鍛え抜かれた男が闘う」という伝説が残る町で暮らす女子高生、天満が主人公です。

亡き父の遺したラジオから流れる曲に導かれた天満が温泉シャークの封印を解くという、村ホラー的な展開から始まります。てっきりこのサメが人を襲い始めるのかと思いきや、事態は予想外(というか誰も予想できねーよ)な展開に・・・。

天満も頼りにしていた若いイケメン観光協会職員の桐咲が、怪しげな笛で温泉シャークを操って人々を襲わせていた黒幕であると発覚。しかも桐咲の正体は、クローン温泉シャークと人間のエネルギーを使って生み出されたハイパー・コンドロイチンによって若返った製薬会社の創業者・龍神豪士郎、a.k.aパーフェクト・コンドロイチン・ヒューマンだったのだ・・。

この時点で「本当に悪いのは人間だった」という、サメ絡みのクライムアクションの路線を辿るのかと思いきや、さらにそこから急展開へ。

ピンチに陥った桐咲は、前作で倒されたキング温泉シャークの王冠部分を使って生み出された巨大兵器、メカキング温泉シャークを始動。しかし、自我を持ったメカキング温泉シャークは、創造主である桐咲をあっけなく葬り、九州に災厄(サメ)を撒き散らします。まさに九州大決戦です(タイトルを無事回収)

そんな大惨事の中、天満は何故か自分の歌声がメカキング温泉シャークに有効であると気付きます。

一時的にメカキング温泉シャークを追い払って難を逃れた天満は、前作で活躍したマッチョと、人とコミュニケーションができる小さな温泉シャーク・コロンブレと共に、メカキング温泉シャークを倒すため立ち上がる・・という内容です。

もはや「温泉からサメが出る」という事態に驚いているようでは追いつけないスピードで物語は進み、クライマックスでも「鍛え抜かれた筋肉に不可能はない」という名言と共にマッチョ芸が披露され、溶鉱炉に沈む中サムズアップするシュワちゃんに匹敵する感動的なラストに繋がっていきます。

総括としては前作と同じく「なんだかよく分からないものを見せられたけど最後には感動する」なのですが、スケールやトンデモ具合は明らかに前作を上回っています。前作が好きな方なら、きっと本作も楽しんでいただけるでしょう。

新鮮さがありつつ前作のメンバーも集まる胸熱展開に

まず評価したいポイントは、全く新しい展開とキャラクターでストーリーを広げつつ、前作のキャラクターもしっかり活かしているところです。

前作が警察署長が直面する不可解な失踪事件とサメ事故を発端に始まったのに対し、本作は東京に憧れる女子高生かつ温泉宿の孫娘という若者を主人公とし、「自分が封印を解いたのでは?」「一体誰に相談したら・・」という個人的な悩みが物語の起点となっており、新鮮さがあります。

本作で登場する、人と話せる(?)サメ・コロンブレも、前作にはなかった新要素です。前作では倒すべき敵でしかなかった温泉シャークが、本作では心が通じ合うかもしれない存在として登場し、しかも愛らしい。

そのうえ彼のお陰で「クローン温泉シャークたちを助けるという意味でも闘わなければならない」という、前回はなった闘いの意義が加わるのも、単純な人喰いモンスターの闘いではないという点で興味深い。

その一方で、主人公のピンチに束元署長や花子、万巻市長が駆けつけるなど、前作のキャラクターがここぞというタイミングで登場する胸熱展開も用意されています。

これらの前作キャラクターを活躍させつつも、主人公かつ物語の鍵はあくまで天満であり、巨勢やマッチョも含む前作組はあくまでサポート役に徹しています。

続編映画にありがちなこととして、新しいキャラの活躍を増やすために前作のキャラを雑に葬ったり、厄介事を持ち込むきっかけにだけ使って後は放置したりすることもありますが、本作では前作を観ているからこそ楽しめる要素としてしっかり活かされており、絶妙なキャラクター配置だと感じました。

完全に怪獣映画へと変貌

本作の特色を挙げると、サメ映画というより、怪獣映画の色がかなり濃くなったということです。

前作『温泉シャーク』は、少なくとも導入部分は「警察署長がサメについて警鐘を鳴らすが市長が聞き入れない」という典型的なサメ映画のテンプレで進み、徐々に「自衛隊でも対処できなかった怪物を、米国の攻撃前に俺たちで倒すぞ」という『シン・ゴジラ』的展開にシフトしていきます。

対して本作は、山にそびえたつ巨大な秘密基地、そこで大量生産されるクローン温泉シャーク&暴走を始めるメカキング温泉シャーク、操られたマッチョにより噴き出す温泉とサメ(相変わらずサメより化け物)など、序盤からスケールが壮大です。

クローン温泉シャークが九州の人々を襲うシーンも「人喰いザメが人を襲う!」というより、桐咲による人災およびメカキング温泉シャークがもたらす厄災として位置づけられていました。設定上も、クローン温泉シャークが人を襲う理由はメカキング温泉シャークのエネルギーにするためであり、主な脅威はメカの方です。

また、平凡な女子高生が怪物(本作ではもちろんサメ)の封印を解いてしまったり交流を深めるシーンには、平成『ガメラ』シリーズなどに見られるジュブナイル要素との類似性を感じますし、主人公と人々の歌という集合的祈りのようなものがカギになるという展開も『モスラ』を彷彿とさせます。

一応過去にメカが登場するサメ映画があるとはいえ(何であるんだよ)、そもそも怪物の姿を模した巨大兵器が人間に牙を剥くという展開がメカゴジラ的ですし、ラストシーンで登場するグロテスクな目玉の描写もエヴァンゲリオン的です。

「地面をサメが泳ぐ」や「空中でサメと闘う」というトンデモ設定自体はこれまでのサメ映画史でもあったので、それ自体はサメ映画から逸脱しているとは思いませんが、ストーリーやその構成要素で考えると、怪獣映画の方に大きく舵を切った作品と言えるでしょう。

良く言えばサメ映画を新しい次元に連れて行ってくれそうな作品であり、悪く言えば「何やっても許される」というサメ映画の風潮だけ保持したままサメ映画から離れていくような作品だと感じました。もし続編が作られるとしたら、どんな方向に向かうのか・・・。今後に注目です。

トンデモ展開の畳みかけで若干お腹いっぱいかも

強いて本作の難点を挙げるなら、新要素とトンデモ展開の畳みかけが多すぎて、序盤に若干の消化不良を起こした点です。

なぜ桐咲は笛でクローン温泉シャークを操れるのか?なぜ天満の歌は温泉シャークに有効なのか?などの説明がないまま、どんどん話が進んで大きくなっていきます(笛については劇場パンフレットで、電磁波を使って操っていたという説明が記載されていますが、本編では明言されていません)。

ここまでふざけた作品にそこまで真面目に求めるのは・・と思う人もいるかもしれませんが、前作レビューで書いた通り、トンデモなりに筋の通った説明や設定を盛り込んでいるのが『温泉シャーク』の魅力の一つでした。

本作でも「前作であんな騒動が起きたからには、温泉地でサメ対策がされているはずなのに、何でまた悲劇が起きるのか?」という至極当然の疑問に回答を用意しているなど、そうした姿勢が見られました。その分、先に挙げたような要素が深掘りされなかったことに、少し違和感を覚えたのです。

天満の歌についてはマッチョと同じく「意味不明だけど感動的な要素」として処理することもできなくはないですが、マッチョが出自不明かつ異質な存在であったのに対し天満は普通の人間なので、しかるべき設定があっても良かったような気がします(最後にそれを暗示する会話は一応ありましたが、考察の域を出ないので保留とします)。

また諸悪の根源である桐咲が、早々に退場してしまう展開には、若干の勿体なさを感じました。

クローン温泉シャークを笛で操る若返った老人という点ですでに設定てんこ盛りですが、この男はマッチョを捕まえてキリストよろしくに十字架に拘束しています。あのマッチョを?一体いつ、いかなる手段を使ってこの超人を捕まえたのか?温泉シャークのクローン化よりハードルが高いのでは?

しかし、その辺の詳細は語られることはなく、彼はメカキング温泉シャークに潰されてしまいます。

本作の醍醐味はあくまでメカキング温泉シャークだったので、あの場の退場は適切だったと思いますが、ポテンシャルの高そうなキャラだっただけに、噛ませ犬ポジで終わったのは惜しいと思いました。

もっとも、続編でこの辺りが深掘りされる可能性もあるわけですが・・・。

Z級サメ映画のレジェンドが出演

本作で個人的に笑えたのが、Z級サメ映画のレジェンド勢がしれっと出演していることです。

メカキング温泉シャークの騒動を報道する外国人レポーター役にマーク・ポロニア。『シャーケンシュタイン』や『エイリアンVSジョーズ』など、サメ映画の沼であり闇の部分を代表する、知る人ぞ知る名(迷)監督です。

さらに、ドナルド・トランプを意識したであろう風貌の米国大統領役にはジョン・ミリオーレ。『ウィジャ・シャーク 霊界サメ大戦』で伝説のサメ映画ミーム「ミスティック・シールド」を発動し、続編では監督と主演も務めた人物です。

他にも、冒頭で天満をナンパして後に温泉シャークに喰われるカップル役で、『イド・シャーク 心霊調査ビッグサマー』シリーズの夏目大一朗、旭桃果が出演しています。

本作ではサメの監修としてちょびっとだけ関わった僕ですが、もし続編ができるなら、いずれカメオ出演してみたいです(連絡待ってます)。

その他見どころや豆知識

  • 本作で桐咲が見せるアクロバティックな動きはCGやスタントではなく、実際に俳優の橋本昭平がパルクールを披露しています。
  • 天満が読んでいた巨勢真弓の著作『怪鮫と遭遇した日』は、『ガメラ2 レギオン襲来』に出てきた『怪鳥と遭遇した日』という書籍名のパロディです(恐らく巨勢真弓という役名自体、ガメラシリーズの鳥類学者・長峰真弓が元ネタかと思われます)。
  • サメの名前コロンブレは、ディーノ・ブッツァーティの短篇集の一つ『コロンブレ』が由来だと思われます。
  • 何故か闘っている時以外も日本刀を剥き出しにして持ち歩く花子。鞘にしまいなさい。だから不審者と言われるんでしょうに・・
  • 天満のセリフ「そもそもマッチョって何?意味わかんないんだけど・・」。大丈夫、誰も分かってないから。
  • 「シャーキンテンポ」とかいうパワーワード。
  • 本人が闘うわけではないのに腹筋トレーニングをするコロンブレが可愛い。
  • 「生物学者である私は、温泉シャークがサウナシャークになることを予期していました」という巨勢博士。生物学の定義を見直した方が良い気がします。
  • 筋肉モリモリマッチョマンという突然の『コマンドー』語録。
  • 前作でも登場した名言「サメがないている」。前作では「鳴いている」の意味で使われ、今回は「泣いている」でしたが、次回作ではどうなるのでしょうね。

サメに関する解説

サメの造形

本作にはクローン温泉シャーク、メカキング温泉シャーク、コロンブレ、合計3種類のサメが登場します。

基本的にはホホジロザメをベースにしたような姿でしたが、クローン温泉シャークの目は黒目が点になっており、メジロザメ類のように見えました。一瞬見える歯の形状もホホジロザメというより、ドタブカなどの大きなメジロザメ類に近いものを感じました。

また、パペットとして動かすうえで仕方のない要素だと思いますが、厳密にはサメに首がないため、コロンブレほど頭をお腹側に傾けることは基本的に難しいです。

さらに、コロンブレは一人称が「俺」で声も男性(CV青柳尊哉)でしたが、月をバックに飛び上がるシーンをよく見ると、腹鰭のところにクラスパーがありませんでした。

温泉シャークは普通のサメと違って成熟しないと交尾器が発達しないのか、あるいはイケボだっただけでキングならぬクイーン温泉シャークだったのか、定かではありません・・・。

ツマグロというサメの雄。腹鰭に2本の交尾器(クラスパー)があります。

その他サメの解説

キング温泉シャークがビルを食べ、瓦礫だけエラ孔から出していたシーンについて。現実のサメでも似たような行動を観ることができます。

ジンベエザメなどのサメが、口に海水ごとエサを含み、エラ孔から海水を出すときにエサだけ濾しとって食べるのは有名ですが、他のサメでも、食べたエサの残りカスなどをエラ孔から吐き出すことがあります。

本作で瓦礫だけ出すシーンも、恐らくそれをヒントに作られたのでしょう。

その他サメの解説

湯国町はサメのような形をしているとしてマップも出てきますが、どうも頭の形状からギンザメっぽく見えます。

ギンザメはサメと同じ軟骨魚類の仲間ではありますが、サメではありません。

ギンザメの写真
ギンザメ

また、桐咲(龍神)が特殊なコンドロイチンで若返るという設定は、サメ軟骨に含まれるコンドロイチン硫酸が健康食品として販売されていることに着想を得ていると思います。実際に、関節の痛みに効くとされるサメ軟骨を原料とするサプリメントが販売されています。

しかし、これらの基本的に医療機関はこれらの商品の有効性を疑問視しており、注意喚起していることが多いです。

 グルコサミンやコンドロイチン硫酸製剤は、まったく効果がないわけでもないですが、非常に作用も弱く、副作用もすくないので、いわゆる健康補助食品として、分類されて、一般小売店での販売が許可されているわけです。効果がないわけではありませんので、一般の方が購入されることを妨げはしませんが、現在、これらのものは、効果に比すれば、高すぎると思われます。コストパフォーマンスを考えれば、医師としてはあまりおすすめはできません。

日本臨床整形外科学会『変形性関節症に、効果ありとされる「健康食品」について』より引用

サメ軟骨といわれているものはコンドロイチン硫酸のことですが、似たようなサプリメントにはグルコサミン、ヒアルロン酸があります。このようなサプリメントは抗炎症作用があるといわれていますので、たしかに変形性膝関節症の炎症をやわらげ痛みを抑える効果はあるかもしれません。

しかしすり減った軟骨を再生する効果はないかと考えられます。

済生会山形済生病院『軟骨は若返りますか?』より引用

サメ類の体に含まれる物質が医療に活かされる可能性はあると思いますが、サメ軟骨については、すでに否定されていたりエビデンスが不足している効能を謳っているケースもあるため、十分に注意が必要です。

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