おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!
先日、シャークジャーナリスト沼口麻子さん主催のサメ談話会に参加し、こちらの本を購入しました!
『ホホジロザメ』
種名だけ持ってくるド直球なタイトルと、あまりにもリアルで迫力ある表紙で忘れそうになりますが、こちらは図鑑やビジネス書ではなく絵本です。
絵本内でホホジロザメについて子供にやさしく(しかし具体的に)綴ったのは沼口さんですが、絵を描かれたのは画家の関俊一さんです。
関先生は三重大学教育学部の教授であり、あの葛西臨海水族園の魚名版やポスターも描かれている方です。
そんなお二人がタッグを組んだ本なので、子供だけでなく大人も欲しくなる絵本に仕上がっています。
サメマニアも満足するクオリティ
はじめ「絵本」と聞いた時は、子供の頃に読んだ『にじいろのさかな』や『スイミー』のようなテイストを想像していたので、表紙を見た時は衝撃でした。
そういう絵本がダメだという訳では一切ないですが、ただリアルタッチであるだけでなく、口うるさいサメマニアでも納得してしまうほど実物に即した高クオリティなのは、さすがとしか言いようがありません。
葛西臨海水族園の魚名板を手掛けるほど生き物への造詣が深い作家先生と、日本有数のサメ博士のもとで学んだシャークジャーナリストの共著だからこその出来栄えだと思います。
日本初のホホジロザメ特化本
絵本に限らず、日本には特定の種に限定したサメ関連の書籍は(僕が知る限りは)存在しません。
深海生物図鑑や危険生物図鑑の中で特定のサメだけ扱われることはあります。
また、洋書を含めれば、ホホジロザメやジンベエザメなどの有名人気種だけにフォーカスした書籍が販売されています。
しかし、日本国内には、海外にあるようなホホジロザメだけに特化した本はないようです。
そのため、この絵本『ホホジロザメ』が日本初のホホジロザメに特化した書籍ということになります。
科学者ではないからこそ描ける本?
この本の構成としては「ホホジロザメの一生を描く」というものになっています。
そのため、歯をむき出しにした「いかにもジョーズ!」という姿だけではなく、様々なホホジロザメの側面が描かれています。
ただし、ホホジロザメの一生というのは実は解明されていないことの方が多いです。
「人食いザメ」や「ジョーズ」というイメージが独り歩きして世界中に広がっていますが、どこでどのように生まれ、育ち、交尾するのかはっきりとは分かっていません。
そのため、出産シーンや母胎内の様子など、この本の一部の描写は近縁種(ネズミザメやシロワニなど同じネズミザメ目)を参考にして描かれているそうです。
こうした描写は、厳しい言い方をすれば不完全な知見に基づいており、「科学的に正しい」とは必ずしも言えません。
しかし、逆に言えば、科学者ではないけれども科学に理解のあるお二人だからこそ作れた絵本だったのかなと思います。
科学においては全てが仮説なので「絶対正しい」はそもそもあり得ませんし、現状分かっている情報をもとにできるだけ正しくあろうと努めて一般向けに発信していく活動は、生物学・生態学分野でもっと盛り上がるべきだと僕は思います。
それを否定する分野は、一般の理解や関心を得られずに衰退していくのではないでしょうか。
今回参加したイベントでも、水族館の職員さんに教わった内容を自分なりにまとめたり、絵本や論文を参考にしながらサメの絵を描く子供たちの姿がありました。
このような子供たちを増やしていくためにも、『ホホジロザメ』のような絵本の存在は重要で、もっとこうした作品が世に生まれて欲しいなと思います。
今回の記事で少しでも興味が湧いた方は、ご自身用、あるいはお子さん用に、ぜひ購入してみてはいかがでしょうか?
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