ノコギリエイとノコギリザメの違いは?見分け方を全て解説!【絶滅危惧種】【水族館】

ノコギリエイというエイの仲間をご存知でしょうか。

危険生物としてテレビで取り上げられることがあるので知っている人も多いと思いますが、水族館でノコギリエイを見た人の恐らく8~9割が、ノコギリ”ザメ”と勘違いしたまま帰ってしまいます。

しかし、これは非常にもったいないことです。

何故なら、ノコギリエイはノコギリ以外にも面白い特徴があり、水族館で見られるのが奇跡に近い超激レア生物だからです!

この記事では、ノコギリザメとの比較をしながら、ノコギリエイの特徴や生態を徹底解説していきます!

目次

解説動画:超激レアの危険生物?ノコギリエイとノコギリザメとの違い・見分け方が全て分かります【絶滅危惧種】【水族館】

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2022年0月0日です。

ノコギリエイとノコギリザメの違い一覧

ノコギリエイとノコギリザメの違いを一覧にすると以下のようになります。

これら4項目を全て覚えておけば、水族館でも写真でも、ノコギリエイとノコギリザメを間違えることはまずありません。

今回はこの4項目に沿って、ノコギリエイの特徴や生態を学んでいきましょう。

見分け方1:エラ孔の位置

ノコギリエイは体のお腹側にエラ孔がありますが、ノコギリザメのエラ孔は体の側面にあります。

このエラ孔の位置は、全てのサメとエイに通じる違いという点で一番重要です。

まず前提の確認ですが、サメとエイはともに軟骨魚綱・板鰓亜綱というグループに分類される、非常に近い仲間です。

両方とも、板を並べたような5対のエラ孔を持っています。

そして、エイの仲間は以下の4つのグループに分かれます。

  • トビエイ目
  • ガンギエイ目
  • シビレエイ目
  • ノコギリザメ目

ノコギリエイの仲間はもちろんノコギリエイ目に入っていますが、このノコギリエイ目の仲間にはノコギリを持たない種もいて、しかもその多くがサメと姿形が似ています。

見た目が似ているだけならまだしも、「サカタザメ」という紛らわしい名前を付けられている仲間もいます。

シノノメサカタザメ
シノノメサカタザメ

これではサメだと思ってしまうのも仕方ない気がしますが、エラ孔の位置がお腹側か横側かという違いは、全てのサメとエイに共通しています。

シノノメサカタザメも下側に鰓孔があります。

ノコギリエイとノコギリザメを見分ける方法は他にもありますが、系統学的なグループ分けに沿った違いという点で、エラ孔の位置は必ず覚えていただきたいポイントです。

見分け方2:サイズと体格

ノコギリエイとノコギリザメのもう一つの違いは、ノコギリエイの方が圧倒的にデカいということです。

ノコギリエイは種によって大きさは異なりますが、小さなものでも全長3m前後、大きいものでは全長7mに達することもあります(最大級のホホジロザメより大きいです)。

最大で全長7mにも達するグリーンソーフィッシュ。広角レンズでないと全身入りきりません・・。

対するノコギリザメは、世界で確認されている約10種の全てが2m以下です。1.5m前後在れば大きい方だと思います。

また、ノコギリエイの方が体も幅広です。

ノコギリエイはマントのように広がった体の延長線上に胸鰭があるような体つきをしています。一方のノコギリザメは、細長い体に胸鰭をつけたような体つきになっています。

ノコギリエイとノコギリザメのシルエットイメージ。
ノコギリエイとノコギリザメのシルエットイメージ。

仮にエラ孔の位置が分からなかったとしても、体格の違いからノコギリザメと見分けることは容易だと思います。

見分け方3:ノコギリのトゲとヒゲ

ノコギリエイとノコギリザメでは、ノコギリ部分に生えているトゲの並び方や大きさ、構造などに違いがあります。

サメ社会学者Ricky

ノコギリ部分を吻、トゲの部分を吻歯または吻棘と呼びます。

左がノコギリエイ、右がノコギリザメです。こうして並べてみると、以下のような違いが分かります。

  • ノコギリエイは吻の太さがほとんど一定だが、ノコギリザメは先の方が細くなる。
  • ノコギリエイはトゲの太さや並び方にある程度の統一性があるが、ノコギリザメはトゲの位置も長さもバラバラ。
  • ノコギリエイの吻にヒゲはないが、ノコギリザメにはヒゲがある。

これらの違いの一部は、ノコギリの構造に由来しています。

ノコギリエイのトゲは吻のなかにあるポケットのような部分に収まっていて、折れても生え変わることはありません。

一方、ノコギリザメの吻は無数にあるウロコのうちの一部が大きくなるような形で生えていて、折れても開いた場所から別のトゲが伸びてきます。

同じ「ノコギリ」と呼ばれる部位でも見た目や構造が異なっているのです。

ノコギリエイとノコギリザメの吻構造イラスト

見分け方4:生息環境

ノコギリエイとノコギリザメは生息環境も異なります。

実は、ノコギリエイは海水と淡水の両方で生きられる広塩性のエイです。

ノコギリエイの仲間は熱帯や亜熱帯の温かい地域の沿岸に生息しており、どの種も河口域や汽水域に現れ、淡水が流れる川でも確認されています。

淡水に適応する詳しいメカニズムはまだ分かっていませんが、淡水域で見つかるのはオオメジロザメ同様に小さな若い個体が多いです。

恐らく天敵が少ない川で幼少期を過ごし、大きくなってから海に戻るようなライフサイクルなのだと思います(とは言っても、ワニに食われているノコギリエイもいるようですが・・・)。

一方のノコギリザメは、海水でしか生きられません。

しかも、ノコギリエイが水温が高い浅瀬に生息するのに対し、ノコギリザメは深海を含む水温が低めの環境を好みます。

一応ノコギリエイが水深100mより深い場所にいたり、ノコギリザメが浅瀬を泳ぐ姿が目撃されることもあるようですが、全体的な傾向としてはノコギリエイが水温の高い浅い場所、ノコギリザメが水温の低い深い場所という覚え方で問題ないです。

ここまで読んで、

確かに違いではあるけど、見分けに関係するの?

と思う人もいると思いますが、水族館では一つの見分け方につながります。

太陽光が降り注ぐ水槽で、オオメジロザメやナンヨウマンタなどの温かい水温を好む生物と展示されていた場合、まず間違いなくノコギリエイだと思っていいでしょう。

一方で、暗い照明の水槽で深海魚と一緒に暮らしていれば、それはノコギリザメだと判断できます。

水族館のノコギリザメ。大抵このような暗めの小さな水槽に展示されています。

ノコギリエイは絶滅危惧種

ノコギリエイとノコギリザメを見分けるという点では以上の内容で十分ですが、最後に重要な違いを紹介します。

それは、ノコギリエイは深刻な絶滅の危機に瀕しているということです。

ノコギリザメの仲間は、日本近海に生息する Pristiophorus japonicusを含め、絶滅の心配は現状ないとされてます。

しかし、ノコギリエイは現在確認されている2属5種の全てがICUN RedlistにおいてENまたはCRという評価を受けている絶滅危惧種です。

さらに、絶滅の恐れがある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約において、ノコギリエイは全種が附属書Ⅰに掲載されています(商業目的の国際取引は禁止)。

ここまでの事態になった主な原因は、乱獲開発です。

漁業の影響

先ほど、エイとサメは近い仲間という話をしましたが、ノコギリエイのような大きなヒレをもつエイは、サメと同様にフカヒレ漁の対象になります。

サメのように大きなヒレを持つエイはフカヒレ漁の対象になります。

また、ある種の土産物やコレクションとして吻が売買されたり、科学的根拠のない医薬品の原料としてノコギリエイが消費された事例もあります。

さらに、ノコギリエイの吻は網に絡まりやすいため、仮に狙っていなくても混獲されてしまうことがあります。

開発の影響

漁業活動に加えて、生息域の破壊や汚染も懸念されます。

先ほども触れた通り、ノコギリエイは沿岸や河口近くに生息しています。

こうした環境は人間の生活圏に近いため、開発や生活排水などの悪影響を受けやすいです。

特に、マングローブ林の伐採やダム開発などによって河川の環境が大幅に改変されると、ノコギリエイの繁殖活動に重大な影響をもたらす恐れがあります。

単為生殖は最終手段?

こうした影響により、かつてはインド太平洋に幅広く分布していたと思われるノコギリエイの個体数は減少し、今では全種が絶滅危惧種とされています。

ノコギリエイは他の大型板鰓類同様に子供を産む数も少なく成熟にも時間がかかるので、激減した数が元通りになるには相当な時間がかかります。

あるいは、すでに手遅れな可能性もゼロではないです。

米国フロリダでは、野生のSmall Tooth sawfishが単為生殖(オスの精子を使わずに子供を作る)事例が確認されています。

生命の神秘という観点からすれば興味深いですが、単為生殖をしなければいけないほど個体数が減少しているとしたら・・・・。

妄想に近い推測ですが、もしかしたら単為生殖は彼らなりの最終手段であり、もう絶滅の未来は間近に迫っているのかもしれません。

参考文献

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