サメVSワニ?弱肉強食を制する水中最強ハンター2種を徹底比較&解説!【巨大ワニ】【人食いザメ】

突然ですが、あなたはサメとワニのどちらが強いと思いますか?

どちらも水中に住む危険で恐ろしいハンターというイメージがあると思いますが、彼らを比較してみると、実は面白い共通点や違いがあったります。

そこで今回は、サメとの比較でワニを解説し、「野生で闘うことはあるのか?」「どちらが強いのか?」という疑問にも答えしていきます!

目次

解説動画:サメVSワニ?弱肉強食を制する水中最強ハンター2種を徹底比較&解説!【巨大ワニ】【人食いザメ】

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サメとワニを徹底比較!

サメとワニの比較をする前に、まず前提を確認します。

今回主に紹介するのはサメ&ワニは以下のような種がメインになります。

  • サメ:ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメなど
  • ワニ:イリエワニ、ナイルワニなど

要は、大きくて有名で実際に人を襲うこともある種類ですね。

世界にサメは約550種、ワニは25種いるとされています(諸説あり)。

今回の記事は多様性に富む両グループの、ごく一部を比較した大雑把な解説であることをご理解ください。

歯の違い

サメの歯は何度でも生え変わるということはご存知の人もいると思いますが、実はワニの歯も何度も生え変わります。ただし、それぞれの仕組みは大きく異なっています。

サメの歯は顎の骨にくっついておらず、歯茎に埋まっている状態です。顎の外側に向かってベルトコンベアのように歯が移動して、端に到着する頃に歯茎から飛び出します。

飛び出した前面の歯が実際に捕食の際に使う歯で、この歯を機能歯と呼びます。

しばらくすると機能歯は抜け落ちてしまいますが、そのころには控えの歯が立ち上がってくるので、サメの歯は生きている間ずっと生え変わり続けます。

サメの歯の生え変わりイメージ図。
オオメジロザメの顎骨。裏から見ると控えの歯が沢山並んでいます。

一方のワニですが、ベルトコンベアではなく押し上げるように入れ替わります。

ワニの歯は円錐に近い形をしていて、中に空洞があります。そして、その空洞の中に次の歯がすでに生えていて、古い歯を押し上げるように大きくなります。

ワニの歯もサメと同様に何度も生え変わりますが、年齢を重ねるうちに生え変わる頻度は落ちてくるようです(サメもそうなのかもしれませんが、詳細に調べた研究はないと思います)。

ワニの歯の生え変わりイメージ図。
実際のワニの歯。

一口に歯が生え変わると言っても、その仕組みはだいぶ違っていますね。

噛む力について

よく引き合いに出される噛む力ですが、正直「サメとワニのどちらが強いのか」はっきりとは分かりません。

それぞれの噛む力を測定した研究はあるものの、測定方法が違うためかバラツキのある数字ばかりで、サメとワニの噛む力を同じ部位・同じ計測器で調べて比較した研究があるのかすら疑問です。

しかし、ホホジロザメは体重200㎏級のオットセイを真っ二つに食いちぎりますし、イリエワニは亀の甲羅や哺乳類の頭蓋骨をおせんべいみたいに噛み砕きます。

彼らの噛む力が何キロにしろ、「人間が噛まれたら終わり」ということは間違いなさそうです。

余談ですが「ワニは噛む力は最強だけど、口を開ける力はザコだから抑え込めば倒せる」という話をよく聞きます。

しかし、ワニは口を開く筋肉だけでも人間の腕の筋肉よりずっと太いため、小さいワニならまだしも、人を食べるような3m以上のワニを抑え込むというのは不可能だと思います。

何を食べているのか?

種によって異なるので「あくまで全体として」という話ですが、サメもワニも一口か二口で食べられる魚などの獲物を襲うことが多いです。

『ナショナルジオグラフィック』などのドキュメンタリーが好きな方だと、ホホジロザメが勢いよくおジャンプしてオットセイに噛みついたり、水を飲みに来たヌーにナイルワニが豪快に襲い掛かる場面はがお馴染みだと思いますが、実際には毎回あんなことやっているわけではありません。

大型哺乳類は肉の量が多くて確かにエサとして魅力的ですが、そんなに頻繁に手に入るわけではないですし、相手も大きくてパワフルです。仕留めるのには体力がいり、反撃を食らうことすらあります。

また、ホホジロザメのような例外もありますが、サメもワニも同サイズの哺乳類ほど体温が高くない(変温動物)ため、一般の方が思っているほど頻繁に大きな獲物を食べる必要もありません。

世間的には「大きくて強い動物を倒すがカッコいい!」や「小さな獲物ばかりを襲ったり死体を漁ったりするのはダサいみたい!」のようなイメージがありますが、動物たちには関係ありません。

彼らにとっての最重要課題は生き残って子孫を残すことなので、身近な手に入りやすい餌があればそれで十分なんです。

食べ方の違い

サメとワニには食べ方の違いもあります。

サメは獲物を襲ったら水中でそのまま好きなように食べます。

ところが、ワニの仲間は捕まえた獲物を飲み込む際に必ず水面から顔を出します。

これは彼らの呼吸法に関係があります。

サメはもちろんエラ呼吸です。水の中で息ができますから水中でエサを食べても何の問題もありません。

サメは体の側面にあるエラ孔を通して酸素を取り込みます。

しかし、ワニは肺呼吸する動物です。肺に水が入ってしまえば僕たちと同じように溺れてしまいます。

この対策としてワニが持っているのが、舌のすぐ奥のあたりにある喉を閉じる蓋です。

水中ではこの蓋を閉じることで、水を飲み込むことを防いでいます。

ワニは喉の奥に蓋を持っています。

これにより、水中でも口を開けて狩りをすることができるのですが、当然喉に蓋をしたままでは飲み込むことができません。

そのため、水中で襲った魚でも噛みちぎった哺乳類の肉片でも水面から顔を出して食べるんです。

また、ワニが陸上にいる大きな生物を襲う際はまず水中に引きずり込んで溺れさせてから食べます。

実際、ワニに襲われて死亡した犠牲者のほとんどは溺死です。

対して、サメによる死亡事故の場合は多くが失血死、つまり噛まれて沢山の血を失って死亡しています。

ここからは僕の推測ですが、サメは水中で息ができない生物を襲う機会がワニよりも圧倒的に少ないため、「溺れさせる」という戦略を獲得しなかったのだと思われます(イルカやアシカを襲うことはありますが、彼らは水中で長時間息を止めていられます)。そもそも「溺れる」という概念を理解できないかもしれません。

一方のワニは自分たちが肺呼吸ですし、彼らが襲う大型動物と言えば水を飲みに来る哺乳動物が主なので、「引きずり込んで溺れさせる」という行動を進化の過程で身につけたのだと思います。

デスロールの真実

食べ方の違いのついでに、ワニの「デスロール」についても紹介しておきます。

デスロールは、ワニが獲物に噛みつき体をクルクル回転させて肉を引きちぎる行動を指します。

この行動自体は実在しますが、メディアで誇張されている部分があるので補足が必要です。

まず、ワニは毎回デスロールをするわけではありません。

先ほども少し触れた通り、ワニは大型動物ばかり襲うのではなく、魚やカメ、甲殻類など一口で食べられるものや簡単に噛み砕けるものを主に食べています。

次に、仮に大きな獲物を襲う場合でも、ただ振り回して噛みちぎることも多いです。

ワニの顎の力はすさまじく、噛みついたまま頭を振り回したりするだけで簡単に肉がちぎれます。

また、そもそもデスロールをする際は柔らかいお腹の部分をさらしてしまうので、あまり頻繁にやるべき行為でもありません。

そして、よくテレビやYouTuberが誤解を招く表現をしていますが、デスロールは獲物を仕留めるための動作ではなく大きな肉を引きちぎるための動作です。

「死の回転」なんてカッコいい名前が付いていますが、別に回転技で死に追いやるわけではありません。

どちらの方が多く人を襲っているか?

サメとワニはどちらも人を襲う危険生物のイメージがありますが、果たしてどちらの方が人を襲っているのか?

地域にもよって異なりますが、ビル・ゲイツさんの財団が調べた「世界で最も人を殺している動物ランキング」というものがあります。

この中でサメ年間6人で第15位、ワニは年間1000人で第10位という結果でした。

ここからは僕の推測ですが、この差には以下のような理由があると思います。

  • サメよりもワニの方が人間の生活圏に近く出会う機会が多い。
  • サメは水上にいる獲物をほとんど襲わないがワニは水辺に来た動物を襲うことがある
  • ワニが獲物を食べるのは陸上なのでサメよりも犠牲者のデータが集まりやすい

ちなみに、サメの中で最も多く人を襲っているホホジロザメと、ワニの中で最も人を襲っているイリエワニの両方が数多く生息するオーストラリアではどうなのかも調べてみました。

集計方法や時期により前後するとは思いますが、2001年~2017年の記録によると、541件発生した動物が関係する死亡事故のうち、サメが27件、ワニが21件で、若干サメが多めでした。

ただし、どちらもハチや毒蛇による死者数よりは少なく、暴行殺人や交通事故などの人為的要因の方が死亡者数は圧倒的に多いです。

ワニとサメは出会うのか?

ここまで、水中のハンターとして恐れられるサメとワニは、実際に戦うことがあるのでしょうか?

そもそも出会うことがあるのか疑問な方もいると思いますが、淡水に現れるサメ・海水に現れるワニどちらも存在します。

淡水に現れるサメとして有名なのがオオメジロザメで、ミシシッピ川やアマゾン川などのかなり上流まで昇ることがあります。

日本でも沖縄の河川を遡上する姿を確認することができます。

沖縄の川を遡上するオオメジロザメの幼魚。

ワニについても、一部の種は塩腺という塩分を排出する器官を舌にもっており、この塩腺によって塩類濃度が高い場所でも多少は過ごすことができます。

こうした塩腺を持ったワニが、基本的には淡水を主な生息域としつつ、汽水域や海水域などに現れることがあります。

また、イリエワニは塩水耐性が特に高く、何百キロも海を移動したり一生を海で過ごす個体もいるほどです。

イリエワニ

こうした事情を考えると、サメとワニが出くわす場面も現実にありそうですね。

サメとワニどちらが強い?

では、実際にどちらが強いのか?

無理やり結論を出すとすれば、ドローです。

種や個体の大きさによって違いますが、ワニがサメを食べることもサメがワニを食べることもあります。

ワニがサメを食べる事例

ワニがサメを食べる事例として、イリエワニの大型個体がオオメジロザメを捕食していたという報告が数多くあります。

ネットにも多く写真が上がっていますが、だいたい3m以上のワニが1m前後の幼いオオメジロを襲っているというものが多いです。

さらに、ミシシッピワニがコモリザメ、ウチワシュモクザメ、レモンザメなどを襲ったという報告もあります。

ミシシッピワニは塩水耐性がそこまで高くありませんが、この3種は浅い場所にも現れるため、マングローブ林などにいた小さな個体が襲われたものと思います。

ミシシッピワニ

サメがワニを食べる事例

一方で、サメがワニを襲うこともあります。

例えば、3mのイタチザメの胃の中から2mのイリエワニの死体が丸ごと出てきたり、4mほどの個体からナイルワニの上半身が発見されています。

また、ホホジロザメがナイルワニやアメリカワニを捕食したという報告もあります。

こうして考えてみると、どちらが強い弱いとは言えず、大きさや種によってケースバイケースであることが分かります。

目撃事例やニュースを調べるとワニがサメを食べるケースが多いように思えますが、先ほども触れた通りワニは水中で狩りをすることはあっても食事は水から出て行うので、ワニがサメを食べる瞬間の方が人目に触れやすいはずです。

もしかすると僕たちが知らない間に、サメがワニを噛みちぎる壮絶な戦いも繰り広げられているかもしれません・・・。

参考文献

※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。

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