完全論破?カワウソペットを擁護する意見が完全に腐っていました。「価格」「飼育方法」などでググる前にこれを読んでください【カワウソペット問題(後編)】

この記事は以下の記事の続きです。

前回の記事でカワウソペット問題の概要を伝えてきたのですが、実はこのテーマは2020年にYouTubeの動画でも取り上げました。

その際に、「勉強になりました!」「よくぞ言ってくれた!」という賛同や感謝の声に紛れて、沢山の批判・暴言・嘲笑をコメント欄に書き込む人々がいました。

いちいち調べてはいないですが、その内容からして、カワウソペットの配信を行っている人たちのファン(もしくは本人の裏アカ)だと思います。

反論の中で複数あり、かつ辛うじて取り上げる価値があるものを抜粋すると以下の3つに分けられると思います。

カワウソペット信者

カワウソ飼育やSNS発信は違法じゃないから別にいいだろ

カワウソペット信者

実際にカワウソを飼っている人が沢山いるだろ

カワウソペット信者

CB個体なら別に飼ってもいいだろ

そこで今回は、こうした反発の声に対する僕なりに回答を提示しながら、カワウソペット擁護論が完全に終わっているということを解説します。

そのうえで、カワウソペット問題に関連した水族館・動物園の取組みや関連ニュースを紹介していきます。

この記事を最後まで読めば、カワウソペットを擁護する人々の議論のレベルの低さに加え、カワウソペット問題の根本がご理解いただけると思います。

目次

解説動画:完全論破?カワウソペットを擁護する意見が完全に腐っていました。「価格」「飼育方法」などでググっている人は全員これを観てください【カワウソペット問題(後編)】【絶滅危惧種】

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2022年6月25日です

「違法じゃないから別にいいだろ」は終わってる

まず最初に多かったのは、「カワウソの飼育やSNSへの投稿は違法ではないから批判するな」というものです。

あくまで密猟や密輸を行う連中が悪いから、カワウソ飼育者に対して「可愛い側面ばかりアピールしている」や「購買意欲を促進している」などの理由で批判するのはおかしいという主張のようです。

これについてハッキリ言わせてもらいますが、「違法じゃないから文句言うな」という類の反論は完全に終わっています。

世の中には、違法ではなかったり逮捕されないけれど、迷惑で慎むべき行為が沢山あります。

例えば、ネットワークビジネスの勧誘をされて不快に思う人は多いですが、ネットワークビジネス自体は違法ではありません。

一部の勧誘方法や商品が法に触れたことはありますし、よく混同されるネズミ講は違法ですが、ネットワークビジネスをしているだけでは逮捕されません。

反ワクチンも似たようなものです。

彼らもワクチン接種会場で迷惑行為をしたり、マスクをするしないでトラブルを起こした時に威力業務妨害などの罪に問われていますが、「頭が悪いデマを拡散している」や「感染対策上問題である」などの理由で罰することはできません。

しかし、どちらも迷惑かつ不快だと思っている人が大勢おり、実際に様々な問題を起こしています。

「違法じゃないから別にいいだろ」が成立してしまえば、こうした社会問題はもちろん「友達や兄弟の恋人を寝取る」などの警察が動くほどでもない(あるいは動けない)不道徳な行為も全て正当化できてしまいます。これはシンプルに馬鹿げていますね。

こうしたことを考えれば、法律で規制するのが難しい行為でも、公共の福祉に反しない言論の自由の範囲で批判することはできるとご理解いただけると思います。そして、批判の内容や根拠が正当であれば、違法でなくても行動を改めるべきです。

  • カワウソをペットのように取り上げたマスメディア
  • 保全や適正飼育の問題を無視して売りさばいた販売業者
  • 需要を煽ったカワウソカフェ
  • カワウソペット動画を投稿したインフルエンサー
  • 購入や飼育の方法を紹介したブロガー

密輸に直接携わっていない彼らも、カワウソペット問題について反省し、今後の行動を改めるべきです。

そして、それができないのであれば、さらに厳しい批判や規制によって縛り上げられても仕方ないと思います。

適正飼育という概念の欠如

もう一つ多かった反論が「カワウソは飼育が難しいと言っているが、現にYouTuberで飼っている人が沢山いるだろ」というものです。

このコメントを見て感じたのが、「家の中で一定期間生かしておける」=「飼える」だと勘違いしている人が多いということです。

要するに、「適正飼育」という概念が頭からすっぽ抜けているんです。

カワウソの生態をおさらいすると、彼らは水辺に暮らす動物で、半水棲といってもいいほど泳ぐことに特化した特徴・習性をもっています。

そして、両親を中心とした複数頭の群れで生活し、その行動範囲もかなり広いです。

カワウソを長期的に飼育するのに必要な環境というのは、家の中に多少オモチャがあるとか、風呂場で遊ばせればいいとか、そういうレベルではないんです。

カワウソを適正飼育できる施設を一般家庭で用意するのはほぼ不可能です。

IUCN のカワウソ専門家グループは、コツメカワウソは単独で飼育するのは推奨できず、飼育するには2頭につき最低 60 ㎡ほどの飼育スペースが必要と提言しています。

実際、ほとんどの動物園や水族館がカワウソを複数で飼育しているはずです。

飼育スペースについては基準を満たさずに長期飼育している水族館も存在するので必須条件とは言いませんが、要はそれくらいの設備と覚悟を持って飼わなければならない動物だということです。

カワウソ不適切飼育の末路

マスメディアやSNSで紹介される可愛いカワウソたちの裏で、複数のカワウソが不適切飼育によって命を落としています。

2010~2019年に動物病院に運ばれたカワウソペット20個体を調べた研究によると、キャットフードをメインにした不適切なエサが原因と思われる腎機能障害、無理な移動による脱水症状などの理由で重症または死亡に至る事例が多く確認されています。

また、カワウソカフェにおいては、見知らぬ人に触られるストレスや水泳不足が原因と思しき重度の脱毛などの症状が起きた事例もあります。

さらに、「複数で飼うのが良い」と先ほど伝えましたが、適切に管理しなければ片方が噛み殺されるケースもあります。

参考文献に実際の写真が載っていますが、生皮を引き裂かれた凄い状態でした。

こうした動物のペット需要を安易に煽る人々は、生物多様性保全の前にペットの適正飼育という考えが欠落しており、控えめに言っても勉強不足です。そのような状態で飼育を推奨するなど、ハッキリ言って腐っています。

出回っているのは本当にCB個体か?

「現在出回っているコツメカワウソはCB個体だから今更蒸し返すのはおかしい」という批判も受けました。

サメ社会学者Ricky

CB個体とは、人工環境下で繁殖した個体を指します

これについてまず気になるのが、「そもそも本当に売られているのはCB個体なのか?」ということです。

先ほども述べたとおり、カワウソ類は飼育が難しい動物です。水族館や動物園で繁殖に成功した事例はありますが、常にうまくいくわけでもありません。

果たして、一般人にカワウソを売りさばくようなマインドの業者やそれに関わるブリーダーなる人々が、そんなに簡単に繁殖させられるのでしょうか?

もし、「市場に需要はまだあるが繁殖が上手くいかない」という状況になれば、また密輸の被害が起きてしまう恐れがあります。

また、附属書Iへの掲載でカワウソ取引が規制されたとはいえ、エキゾチックアニマル業界はもともと流通が不透明なことが問題視されています。

実際、カワウソ飼育を推進するブログでも、ペットショップが許可証を提示できるか確認するよう呼びかけています(注意喚起をする前に、無許可のショップを早く潰すべきです)。

今回の記事の参考文献でもあるTRAFFICの記事『日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要の緊急評価』にも、以下のような記載があります。

カワウソを安定的にペット取引に供給しているようなブリーダーもしくは繁殖施設に関する特定的な情報は販売業者の話から全く得られなかった。どちらかというと、国内飼育下繁殖による供給は極めて不安定であるという認識が共有されていることが伺えた。これはカワウソが家畜化された動物ではなく、特に十分な専門的知識に欠くブリーダーにとっては繁殖が容易ではないであろうことからも想像に難くない。

『日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要の緊急評価』より引用

これは2018年に書かれたものですが、4年でコツメカワウソの家畜化が急に進むわけないので、現状が大きく変わっているとは思えません。

果たして動物販売業者がそんな簡単に繁殖させられるのか?本当に違法な個体は混じっていないのか?この辺りは疑ってかかった方が良いと僕は思います。

CB個体は根本的解決ではない

CB個体の取引は確かに合法ですが、「CB個体だからいいだろ」という風潮をそのまま受け入れると、他のエキゾチックアニマルで同じことが起きるかもしれません。

ここが、カワウソペット問題の根本につながっていきます。

もともとカワウソは国外の違法行為、密輸、虚偽申請など、ブラックなルートで日本に入り、日本の規制が緩いためにロンダリングのような取引が横行しました。附属書Ⅰへの掲載で規制は強化されましたが、未だに販売は可能で、ペットにしたいという人も多くいます。

つまり、規制が強化された今でもビジネスが一応成立しているんです。

何が言いたいかというと、「絶滅危惧種だろうが違法取引だろうが、日本に持ち込みブームを起こして繁殖させれば、規制が後に強化されても飼える・儲けられる」という、悪き前例になってしまわないかを懸念しているんです。

そして、実際にそんな心配が現実になるかと思われる事案がありました。

『天才!志村どうぶつ園』を前身とするテレビ番組『I LOVE みんなのどうぶつ園』において、スナネコをペットのように撫でまわすシーンが公開されて物議を醸しました。

スナネコは「砂漠の天使」と称されるほど可愛らしいネコですが、牙が鋭い、希少が荒い、原産地と日本では気候が大きく異なるなどの理由で、決してペット向きな動物ではありません。

スナネコは非常に可愛いですが、カワウソ同様ペット向きではありません。

にもかかわらず、件の番組はスナネコを扱うペットショップを紹介し、可愛いペット向き動物のように取り上げました。

これに対し、同じペットショップ内の他の動物の扱いも酷いという批判も加わり、ある種の炎上騒ぎまで発展しています。

さらに事態を重く見たのか、スナネコを飼育している那須どうぶつ王国と神戸どうぶつ王国は、それぞれの公式HPと各取材において「決してペットとして飼いたいと考えないで下さい」、「コツメカワウソの二の舞にしてはいけない」などの発信を行いました。

一般人の飼育に向かない野生動物をペットとして売り出す販売業者、それを可愛い可愛いと持ち上げるマスコミ、そのブームに乗っかる飼育者・・・。何度同じ過ちを繰り返すのでしょうか?愚昧としか言いようがありません。

  • 「保全なんてどうでもいい」
  • 「絶滅危惧種とか関係ない」
  • 「違法じゃないから別にいいだろ」

このような無知・無理解・自己中心的な考えをぶち壊さない限り、カワウソペット問題は真に解決したとは言えません。

現状カワウソ飼育者の配信内容の規制や広告収入の停止など、ハード面の抑制は難しいと思います。

しかし、風潮・雰囲気といったソフト面での抑制は可能です。

  • カワウソをペットとして配信することが批判される
  • 密輸や絶滅危惧種の問題に触れつつ適正飼育をする様子を配信するよう求められる
  • カワウソペットブームに賛同する人間が白い目で見られる

上記のようなソフト面な抑制は、コツメカワウソたちが附属書Ⅰに掲載された今でも存在し続けるべきだと思います。

保全を訴える世の中の流れ

ここまでカワウソペット問題について辛口で語ってきたのですが、実はここ最近良くなったと感じることがあります。

それは、水族館や動物園、保全団体、そして生き物好きの個人の方々が、「カワウソをペットにすべきではない」「ペットブームは深刻な問題である」という風にハッキリと主張している点です。

もっとも、僕が知らなかっただけでそういう動きは昔からあったのかもしれませんが、2020年くらいから目立つようになってきた印象があります。

例えば、世界カワウソの日です。

毎年5月の最終水曜日は世界のカワウソの現状や取り組みについて多くの人に知ってもらうための日「世界カワウソの日(World Otter Day)」とされています。

この日自体は前からあったものですが、去年と今年、この日に合わせて多くの動物園や水族館が企画展やLIVE配信を実施しました。

そして、その中で数多くの園館が

  • コツメカワウソを含む多くのカワウソ類が絶滅危惧種であること
  • ペット需要のためにカワウソたちが密猟・密輸・死亡していること
  • カワウソが決してペット向きではない動物であること

などを、丁寧かつ優しく、しかしハッキリしたトーンで主張していました。

また、サンシャイン水族館の企画展では、世界カワウソの日に合わせてカワウソと保全の問題を解説していました。

世界カワウソの日に合わせて展示されたカワウソ保全に関する啓発パネル
コツメカワウソに迫る危機としてペット需要にも触れられています。

こうした企画展だけでなく、常設掲示としてカワウソの密輸問題を紹介するポスターや看板も増えてきたように思えます。

カワウソ飼育とAdobe広告取り下げ

こうした流れの中で印象に残っているのはAdobe広告取り下げの件です。

Adobe Creative Cloudのネット広告において、「ペットの魅力を引き出す編集術」というアピールのため、ある配信者が飼育しているコツメカワウソを抱き上げている画像が出ていたのですが、これに対し日本アジアカワウソ保全協会が抗議文を送りました。

抗議文の一部を以下に抜粋します。

合法的に輸入されたものの飼育は違法ではありませんが、絶滅が危惧される動物をペットとして扱うことを是とする行為は、 “環境を守る製品イノベーション”や”環境保全への取り組み”を訴求し、持続可能性を求める貴社の企業理念と相反するものと考えます。

貴社広告の『ペットの魅力を引き出す編集術』において絶滅が危惧されるコツメカワウソが一般的なペットであるかのように前面に押し出されており、Adobe 製品の利用者ならびに利用を考える方々へ、誤ったメッセージを送るものになっている

日本アジアカワウソ保全協会HPに公開された抗議文より引用

この抗議に対しAdobe社は「弊社広告が配慮に欠けるものでありましたことを深く反省し、今後このようなことが起きないよう周知徹底し細心の注意を図っていく」という回答を出し、広告を取り下げています。

これは色々な意味で非常に良い事例です。

まず、コツメカワウソをペットとして押し出すような広告に「貴社の企業理念と相反する」という、相手の立場を軸にした抗議をした保全協会も素晴らしいですし、それに対して真摯に対応したAdobe社にも好感を持てます。

そして、この事例が「コツメカワウソをペットとしてアピールするのは誤ったメッセージであり、企業の理念やイメージに関わる問題」として大手企業が対応した事例という意味でも大きいです。

こうした保全の問題は「また生き物ヲタクがなんか意味不明なこと喚いてやがる」みたいに片づけられがちですが、カワウソペット問題については、それとは違う流れが着実に強くなっているのを感じます。ここで啓発を止めることはむしろ勿体ないです。

あなたの「可愛い」がカワウソを滅ぼさないよう、この問題に向き合って欲しいと思います。

参考文献

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