ホホジロザメ・カフェはどこにある?ジョーズが集まる謎の海域を解説

2026年6月、韓国のとあるカフェの水槽で、ホホジロザメが飼育されているとしてSNSで話題になりました(放流されたため現在は展示していません)。

実際に展示されたホホジロザメの様子↓

これは本物のカフェにホホジロザメが展示されたというニュースでしたが、これとは別に「ホホジロザメ・カフェ」という場所が存在します。

陸地から何百キロも離れた、一見何もないかに思える太平洋のど真ん中。毎年多くのホホジロザメが集まる不思議な海域です。

今回は、「ホホジロザメ・カフェ」について解説をしていきます!

目次

解説動画:ホホジロザメ・カフェはどこにある?ジョーズが集まる謎の海域を解説

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2026年7月28日です。

ホホジロザメ・カフェはどこ?

ホホジロザメ・カフェは、太平洋に存在する海域です。メキシコのバハ・カリフォルニア州と、アメリカのハワイ州のちょうど中間付近に位置します。

座標で言えば北緯23.37度、西経132.71度。そこを中心に、およそ半径250kmほどの面積の海域が「ホホジロザメ・カフェ」と呼ばれています。大きさで言うと北海道がすっぽり入ってしまう、かなり広い範囲です。

とはいっても、いつくかの研究データでホホジロザメが集まっていると示される大体の範囲が「ホホジロザメ・カフェ」と呼ばれているだけです。「ここからここまでがカフェで、ここからは違う!」という明確な区分があるわけではありません。

ホホジロザメ・カフェの大体の位置

また、「カフェ」という名称から、何かしら島や岩礁など目印のようなものをイメージしそうですが、特にそういったものもありません。見かけ上はただ青く深い海が広がっているだけです。

この海域を「ホホジロザメ・カフェ」と名付けたのは、アメリカの海洋生物学者、バーバラ・ブロック博士、もしくは彼女を含む研究チームとされています。

彼らがホホジロザメに電子タグを取り付けて北太平洋における回遊パターンを調査したところ、毎年ホホジロザメがほぼ同じ場所に向かって泳ぎ、集まっていることを発見しました。

季節移動するホホジロザメ

では、ホホジロザメはいつどのようにカフェに集まってくるのでしょうか?

ホホジロザメが移動を開始するのは、だいたい冬~春にかけてです。

米国カリフォルニア州近海のホホジロザメをタグ付け調査した研究によれば、彼らは11~3月頃に移動を開始し、ほとんど直線的にカフェに向かいます。

そこから1カ月かからない程度の期間でカフェに到着し、最大で167日間(約6カ月間)ほどカフェに滞在します。

さらに別の研究では、メキシコのグアダルーペ島からも、ホホジロザメが集まっていることが確認されています。この研究では、12月にタグ付けされたホホジロザメが、2~5月頃にカフェに向けて出発していました。

そして、どちらの調査でも、一定期間カフェで過ごした後に戻ってくる個体もいれば、そのままハワイまで泳いでいく個体も確認されています。

ホホジロザメ・カフェを訪れるホホジロザメの移動イメージ

ホホジロザメ・カフェで何をしている?

沿岸から遥々泳いで集まってきたホホジロザメたちは、カフェで一体何をしているのでしょうか?

結論から言うと、まだ完全には分かっていません。

しかし仮説はありますし、それに関連した興味深い行動が観察されているので、それを紹介したいと思います。

基本的な生き物の行動原理は採餌か繁殖です。

ホホジロザメがカフェに訪れる目的も、このどちらかではないかとする説があります。

繁殖が目的?

まず先に繁殖説から見ていきます。

米国およびメキシコの西海岸では、1.4~1.7mほど、つまり産まれてから間もないと思しきホホジロザメの混獲が、7月~10月に最も多く報告されています。このことから、この海域では春~夏にかけてホホジロザメが出産していると思われます。

2024年に、ホホジロザメの新生児と思しき個体についての論文が発表されましたが、あのホホジロザメが撮影されたのも7月のカリフォルニアでした。

ホホジロザメの繁殖についてが不明な部分も多いですが、妊娠期間が18ヶ月ほどではないかという説が存在します。

これが正しいと仮定した場合、3~8月に交尾していることになり、ホホジロザメ・カフェでサメたちの活動が最も活発になる時期と合致しています。

ホホジロザメの予想出産時期とカフェ滞在期間の関係イメージ

ただし、ホホジロザメ・カフェで交尾や出産が記録されたわけではありません。

また、先ほど紹介したカリフォルニア近海のホホジロザメを調べた研究では、成熟していないと思しき若いホホジロザメもカフェに集まっていることが確認されています。

若いと言っても3~4mはありましたし、成熟の判定で生殖器官を細かく調べたわけではないようですが、もし未成熟の個体も集まっているとすれば、繁殖場所という仮説は成り立たない可能性があります。

付け加えると、サメ類のメスはオスの精子を長期間胎内に貯めておけるので、「出産時期からの逆算だけを根拠にしていいのか?」という点はちょっと気になります。

実は豊富なエサがある?

もう一つの仮説が、エサを食べる目的で訪れているのではないかというものです。

当初ホホジロザメ・カフェは生物資源の少ない場所と見なされていました。

しかし、カメラを取り付けた無人潜水艇での探索、エコーや網での調査、環境DNAの分析など、様々手法でホホジロザメ・カフェの深海を調べた結果、ホホジロザメが頻繁に潜る水深には、多様な生き物がいることが確認されました。

ホホジロザメ・カフェの深海で撮影された映像↓

調査を行ったブロック博士は、メディアの取材に対し以下のように回答しています。

“We found a high diversity of deep sea fish and squids (over 100 species), which in combination with observations made by the ROV and DNA sequencing, demonstrate a viable trophic pathway to support large pelagic organisms such as sharks and tunas.”

”ROVでの観察やDNA解析の結果と合わせて考えると、深海性の魚やイカ類100種以上が生息していることが判明しており、、サメやマグロなどの大きな外洋性の動物を支えるのに十分な栄養段階を示している”

Researchers describe abundant marine life at the “White Shark Café”』より引用。訳は筆者。

また、カリフォルニア近海のホホジロザメがカフェに向かう11~3月頃は、彼らのエサである鰭脚類の幼い個体がが少なくなる時期とされています。

さらに、ホホジロザメ・カフェの低酸素の水塊が重要な役割を果たしている可能性があります。

水の中に溶けている酸素の量は一定ではありません。水温や海流、プランクトンの活動など様々な要因で、同じ海の中でも酸素が少ない場所、多い場所が存在します。そして魚も僕たち同様、呼吸に酸素が必要なので、酸素の少ない場所では生きづらい、あるいは生きられないという問題が起きます。

ホホジロザメ・カフェの海洋構造を調べた研究によれば、酸素濃度の低い水塊が、他の海域よりも浅い場所にあると推定されました。

これにより、獲物となる生き物の行動範囲が制限されて狭い場所に集中し、ホホジロザメが効率よくエサを食べられているのではないか、というわけです。

一応補足しておくと、仮に繁殖説が正しいとしても、ホホジロザメが数カ月間絶食しているとは考えづらいため、恐らく何かを食べているとは思います。

繁殖と採餌どちらが正しいかというよりも「主要な目的は何か?」という観点でこの問題は考えるのが賢明でしょう。

オスとメスで異なる潜水パターン

ホホジロザメ・カフェ滞在の目的が繁殖か採餌かに関わってきそうなのが、オスとメスでの行動の違いです。

カフェに滞在している間のサメの行動を調べた結果、オスだけが深みに潜ってはすぐに戻ってくるという潜水行動を何度も繰り返していることが分かっており、その回数は多い時で1日140回にも及びました。その一方で、メスのサメは夜を浅い水深で、昼間は深い水深で過ごしていました。

また、2009年に発表された論文では、オスは比較的狭い範囲で行動していたのに対し、メスの行動範囲はかなり広かったと示されています。

オスとメスの行動範囲が違うと聞くと、繁殖と関係ないように思えるかもしれませんが、メスにとって繁殖行動はコストを伴うものなので、一時的に避けた結果がこのデータに反映されているという見方もあるようです。

If mating occurs in the Cafe, periodic segregation, could reflect refuging by females from costly mating activities (Wearmouth & Sims 2008).

カフェで交尾が行われる場合、周期的にオスとメスが離れている状況は、雌がコストのかかる交尾活動から避難することを反映している可能性がある。

『Philopatry and migration of Pacific white sharks』より引用。訳は筆者。

サメ類の交尾はオスがメスに噛み付いて行われますし、ホホジロザメは母胎内の胎仔がミルク(厳密にはそれに相当する栄養液)を飲んだり他の卵を食べたりするので、母ザメはかなりの栄養が必要になると思われます。

あくまで推測ですが、こうしたコストを考慮して、交尾するにしても時期や場所などを選んだり慎重になる可能性はあるかもしれません。

まとめ

今回は、ホホジロザメ・カフェの謎というテーマで解説をしてきました。

  • ホホジロザメ・カフェとは、メキシコのバハ・カリフォルニア州と、アメリカのハワイ州のちょうど中間付近に位置する海域のことである。
  • ホホジロザメは冬~春にかけてカフェに向かい、一定期間カフェで過ごしてから戻ったり、ハワイに向かって回遊したりすることが分かっている。
  • ホホジロザメ・カフェの来訪・滞在目的ははっきりとわかっていないが、繁殖に関係している説、エサを食べに来ている説などが存在する。
  • オスとメスでカフェにいる間の行動パターンが異なることも分かっており、今後の研究でこれらの謎が解明されるかもしれない。

ホホジロザメは恐らく世界で最も有名なサメですが、まだまだ分からないことが多く、ワクワクしてきますね。

参考文献

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