全長13mに寿命400歳!世界一位を持つサメ&エイの仲間たち!【ギネス記録】

ギネス世界記録が一種のトリビアとして話題になることからも分かる通り、「世界ナンバーワン」という言葉には人を惹きつける魅力があると思います。

そして、合計1000以上知られている板鰓類(サメ・エイの仲間)の中には「魚の中で一番○○」や「脊椎動物の中で最も○○」という、サメやエイの枠組みを超えたナンバーワンタイトルを持っている動物がいます。

今回はそんな「他のグループの動物と比べてもNO.1!」という称号を持つサメやエイたちを紹介していきます。

目次

解説動画:全長13mに寿命400歳!世界一位を持つサメ&エイの仲間たち!【ギネス記録】

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2024年4月11日です。

世界最大の魚類&世界最大の雑食動物:ジンベエザメ

沖縄美ら海水族館に展示されているジンベエザメ

世界最大の魚類

ジンベエザメはテンジクザメ目ジンベエザメ科ジンベエザメ属に分類されるサメです。

ジンベエザメは多くの方がご存知の通り、世界最大の魚類です。

成熟する時点でのサイズが8m以上、大きいものでは12mを超える記録があります。しかもこの記録がオスのジンベエザメのものだったことから、メスはさらに大きくなると推定されています(サメは基本的にメスの方が大きいです)。

ジンベエザメはあまりにも巨大なため計測自体が難しく、正確な最大全長については諸説ありますが、魚類と呼ばれる動物の中では世界最大と言って間違いないでしょう。

そんなジンベエザメも、実は生まれたばかりの頃は全長50~60cm程度しかない、非常に可愛らしい姿をしています。

このような小さい姿で産まれ来るジンベエザメがどこでどのように産まれ、どうやって繁殖しているのか、詳しいことはまだ分かっていません。

ふじのくに地球環境史ミュージアムに展示されたジンベエザメの胎仔と筆者

世界最大の雑食動物

ジンベエザメは世界最大の魚類であると同時に、世界最大の雑食動物だと示す研究があります。

ここでいう「雑食」とは、色々なものを食べるという漠然とした意味ではなく、魚やオキアミなどの動物と海藻などの植物、両方を食べて消化吸収できることを指します。

ジンベエザメの排泄物や皮膚組織を分析したところ、ホンダワラ属という海藻の仲間を消化吸収しており、栄養段階も完全な肉食動物より低い値を示しました。

魚類という枠を超えると、シロナガスクジラやマッコウクジラなどジンベエザメより大きな動物が存在しますが、こうした鯨類は肉食動物とされているので、現状ジンベエザメは世界最大の雑食動物であると言えそうです。

世界で最も長寿な脊椎動物:ニシオンデンザメ

ニシオンデンザメはツノザメ目オンデンザメ科オンデンザメ属に分類されるサメです。

北大西洋の北部や北極海など、水温が低い冷たい海に生息しています。

その全長は3m以上で、大きいものでは6m近くまで成長します。ジンベエザメには及ばないものの大型のサメです。

そんなニシオンデンザメは、全ての脊椎動物の中で最も寿命が長く、400歳以上生きると推定されています。

もちろん400年ニシオンデンザメを飼育して年齢を数えるのは色々な意味で無理なので、この時は放射性炭素年代測定という手法で野生のニシオンデンザメの年齢が測定されました。

炭素と呼ばれている物質の中には、安定同位体(C12、C13)と放射性同位体(C14)というものがあります。そしてこうした放射性同位体には半減期というものがあり、放射線を出しながらゆっくりと崩壊していきます。

簡単にお伝えすると、この炭素の放射性同位体(C14)がどの程度含まれているのかを分析してモノの年代を測定するのが放射性炭素年代測定です。

この方法は氷河期や石器時代がいつ始まったのかなど、文字として残っている歴史だけでは調べるのが難しい事象の調査に用いられています。

そして、複数のニシオンデンザメの水晶体に含まれる炭素をこの手法で調べたところ、以下のような事実が明らかになりました。

  • ニシオンデンザメが成熟するまでにかかる年数はおよそ150年ほど。
  • 平均年齢は少なく見積もっても272歳。
  • 調べられたうち全長5mの雌の推定年齢は392歳。

つまりこの研究で調べられたニシオンデンザメは徳川幕府があった時代から生きていたことになります。

この炭素の放射性同位体を使った測定方法では100年ほど誤差が出る可能性もありますが、それまでの脊椎動物最長とされていたのはホッキョククジラの211歳という記録でした。

仮に少なく見積もったとしてもニシオンデンザメは現存する脊椎動物の中でもっとも長生きする動物と言えそうです。

ちなみに、日本近海にはオンデンザメという近い仲間のサメが生息しています。

このサメの寿命を調べたという話は聞きませんが、ニシオンデンザメと近縁であること、低水温環境に住む巨大ザメという点が共通していることなどを考慮すると、オンデンザメもニシオンデンザメ同様に長生きなサメかも知れません。

世界で最も妊娠期間が長い動物:ラブカ

ラブカはカグラザメ目ラブカ科ラブカ属に分類されるサメです。

ミツクリザメと並ぶ深海ザメの代表格であり、映画『シン・ゴジラ』に登場するゴジラ第二形態”蒲田くん”のモデルだったこともあり、存在自体は知っている人が多いのではないでしょうか。

ラブカは、妊娠期間だけで約3年半とされており、現時点で最も妊娠期間の長い動物としてギネス世界記録にも認定されています。

ただし、ラブカもニシオンデンザメ同様に長期飼育や繁殖に成功した事例がないので、この妊娠期間も様々な研究から推定されています。

駿河湾で採集されたラブカを調べた研究により、ラブカの出生サイズは恐らく全長55cm前後と思われます。また、卵殻に包まれた状態の赤ちゃんを一定期間飼育したところ、1ヶ月で1.4cmしか成長しませんでした。

これらの情報をもとに、ラブカが出生サイズの55cm前後まで成長するには恐らく3年半かかるであろうと推定されています。

ラブカの胎仔
卵黄がついた状態の胎仔。

ただしラブカの繁殖は分かっていないことが多いうえ、妊娠期間の後半に母体からなんらかの栄養提供を受けていることが示唆されているので、今後の研究で多少前後するかもしれません。

また、ラブカの妊娠期間がここまで長いのは深海の低水温で代謝が低いことや、体の割に大きな赤ちゃんを出産することが要因として挙げられているのですが、それなら極寒の海で暮らすさらに大きなニシオンデンザメの妊娠期間はどうなのかが気になります。

「ラブカの妊娠期間は3年以上」というのはネットにも載っている割と有名な話ですが、掘り下げてみるとまだまだ謎が多そうですね。

世界最大の発光する脊椎動物:ヨロイザメ

ヨロイザメはツノザメ目ヨロイザメ科ヨロイザメ属に分類されるサメです。

これまで紹介したサメに比べると知名度は低いですが、深海魚を取り上げるテレビ番組で「深海のゴジラ」などと呼ばれて登場することがあります。

獲物の肉を円形に食いちぎっていくことでお馴染みのダルマザメや、世界最小のサメとして名前がよく上がるツラナガコビトザメは、共にヨロイザメ科で本種と近い仲間です。

丸みを帯びた顔につぶらで大きな瞳とどこかとぼけたような表情から大人しそうに見えますが、先程紹介したダルマザメ同様、上顎歯は針のように細い歯が沢山は生え、下顎歯はナイフのような大きい歯がずらっと並んでいます。

ヨロイザメの歯

ヨロイザメの全長は最大1.8mほどでサメの中では特別大きくはありませんが、生物発光する脊椎動物としては世界最大とされています。

ニュージーランドとベルギーの共同研究チームがヨロイザメを調べたところ、ヨロイザメはお腹側を中心に数多くの発光器を持っていることが明らかになりました。

「生物発光する動物」というカテゴリーなら、ダイオウイカやダイオウホウズキイカをはじめ、もっと大きな発光生物がいます。

しかし、「脊椎動物」に限定した場合、数多くの深海魚が発光器を有するにもかかわらず、ヨロイザメほど大きな動物は他に知られていません。

ちなみに、このように深海ザメが発光する理由として、以下のような役割があるとされています。

  • 自分の特徴を目立たせて同種間でのコミュニケーションに使う
  • 背鰭にある棘を目立たせて捕食者へ威嚇する
  • お腹側から光を発することで自分の影を消すカウンターイルミネーション

しかし、ヨロイザメは光を使って目立たせるような際立った模様などはなく、背鰭に棘はありません。

また、そもそも深海にはヨロイザメを襲うほど大きな捕食者が少ないので、カウンターイルミネーションのために発光するのか?それならば背中や尾鰭にある発光器の役割は何なのか?未だに謎が残されています。

「自ら光を放って獲物を探すのに役立てている」という説もありますが、十分な証拠はまだ見つかっていないようです。

世界で最も目を引っ込められる脊椎動物:トンガリサカタザメ

トンガリサカタザメはノコギリエイ目シノノメサカタザメ科トンガリサカタザメ属に分類されるエイの仲間です。

分類のグループだけ見ているとエイなのかサメなのか混乱しそうですが、エイの中にはサメに見た目が似ているグループがあり、「シノノメサカタザメ」や「トンガリサカタザメ」などの名前が付けられています。

見た目がサメっぽいだけで、あくまでもエイの仲間です。

トンガリサカタザメは名前の通り三角に尖った頭をしています。平たい体から背ビレが出ている様子が宇宙船みたいでカッコイイ半面、裏面の顔は完全に宇宙人という独特のギャップが魅力です。

トンガリサカタザメの裏面

そんなトンガリサカタザメは、脊椎動物の中で最も奥まで目を引っ込めることができるという特技を持っています。

トンガリサカタザメを含むエイの仲間は、頭の中に眼球を埋没させることができます。これ自体は別にそこまで珍しいことではありません。

カエルの眼は頭のシルエットからはみ出るくらい大きいですが、目をつぶると頭が平らになりますよね。この時彼らは眼球の半分ほどを引っ込めています。

しかし、美ら海水族館の研究者が飼育しているトンガリサカタザメに水中エコーを当てて眼の動きを解析したところ、トンガリサカタザメは眼球一個分、約4㎝ほど埋没させることができると判明しました。

さらに、既に死亡しているトンガリサカタザメの眼球を調べたところ、他の脊椎動物では眼を回転させるのに使われる下斜筋という筋肉が非常に長く骨格とのつながり方も独特で、この筋肉が眼を埋没させるよう動いていることも分かりました。

これらの研究を実施した美ら海水族館の研究者の方々は、過去の論文も調べたうえで、トンガリサカタザメは世界で最も眼を引っ込められる脊椎動物であると結論付けました。

この埋没させる仕組みは、瞼のない彼らが目を保護するのに役立っているとされています。

ここまで引っ込める必要があるのか?そしてこの研究が一体何の役に立つのか?それはまだ分かっていませんが、この研究が発表されてから10年近くたった今でもこの記録は破られていないそうです。

参考文献

  • Jérôme Mallefet, Darren W. Stevens, Laurent Duchatelet『Bioluminescence of the Largest Luminous Vertebrate, the Kitefin Shark, Dalatias licha: First Insights and Comparative Aspects』2021年
  • Jose I. Castro 『The Sharks of North America』 2011年
  • M. G. Meekan, P. Virtue, L. Marcus, K. D. Clements, P. D. Nichols, and A. T. Revill『The world’s largest omnivore is a fish』2022年
  • Sho Tanaka, Yoshihisa Shiobara, Syozo Hioki, Hidenao Abe, Genjirou Nishi, Kazunari Yano, Katsumi Suzuki『The Reproductive Biology of the Frilled Shark, Chlamydoselachus anguineus, from Suruga Bay, Japan』1990年
  • 沖縄美ら海水族館『目玉を守る!エイの目玉ひっこめ行動 その驚異の能力を世界で初めて科学で解明』2015年
  • 佐藤圭一, 冨田武照, 松本瑠偉『沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか? サメ博士たちの好奇心まみれな毎日』2022年
  • 渡辺佑基『進化の法則は北極のサメが知っていた』2019年
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