人喰いザメの被害がバハマで連続?なぜサメに襲われる事故が多発するのか?

映画やマスメディアに植え付けられたイメージに反し、普通に生きている人間がサメに襲われる可能性は極めて低いです。

そのため僕は普段「人間を襲うサメは全体の0.1%以下」や「サメよりも水難事故や他の危険生物で命を落とす確率の方がずっと高い」など、サメの偏見を是正するような発信を主にしています。

しかし、少ない件数ではありますが、悲惨な事故が起きていることは事実です。

そして、マリンレジャーが人気の観光地であるバハマ諸島にて、今サメの事故が相次いで発生しています。

今回はバハマ諸島で起きているシャークアタックやその考えられる原因について解説をしていきます。

目次

解説動画:人喰いザメの被害がバハマで連続?なぜサメに襲われる事故が多発するのか?

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2023年12月28日です。

バハマでサメ被害が連続?

バハマと言えばカリブ海に浮かぶ島国であり、「青い海と白いビーチ」という言葉がぴったりなリゾート観光地です。

ダイビングやマリンスポーツをしたい方には理想的な場所ですが、今年に入って3件の事故が発生しています。

1件目:脚を噛まれて重傷

2023年6月7日、73歳の女性ダイバーが、グランド・バハマ島の沖でサメに襲われて大怪我を負うという事故が発生しました。

この方はダイビングをしていた後、一度船に戻ってウェットスーツを脱いだ状態で泳ぎ、船に戻るためのハシゴを登っている最中にサメに噛まれました。

噛まれた女性は各メディアの取材に対し、以下のようにコメントしています。

  • “サメは下から襲ってきた”
  • “近づいていることにすら気付かなかった”
  • “トラックがぶつかって来たような衝撃だった”
  • “自分を噛んで振り回す頭しか見えなかった”

彼女はサメを叩くなどして必死に抵抗し、サメが離れたところで船に上がり、一命をとりとめました。

しかし、友人が止血の応急処置をしていなければ失血死していたであろう大怪我を負ってしまいます。

さらに、感染症の恐れがあるという担当医の判断から、噛まれた脚は切断することになりました。

当時現場近くではグラスボート(船内にあるガラスを通して海中観察ができる観光船)がサメに餌付けをしていたため、サメがエサと勘違いして女性を噛んだ説が濃厚です。

被害者の女性は取材に対し、「11年間潜って来たけどサメを脅威に感じたことは無かった。私はサメを責めません。ボートにエサがあるのを彼らは分かっていたのだから、私の脚がエサに見えたのでしょう」と答えています。

2件目:水中に引きずり込まれ行方不明に

2023年11月21日、ドイツから旅行に来ていた47歳の女性ダイバーがサメに襲われて行方不明になりました。

被害者はグランド・バハマ島にあるタイガービーチという場所でダイブツアーに参加していました。

このタイガービーチはイタチザメをはじめとする大型サメ類とダイビングできる人気スポットで、ガイドの注意事項をしっかり守っていれば基本的には安全にダイブすることができます。

しかし、被害者の女性は水面に上がって直後に水中に消えていき、姿が見えなくなってしまいました。

事故の後に捜索が行われましたが、警察の発表によれば、彼女のダイビング機材しか見つからなかったとのことです。

3件目:パドルボード中に襲われる

2023年12月4日、バハマの首都ナッソーがあるニュープロビデンス島のビーチでパドルボードをしていた44歳の米国人女性がサメに噛まれて亡くなりました。

女性はボストンから来ていた観光客で、親類の男性(夫という情報もありましたが真偽不明)と一緒に岸から1.2km程のところでパドルボードをしている最中サメに襲われました。

異変に気付いたライフカードが現場に駆け付け、噛まれた女性と男性をボートに引き上げたのですが、女性は右側の脚とお尻の部分を激しく損傷しており、心肺蘇生の甲斐もむなしく、その場で死亡が確認されました。

傷跡の写真などを確認することはできませんでしたが、止血だけでなく心肺蘇生が必要な状態でその場で死亡したということは、恐らく噛まれた部分の肉は食い千切られていたのではと推測しています。

疑惑:サメの噛み跡のある遺体

2023年8月に、サンダースビーチという場所でサメの噛み跡がついた男性の遺体が発見されました。

ただし、この方はサメによって襲われたのか、他の原因で衰弱または死亡したところをサメが噛んだのか不明です。

以前に遊戯王作者の方がサメに襲われたのかどうかを解説した記事でも詳しく述べましたが、サメの噛み跡があるからサメに襲われたと決めつけることはできません。

この点は注意が必要ですね。

バハマに生息する大型サメ類

これら3つの事故について、現状どの記事でも襲ったサメ種について確定的な情報は出ていないので、確定的な情報は出ていません。

しかし、バハマには危険な大型サメ類が生息しています。

イタチザメ

まず一種目は先程も少し名前が出たイタチザメです。

メジロザメ目イタチザメ科イタチザメ属に分類され、熱帯や亜熱帯を中心に分布する大型のサメです。

全長はおよそ2.2~3.5m、大きいものでは5mを超えることもあります。

丸みを帯びた短い吻、筋肉質で太めの体、背中側に薄く入る縞模様、尾柄部に隆起があるなどの特徴を持ちます。 

イタチザメは魚はもちろん、サメやエイ、ウミガメや海鳥、捨てられた家畜や海洋ゴミなどあらゆるものを食べることで有名なサメです。

鶏冠かハートを思わせる独特の形状の歯を使い、獲物の肉を引き裂いて固い骨も噛み砕きます。

イタチザメの歯

オオメジロザメ

実際のオオメジロザメ

もう一種の危険ザメはオオメジロザメです。

メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属に分類されるサメで、淡水環境にも適応できる数少ないサメとしても注目を集める種です。

全長はおよそ2〜2.5m、大きくても3mほどのサメです。

こちらも吻が短く丸みを帯びていて、太くがっしりとした体、小さい目などが特徴的なサメです。上顎歯は肉を切り裂くようなノコギリ状の三角形の歯が並び、下顎歯はやや細い突き刺すような歯をしています。

オオメジロザメはイタチザメに比べれば小柄なサメですが、時に高い攻撃性を発揮するサメとして有名で、それなりに大きなサメ類なども容赦なく襲って食い殺すことがあります。

オオメジロザメの歯。左が上顎歯、右が下顎歯。

その他のサメ類について

この他に人間に危害を加える可能性があるとしたらペレスメジロザメやカマストガリザメ、ニシレモンザメなどが挙げられると思います。あとは状況によってはヒラシュモクザメも候補に挙がるかもしれません。

ただ、食性や歯の形状・大きさ、過去に起きた事故の記録などをもとに考えると、ダイバーが水中に引きずり込んで行方不明にしたり、バドルボードに乗っていた女性を襲うとは考えづらいです。

特に3件目についてはパドルボード程大きなものを攻撃しているので、3mを超えるような攻撃性の高いサメとするのが妥当です。

したがって、これらの事故はイタチザメやオオメジロザメの大型個体によるものだと僕は推測しています。

バハマにホホジロザメはいるのか?

実際のホホジロザメ。

人を襲うサメとして『ジョーズ』にも登場するホホジロザメを思い浮かべる人も多いと思います。

しかし、ホホジロザメとバハマで出会う確率は恐らく低いです。

NPO法人OCEARCHが行っているタグ付け調査によれば、ホホジロザメがバハマ近海を訪れているものの、ダイバーなどが遭遇することは稀なようです。

恐らく回遊の途中で立ち寄っているだけで居座ることはなく、人間が泳がないような深みに潜ってイカ類などのエサを食べているのではと思います。

なぜバハマでサメの事故が連続するのか?

現状では特定の原因が絶対に悪いと言い切るのが難しいですが、サメの事故が連続してしまう要因について、仮説を72つほど紹介します。

要因①:観光客が多い

単純な話ですが、そもそも海に入る人口が多いので危険なサメと出くわす確率も自然と上がってしまうということです。

冒頭で言った通りバハマは観光業が国を支える主要産業であり、毎年数多くの方が訪れます。

今年9月にPR Newswireなど複数のメディアで報じられた情報によれば、バハマを訪れる観光客の数は1月~7月だけで589万人を超え、コロナ禍が本格化する前の2019年における720万人を超える勢いです。

もちろん全員が海に入るわけではないと思いますが、やはりマリンスポーツやダイビングが人気なのは間違いありません。

海に入る人が沢山いれば、サメが人間を獲物と見間違えたりあえて獲物として襲い掛かる確立が低くても、どうしても事故が起こる件数は増えてしまいます。

交通事故の件数が人口や車が多い地域で多いのと同じ理屈ですね。

要因②:観光業の餌付け

あくまで仮説の段階ですが、現地で行われている餌付けが事故のリスクを高めている恐れがあります。

事故の説明でもお話しした通り、バハマではサメを観察する観光業が盛んです。

2件目の事故が起こったタイガービーチは特に人気のダイビングスポットで、毎年数多くのダイバーが訪れています。

また、バハマ自体が2011年からサメの保護区を設立しており、現地ではサメが漁業資源よりも観光資源として重要視されています。

これ自体は特に問題ないのですが、こうしたサメを対象にした観光ツアーでは、餌付けが行われることがよくあります。

タイガービーチではガイドがほとんど手渡しで餌付けをすることで、イタチザメ、ニシレモンザメ、ヒラシュモクザメなどの大型サメ類をかなり至近距離で観察・撮影することができます。

実際のタイガービーチダイビングの様子↓

こうした行為で懸念されるのは、餌付けによってサメが人間をエサと結び付けたり、人間を怖がらなくなる可能性です。

サメたちからしても人間はよく分からない大型動物なので、基本的には怖がったり警戒されたりします。あるいは関心を持たれないこともよくあります。

しかし、餌付けで人間やボートをエサと条件づけたり、人間への警戒心が低下することで人間とサメ類の距離が近くなり、事故が起きやすくなる可能性があるんです。

もちろんタイガービーチのダイビングツアーで事故が起きるのは極めて稀ですし、本当にエサやりが原因でサメが人を襲うようになるのか確たる証拠はありません。

ざっくりと調べた範囲ですが、餌付けによってサメの行動パターンが変わったと示す研究はあるものの、シャークアタックとの強い関連を示したものはないようです。

しかし、少数とはいえ取り返しのつかない事故が実際に起きている以上、大型サメ類と潜るダイビングではケージに入る、そもそも餌付けを制限する等、何かしら対策を検討した方がいい気がします。

まとめ

以上がバハマで起きているシャークアタックの解説でした。

現状表に出ている情報が少ないので推測の多い内容になりましたが、大型サメ類、もっと広く言えば野生動物との関りを考えるうえで何か参考になれば幸いです。

参考文献

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