シュモクザメは人食いザメなのか?危険なサメとして紹介されるハンマーヘッドの真実を解説!

この記事は以下の記事の続きになります。

シュモクザメには多様な仲間がいるということを最初の記事で紹介しましたが、シュモクザメ類には危険なサメもいるのでしょうか?

この記事ではシュモクザメの危険性について解説していきます!

目次

大騒ぎするほど危険ではない

これについては、「大騒ぎるするほど危険ではない」というのが僕の見解です。

確かに、シュモクザメの仲間には人間より遥かに大きいサイズに成長する種もいます。日本近海に生息するアカシュモクザメやシロシュモクザメも大きいものでは3m以上になり、最大種のヒラシュモクザメにいたっては6mを超えることもあるとされています。

しかし、彼らの顔をよく見てみると、口が意外に小さいです。

成熟したシュモクザメは筋肉ムキムキなうえにハンマー型の頭が目立つので迫力満点ですが、体や頭に対して口の幅はそうでもありません。

また、歯も鋭く尖っていますが、ホホジロザメやイタチザメなどの危険種に比べると、そこまで大きくはないです。

アカシュモクザメの頭骨標本
アカシュモクザメの上顎歯。鋭くはありますが歯は小さいです。

このような口でシュモクザメたちが何を食べているかと言えば、小魚、イカやタコ、小型のサメやエイの仲間です。

要は、ホホジロザメのように大きな獲物を豪快に噛みちぎるのではなく、一口二口で仕留められる小さな動物を捕食しています。

ちなみに、世界最大のシュモクザメであるヒラシュモクザメは特にアカエイの仲間が好みなようで、顎の部分にアカエイの毒針が刺さっていることもあります。

アカエイの毒は人間が刺されれば激痛に苦しむ猛毒で、毒以前にかえしがついた毒針自体がかなり痛いはずですが、彼らは気にしていないようです。

ヒラシュモクザメの顎骨。よく見ると歯茎に当たる部分にアカエイ類の毒針が刺さっています。

こうした食性から考えても、シュモクザメの仲間が獲物として人間を攻撃する可能性は極めて低いです。

噛まれたらもちろん大怪我(標本作っている時に歯が指に刺さっただけでもかなり痛かった)ので気を付ける必要はありますが、食べる目的で人間を襲うことはほぼないでしょう。

天草の事故は本当にシュモクザメによるものか?

「シュモクザメが危険なサメかどうか?」という議題を目にして多くの人が思い浮かべるのは、天草遊泳女子中学生サメ襲撃事件でしょう(サメ襲撃事故とも)。

1982年8月、熊本県天草郡の海にて、命綱で船につなげられていた女子中学生が下腹部を噛みちぎられて即死するという痛ましい事故が発生しました。

被害者の体には歯型のような跡が残っており、それがシュモクザメのものに似ていたことからシュモクザメ類の仕業とされています。

しかし、正直なところ、この死亡事故の犯人をシュモクザメとする説は疑ってかかるべきだと僕は思います。

事件の詳細な記録が見つからないため推定・推測が交じりますが、僕が懐疑的な理由は以下の通りです。

  • 被害者は当時13歳。仮に平均的な体形だった場合、ウェスト43~49cm、肩幅35cm前後(参考文献のサイトを参照)。
  • 3m近い大型のシュモクザメ類でも、口の大きさは成人男性の腕が1~2本入る程度(標本で確認済)。

以上の数値をもとに考えると、失血死に至る致命傷を負わせることはできたとしても、即死させるほど大きく下腹部を噛みちぎることができたのかは疑問です。

そもそもシュモクザメは積極的に人間に近づいてくることが少なく、海外でも死亡事故の例はほとんどありません。

この天草の事故をもとにシュモクザメを人食いザメ扱いする人も一定数いますが、松山のホホジロザメとは違って詳細な科学的な分析が行われておらず、真偽はハッキリとしません。

幼い命が失われたこと自体は悲しいですが、当該の事故については、シュモクザメ以外の大型海洋生物か、そもそも生物以外の要因(ボートのスクリューなど)を疑った方が良いと思います。

シュモクザメとは一緒に泳げる

シュモクザメは怖がられるどころか、ダイバーの間で大人気のサメです。

日本でも神子元島や与那国島などでアカシュモクザメを観察するダイビングが大人気です。

大きな群れで泳ぐアカシュモクザメの様子は「ハンマーリバー」と呼ばれ、サメ好きダイバーたちの憧れでもあります。

群れで泳ぐハンマーヘッドシャーク
人間に見向きもせず泳ぎ去っていくサメたち。

シュモクザメを無理やり危険なサメに仕立てるのであれば、このハンマーリバーへの憧れこそ命の危険があります。

というのも、ハンマーリバーを見るためのダイビングスポットはかなり流れが速いため、シュモクザメに襲われる以前に流されて命を落とすリスクがあります。

実際、シュモクザメを含むサメ類に襲われて死亡した・大怪我したという話はほとんど聞きませんが、海に流されて亡くなったダイバーの話は耳を塞ぎたくなるほど多いです。

僕もダイビングの経験は浅い方ですが、経験のある人なら尚更、海で怖いのはサメよりも海そのものだと分かって頂けるのではないでしょうか。

さて、次回の記事では「子供を産む時ハンマーヘッドは邪魔じゃないの?」というテーマで解説をするので、シュモクザメについて知りたい方は続きもぜひ読んでみて下さい。

参考文献

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