| 邦題 | 悪魔の口 |
| 原題 | The Devil’s Mouth |
| 公開年 | 2026年 |
| 監督 | ジェフ・ワドロウ |
| 出演 | キャスリン・ニュートン / ラナ・コンドル / ニコ・ヒラガ |
| 制作国 | アメリカ |
| ランク | A級(普通に映画として楽しめる。自信をもって勧められる。) |
| ストーリー | ★★★★☆ |
| 演出や絵作り | ★★★★★ |
| サメの造形 | ★★★★☆ |
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あらすじ
大学生のサラは親友マックスを含む友人4人と共にタイ旅行を満喫していた。
社会人になる前の最後の冒険として、サラたちは悪魔の口”と呼ばれる水中洞窟の探検ツアーに参加することに。
しかし、ガイドの案内で辿り着いた洞窟奥部には、凶暴な人喰いザメが入り込んでいた。
脆く崩れやすい岩に囲まれた洞窟のなかで、サラ達はサメに追い詰められていく・・・。
果たして彼らは無事に脱出することができるのか?
これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。
見どころ・ツッコミどころ
“古代マヤ”とは一味違った洞窟サメ映画
洞窟の奥部でオオメジロザメに襲われる、閉じ込められる系サメ映画です。主演は『名探偵ピカチュウ』で新米記者ルーシーを演じたキャスリン・ニュートン。劇場公開作品ではなく、Amazon Primeオリジナル作品としてリリースされました。
「洞窟でサメに襲われる」という設定だけ聞けば『海底47m 古代マヤの死の迷宮』を思い浮かべるかもしれませんが、良い意味で差別化できていると感じました。
古代マヤの方は「そもそも出口があるのか分からない真っ暗な洞窟」という閉塞感や不安を煽る舞台で、「エア残量がどんどん減っていく」というタイムリミットの要素が色濃いです。
対する本作は観光地の洞窟が舞台で、閉塞感は弱めです。マップもありますし、上部から太陽光も入り込んでいます。なにより洞窟が完全に水没しているわけではないので、空気残量というタイムリミットはなく、わずかながら水上の足場が存在します。
しかし、古代マヤと比べて生温いかと言われれば、そんなことはありません。
魚の死骸を使った不穏な空気作り、壊されたマスクに突き刺さった歯でサメの脅威をストーリーに登場させる展開など、導入部分は上々です。
そして登場する凶暴な人喰いザメ。水面から背鰭を出してゆったりと迫ってくるかと思えば、突如水中から襲ってきて、犠牲者を激しく振り回す・・。ねっとりした恐怖と激しい暴力性が使い分けられており、十分に怖い存在として描かれていました。
従来のサメ映画の”あるある”であった「犠牲者が水中に引きずりこまれて水が真っ赤に染まる」で終わらせず、犠牲者が何度も岩に叩きつけられたり、水中に引き込まれるまで振り回されり、生き残ったサラの背後でサメがひたすら喰い続ける後ろ姿が映るなど、生々しい捕食表現も魅力です。
また、岩の隙間からサメの影が見えたり、発光生物(ウミホタル類?)によってサメの存在を示すなどの水中洞窟ならではのサメ表現も楽しめます。
崩れやすい岩という舞台設定も、ハラハラ展開を作りだしたり最後の結末に繋がったりと、物語に用意された要素が全体的にまとまっている印象を受けました。
古代マヤほどの閉塞感や息苦しさはないものの、また違った側面を楽しめる良質なサメ映画と言えるでしょう。
全部マックスのせい
舞台設定以外に本作の特色を挙げるなら、物語において終始一貫して、一人の人物にヘイトが向くように作られていることです(製作陣の真意は分かりかねますが、少なくとも僕はそう感じました)。
本作に登場するサラの親友マックスが、物語の最初から最後までとにかくウザいです。
妙な距離の詰め方と強引な雰囲気づくりを得意とする彼女は、頑固な現地ガイドを説得して役に立ったかと思いきや、冒頭で親友サラを海のど真ん中に置き去りにしかけるという失態をしでかし、しかもそれを船長のせいにして口コミサイトに悪評を書くか脅すような手紙を送るなどと言い出します。
最終的にその件について反省したかと思いきや、その後に彼女が行う全てがとにかく裏目に出ます。
- 安全な”緑のコース”を進む予定だったのに、ガイドを無理に説得して難易度の高い”赤のコース”に変える。
- 「怪我人が出たらすぐに引き返す」というガイドのルールを無視し、洞窟の最奥部まで進ませる。
- 早く脱出しようと話しているのに、「プランがないと嫌だ」と駄々をこねてガイドに見限られる原因を作る。
- 海側の出口に向かった方が良いと多数決で結論が出ているのに、不貞腐れた態度で別の方向に変えさせる。
- サメを刺激しないようゆっくり進もうとサラに言われたのに出口に急ぎ、出口が塞がる原因を作る。
- 「助けを呼ぶから待っていて」とサラに言われたのに、無理をして岩壁を上ろうとする。
もちろんマックスは赤のコースにサメが迷い込んでいることを知らなかったですし、あれで見限るガイドもどうかと思いますが、あまりにも彼女の選択のせいで犠牲が出たりサラが苦労する場面が多く「さっさと死んでくれないかな・・」と思いながら視聴していました。
非常事態でパニックを起こした素人という点を考慮するにしても、物語の冒頭で「私はその場の勢いでなんとかするから!」みたいな言動をしていたにもかかわらず、想定外の自体が起きると役に立たない(なのに自分の感情と大して根拠のない意見で場を仕切りたがる)という点も、イライラを加速させます。
一応サラとの友情や彼女なりの人生観を示すようなセリフも途中に挟み込まれますが、正直そんなことでは彼女の失態はカバーできないでしょう。
サラの夢の中で「私のせいじゃない!」とマックスが叫ぶシーンでは「いや全部お前が悪いだろ!」とツッコミをいれてしまいました。
最終的にマックスは最期の瞬間までサラに迷惑をかけてサメのエサになりますが、逆にここまで人をイライラさせておいて「星が燃え尽きるまでずっと一緒!」みたいな親友ムーブされたらどうしようと思っていたので、喰われて清々しましたね。
その他見どころや豆知識
- 本作の洞窟内にはウミホタル類と思しき生物発光する生き物が出てきますが、あのように発光する生物は基本的に海で暮らしており、淡水域ではほとんど知られていません(ホタルの幼虫をはじめ、一応淡水にも発光生物はいますが)。一体あれは何だったのでしょう・・・。
- コウモリと戯れるように水からジャンプするオオメジロザメが可愛い。
サメに関する解説
サメの造形
本作に登場するサメはオオメジロザメです。主な特徴としては、短くて丸みを帯びた吻、がっしりとして高さのある筋肉質な体、サメらしい三角形の大きな第一背鰭などです。
サメ映画に最も多く登場するホホジロザメに比べると目が小さくて真っ黒ではない、第二背鰭や臀鰭が大きめ、尾鰭が三日月形ではないなどの違いがあります。
本作のサメは全体的にこれらの特徴が抑えられており、オオメジロザメだと分かる姿をしていました。
ダイバーのマスクに突き刺さっていた歯の形も、オオメジロザメの上顎歯よく似ており、十分な再現だったと思います。
若干顔つきが凶悪過ぎたうえにCG感が強めでしたが、全体的には良い再現でした。


サメの行動
作中でジェームズが明言していた通り、オオメジロザメは淡水域にも現れるサメです。川を遡上したり湖で長期間生きることができます。他の海水魚が生きられないような環境でも生き残っている可能性はあるでしょう。
特に、本作は”悪魔の口”に至る前の入り口のところでドクウツボらしき魚がいたので、恐らく洞窟の広い範囲に塩水楔(河川などの底の方に塩分濃度の高い水が溜まる現象)があったと思われます。オオメジロザメにとっては案外過ごしやすい場所だったのかもしれません。
ただ、一尾のサメにしては食事量が多すぎです。ストーリー上の経過時間が分かりにくいですが、サラ達がクライマックスで海に出ようとする時が夜でそれまで休憩時間のようなものがあまりなかったのを考えると、恐らく24時間以内でしょう。
その間に一尾のサメがイケメンダイバー、グレッグ、ワット、エイドリアン、マックスと合計5人を食べたことになります(ジェームズは溺死なのでノーカウント)。あまりにも頻繁に人が食べられるのでサメが複数いる設定なのかと思いました。
内温性でもないオオメジロザメが、あんなに短期間で大型動物を捕食するのか疑問です。
また、オオメジロザメはホホジロザメ、イタチザメに並ぶ危険ザメとして有名で凶暴なイメージがあると思いますが、その一方で警戒心が高いです。釣ろうとしてもなかなかエサに噛みついてくれなかったりします。
なので、淡水の洞窟内という慣れない環境に流されてきてすぐに人を食べまくるか、ちょっと微妙ですね(もちろんサメの性格や空腹度にも寄ると思いますが)。
その他サメの解説
本作の日本語吹替・日本語字幕について、グレッグが喰われてエイドリアンが傷を負った後のシーンで、ジェームズがサメを指差して「ウシザメ」と呼んでいます。
確かにオオメジロザメの呼び名として「ウシザメ」は存在しますが、そこまで一般的ではないというか、オオメジロザメという標準和名がかなり浸透しているので、わざわざ使う場面があまりないように思えます(サメ愛好家の間で呼ぶときも、オオメジロ、ブル、シロナカーなどの呼び名が多いイメージです)。
英語では特に珍しい地方名などではなく普通に「Bull shark」と呼んでいたので、何故ウシザメという表記になったのでしょう。まさかオオメジロザメという和名を知らなかったわけではあるまいし・・。
映画につける字幕はセリフ1秒に対し何文字など文字制限があるそうなので、その関係で短い名称のウシザメが使われたのか?それなら何故吹替までウシザメだったのか・・。
ウシザメと呼ぶのが間違いというわけではないのですが、どういう経緯で「オオメジロザメ」ではなく「ウシザメ」になったのか、その経緯が気になりました。
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