【都市伝説】メガマウスやリュウグウノツカイは大地震の前兆なのか?深海魚の地震予知・前触れ説を徹底解説!

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回は、周りを海に囲まれた島であり、かつ地震が多い国である日本ならではかもしれない、有名な都市伝説を解説していきます。

それが「深海生物の地震予知」あるいは「深海生物の出現は地震の前兆である」という説です。

リュウグウノツカイやメガマウスザメなど、いわゆる”激レア深海生物”とされる生き物たちが浅瀬で発見または漁獲されると、「地震の前兆ではないか?」とネットで騒がれることがあります。

南海トラフ巨大地震への心配も影響しているのか、週刊誌で取り上げられたり、一部のYouTuberが紹介するなど、それなりに知名度を獲得しているように思えます。

もし深海生物の行動によって巨大地震を事前に知ることができれば、防災における重要な指針になることは間違いないです。

では、果たして深海生物の地震予知は本当なのか?

信じるに値する根拠が存在するのか?

今回はこのテーマで解説をしていきます!

目次

解説動画:【都市伝説】メガマウスやリュウグウノツカイは大地震の前兆なのか?深海魚による地震予知を徹底解説!

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2021年10月28日です。

深海魚地震前兆説の起源

深海魚が地震の前兆という話はいつから始まったのでしょうか?

一般には、江戸時代に出版された『諸国里人談』だと言われています。

当時の奇談・怪談をまとめたこの書物の中に「若狭の人魚」という話があります。

簡単にまとめると、「漁師が岩の上にいる人魚を見つけ、大して考えもせず殴り殺した。すると、大風が吹いて海は荒れ、30日後には大地震が来た」という感じの話です。

サメ社会学者Ricky

そもそも、人魚なんて珍しいものを見つけたら、ちゃんと綺麗な標本にして欲しいです。

では、この話がなぜ深海魚の地震予知になるのか?

人魚のモデルは一般にジュゴンやマナティとされることが多いですが、若狭の人魚については赤い鶏冠のようなヒラヒラを身につけていたと記載があることから、同じく赤く長いヒレを持つリュウグウノツカイがモデルである可能性が高いです。

リュウグウノツカイ。この標本は色が抜けていますが、本来は銀色の体に赤いヒレを持っています。
生きているリュウグウノツカイイメージ。

冷静に考えると、どう考えても人間と勘違いするような要素がない見た目ですが、

  • 非常に細長く銀色に輝く体
  • 長く鮮やかな赤いヒレ
  • なかなか人前に姿を見せない珍しさ

という三要素をもったリュウグウノツカイは、間違いなく神秘的な魚です。

人魚かどうかはともかく、何かしら伝説の元ネタにはなりそうな素質は持っていると言えそうです。

リュウグウノツカイ地震前兆説の真相

では、そんなリュウグウノツカイの出現は地震の前兆なのでしょうか?

このテーマについて、なんと学術的に調べた研究が存在します。

静岡県立大学と東海大学が共同で「深海魚が人前に現れた後どれくらい大地震が起きていたのか?」を調査しました。

  • 対象期間:1928年11月26日〜2011年3月11日
  • 対象魚種:リュウグウノツカイ、サケガシラ、ユキフリソデウオなど、普段浅瀬や表層で確認されることが少なく、地震と結びつけられがちな深海魚8種を選定
  • 対象地震:対象魚種が漁獲・目撃された全国の記録と、その場所から半径100km、30日以内に起きたマグニチュード6.0以上の地震

ここまで調べて一定数の当たりがあれば、深海生物による地震予知が濃厚になり、本気で防災にも活かせそうですが、結果はどうだったのか?

当該調査では合計で336件の記録が調べられたのですが、条件に当てはまる地震は、2007年7月の新潟中越沖地震(地震の30日前に震央から30km離れた沖でサケガシラ漁獲)だけでした。

80年以上の期間、300件以上の事例を調べて、激レア深海魚出現後の大地震なんてほとんどなかったんです。

これでは地震予知なんて無理ですし、もちろん防災にも役立ちません。研究報告そのものでも「深海魚出現が地震の前触れという説は迷信である」と結論づけています。

「人食いザメ」をはじめとする生物への偏見全般に言えそうですが、イメージや噂だけで勝手にあれこれ言うのではなく、きちんとデータを取って調べるのが大事だということがよく分かりますね。

メガマウス出現前後の地震事例

リュウグウノツカイと地震の関連は否定されましたが、メガマウスザメはどうでしょうか?

メガマウスザメ
サメ社会学者Ricky

SEOのことも考えて「メガマウス地震前兆説」のように僕も記載することがありますが、本来の標準和名は「メガマウスザメ」です。

都市伝説界隈では”南海トラフの予言”や”3.11は人工地震”など地震に関する議論も盛んですが、メガマウスザメを取り上げるインフルエンサーも増えてきました。

ざっと調べた僕の所感ですが、その多くの発信の元となっているのが超常現象研究家を自称するM氏のブログだと思われます(トラブル防止のためにフルネームは伏せますが「メガマウス 地震」でググれば、おそらくこの人の記事がトップの方に出てきます)。

そして、M氏は同記事内においてメガマウスが目撃されてから地震が起きた事例を羅列しています。以下はそのごく一部です。

  • 1989年1月23日に静岡県浜松市の海岸で目撃→同年3月6日に千葉県東方沖でM6.2の地震
  • 2005年1月23日に三重県の沖で目撃→同年3月20日に福岡県西方沖でM7.0の地震
  • 2011年1月14日に三重県沖で目撃→同年3月11日、東日本大震災

さらに、M氏は「メガマウスには電気を感じ取るロレンチーニ器官があり、これによって地震の際に発生する微弱な電磁波を感じ取って日本近海に現れているのかもしれない」と仮説を提示しています。

同記事内で引用されている武蔵野学院大学の特任教授の言葉によれば、「メガマウスは地中の岩石が破壊される際に出る微弱な電磁波によってエサがあると勘違いしているかもしれない」とのことです。

ここまで聞いて「リュウグウノツカイは迷信だったけど、メガマウスはデータがあるからそれっぽい」と思った方もいるかもしれません。

しかし、曲がりなりにも科学に対して多少理解のあるサメ好きとして、もう少し掘り下げていこうと思います。

メガマウスと地震のガバガバな関連性

結論から先に言ってしまいますが、このメガマウス地震前兆説は根拠が弱すぎて完全にオワコンです。

メガマウスザメ出没と大地震発生の間に関連性は認められず、一部の人が証拠不足の持論にそれっぽい説明を付け加えて騒いでいる、こじつけに塗れた都市伝説です。

時期や地域が離れた事例

まず、M氏はメガマウス目撃と地震の実例を並べて関連があるように見せかけていますが、この時点でツッコミどころが満載です。

M氏が列挙した事例には、静岡に現れてから2ヶ月後に千葉で地震、三重県で目撃された13日後に鹿児島で地震、三重で目撃されて2ヶ月後に福岡で地震など、メガマウス目撃の場所および時間がかなり離れたものが多く含まれています。

一応1989年6月12日に静岡焼津の定置網に入った5日後に伊豆諸島で地震が起きたという場所・時間ともに近い事例もありますが、先ほど挙げたようなバラバラに見える事例をなぜ同列に扱っていいのか?M氏のブログの中ではその根拠が全く示されていません。

震度1~3の地震まで含まれている

さらに、メガマウス出現の後に起きた地震として挙げられているものの中には、震度1〜3のものも多く含まれていました。

気象庁などのデータを調べると分かりますが、震度3以下の地震であれば1日に平均3回程度は起きています。小さなものを含めれば、日本では1ヶ月に100回ほど地震が起きているんです。

2ヶ月という長いスパンで、月100回起きている現象と結びつけ、しかも日本国内なら場所が離れていてもOK・・・。こんなガバガバな基準では、メガマウス出現だけでなくあらゆる出来事が地震の前兆になってしまいます。

恐らく「Rickyが二郎系ラーメンを食べて2ヶ月以内に大きな地震が起きる」という説も成り立つと思います(月に1回程度の頻度で食べているので十分にあり得ます)。

ちなみに、M氏はメガマウス地震前兆説の記事を複数公開しており、一部の記事ではM6.0以上の地震に絞って事例を紹介しています。

しかし、日本気象協会のデータを見ると、M6.0以上の地震もだいたい2ヶ月に1回くらいの割合で発生していました。

そのため、仮に大きめの地震に限定したとしても、メガマウス地震前兆説の根拠にはなり得ないと思います。

ロレンチーニ器官は説明になっていない

M氏はメガマウス地震前兆説の根拠としてロレンチーニ器官も挙げていますが、これも別に因果関係の説明にはなっていません。

ロレンチーニ器官という言葉を初めて聞いた方のために紹介すると、サメの顔の周りにある小さな穴状の感覚器官です。

ヨゴレのロレンチーニ器官。

この中にはゼリー状の物質が詰まっており、サメは獲物が発する微弱な電気を感じ取ることができます。また、獲物の電気だけでなく、地球の磁場を感じて回遊に役立てているという説もあります。

「電気を感じ取る」や「地球の磁場」などの言葉を並べられると地震予知っぽい気がしてきますが、ここで疑問が浮かびます。

なぜメガマウスザメだけが地震の前に姿を現すのでしょうか?

ロレンチーニ器官はメガマウスザメだけのものではありません。他のサメ類も持っています。

そして、日本近海にはメガマウスザメ以外にもホホジロザメ、ウバザメ、イタチザメ、アオザメ、アカシュモクザメなど、広い海を泳ぎ回る大型サメ類がたくさん生息しています。

つまり、メガマウスが地震の前兆だとする根拠の一つにロレンチーニ器官をあげるなら、同じくロレンチーニ器官を持つ他の大型サメ類の出現多発や異常行動が見られてもおかしくありません。

しかし、そのような事例は確認されておらず、この点についてM氏は何の説明も果たしていません。

そもそもメガマウスは深海生物なのか?

都市伝説に肯定的な人であれば、「メガマウスは深海ザメだから地震の影響を特別受けやすいのかもしれない!」と反論するかもしれません。

実際、某都市伝説系のYouTuberが「メガマウスは深海に住むサメなので、より地盤の変化を感じやすい」と話していました(誰とは言いませんが、2022年時点で登録者600万人を超える人気チャンネルです)。

詳しくない方だと納得できる反論に聞こえるかもしれませんが、そもそもメガマウスは本当に”深海ザメ”なのでしょうか?

「深海ザメ」という言葉自体、実は生物学的定義が決まっていない非常に曖昧なものですが、仮に「一般に深海とされることが多い水深200mより深い場所を主な生息域とする変な見た目のサメ」と定義して考えてみましょう。

かつてメガマウスザメを対象に行われたトラッキング調査によれば、夜は水深12〜27mほどの表層を泳ぎ、昼になっても水深120〜160mほどの場所を泳いでいることが確認されました。

メガマウスザメの生態は分かっていないことが多いですが、現状手に入るデータを元に言えば、メガマウスザメは最近発見された珍しい、面白い見た目のサメだから「深海ザメ」扱いされているだけで、深海が主な生息水深ではない可能性があります。

変な見た目だからと言って深海ザメとは限りません。

こうなると「深海ザメだから特別に電磁場を感じやすい」という反論も崩れ去ります。

さらに、M氏が引用している学者の仮説では「電磁場をエサと勘違いして集まる」ということでしたが、それなら電気が発生している深みに潜るはずで、人間に見つかりやすい表層や浅瀬に現れる理由が分かりません。

「電磁場」などの科学的な単語や「ロレンチーニ器官」という専門用語で飾り付けてそれっぽく見せていますが、細かい部分の大事な説明が抜け落ちています。

これでは血液型占いなどの馬鹿馬鹿しいニセ科学と同レベルです。

結論:メガマウス地震前兆説は戯言

ここまでの話をまとめると、メガマウス出現が地震の前兆という説は、幅広すぎて比較も不十分なデータで無理やり関係があると思わせ、科学的な用語で細かい因果関係を誤魔化してさもそれっぽく見せているだけということになります。

ハッキリ言えば、サメに関する知識が乏しいオカルトマニアの戯言であり、とても信じるに値しません。

メガマウス地震前兆説そのものは直接的に害のあるものではないですが、地震というのは人の命や国の安全に関わるテーマであり、安易なデマを許すべきではありません。

また、M氏やその支持者が用いる相関関係を因果関係と混同させる論法や、科学用語を散りばめて専門性があるように見せかける発信方法は、反ワクチンのような有害なニセ科学にも通じる部分があります。

フィクションとしてオカルトや都市伝説を楽しむのは僕も好きですが、さも本当かのように主張するのであれば看過できません。

「価値観の自由」などという逃げ道を許さず、科学的な厳しい基準を求めて突き詰めていくべきだと僕は思います。

あとがきにかえて

以上が、深海魚地震予知または深海魚地震前兆説と呼ばれるトンデモ議論の解説でした。

否定するばかりでは可哀想なので、最後にメガマウス地震前兆説を証明するのに必要であろうことを挙げておきます。

  • 時期や地域をもっと絞った上でデータを集め直す。
  • の上で、データの比較を行う。例えば、メガマウスが出現した後の地震発生だけでなく、メガマウスが出現後1ヶ月、100km圏内でM6以上の地震が起きなかった事例も集めて比べてみる。
  • 地震により起こる電気がサメに本当に影響を及ぼすのか、どんな影響があり、種によってばらつきがあるのか、実験により検証する。
  • 仮にメガマウスが地震で起こる電気に影響されて人間に目撃されやすくなるとして、そのメカニズムは何か?なぜ他のサメでは起きないのか?科学的に分析する。

ざっと思いつく程度ですが、最低限これくらいのことを調べて、十分な根拠に支えられた査読論文を出していただければ、僕も素直に受け入れようと思います。

多分そんな論文が出たらすぐに僕の耳にも届くと思いますが、もしこれらをすでに検証している人がいたらぜひご連絡ください。

その際は、謝罪と訂正を兼ねた記事や動画を投稿させていただきます。

参考文献

※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。


















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