ニヤケ顔が可愛い?レモンザメの大きさ、特徴、生態を解説!ニシレモンザメとの違いとは?

レモンザメというサメをご存じでしょうか?

ずいぶんとフルーティな名前の可愛いサメですが、なかなかに憎めない顔も愛らしい、個人的に推しているサメの一種でもあります。

今回はレモンザメの特徴、分類、生態に加え、見た目が非常に似ていてて紛らわしいニシレモンザメとの違いを解説します。

目次

解説動画:レモンザメを解説!『おかえりモネ』にも登場?ニヤけ顔のサメの生態とは?ニシレモンザメとの見分け方も紹介!【ありがとう油壺③】【Negaprion acutidens】【水族館】

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2021年10月11日です。

レモンザメの分類や特徴

レモンザメは、メジロザメ目メジロザメ科レモンザメ属に分類される、熱帯など暖かい海に住むサメです。日本では沖縄の西表島や石垣島付近などに生息しています。

全長は大きくて3m前後。最大3.8mという記録がありますが、大体の個体が2.2〜2.5mほどです。

可愛らしい名前の由来となったのは体の色です。文字通りレモンを思わせるような黄色みがかった色をしています。

ただし、これは生活環境などにも影響されるようで、水族館ではただの薄い灰色にしか見えないレモンザメもよく見かけます。

京急油壺マリンパークに展示されていたレモンザメ
アクアワールド茨城県大洗水族館に展示されているレモンザメ。

レモンザメに限らず、サメや魚の色は個体差が激しかったり、生きている時と水揚げされた時で全然色が違っていたりします。

色で見分けられることも確かにありますが、色だけで種を同定するのはお勧めしません。

その他の体の特徴としては、吻が短くて丸い、背ビレが全体的に後ろにある、各ヒレがどれも比較的大きいというのが挙げられます。

レモンザメの特徴まとめ

一般にイメージされるサメは第一背ビレが体の前の方にあり、第二背ビレ、腹ビレ、臀ビレが小さいことが多いのですが、レモンザメの第一背ビレは胸鰭と腹鰭の中間くらいに位置し、第二背ビレなども割と大きいです。

体色よりも、こうした身体的特徴の方を覚えた方が正確に見分けられると思います。

レモンザメはニヤリ顔が可愛い?

図鑑に載っていない非公式な特徴ですが、レモンザメには他にも見分け方兼チャームポイントがあります。

それが、なんとも言えないニヤけ顔です。

ニヤケたように口角が曲がった顔のレモンザメ

レモンザメは口角に独特の波があり、どこかニヤついているような顔になっています。

他のサメでも顔の角度などで笑って見えることはありますが、レモンザメの顔にはいたずらっ子のようなな可愛らしさがあります。

ちなみに、2021年に放送された朝ドラ『おかえりモネ』にサメ好きの先生が登場するのですが、作中で映った彼のLINEアイコンはレモンザメでした。

表情による同定は学術的に認められていないものの、データをとれば有意差がでるほど特徴的なニヤケ顔だと個人的には思っています。

レモンザメは人食いザメか?危険なサメ?

レモンザメの主食は他の魚や小型のサメなどで、人間ほど大きな獲物を積極的に襲うサメではありません。

人食いザメかと言われれば、「No」と答えるのが妥当でしょう(そもそもほとんどのサメは人間に危害を加えないのですが)。

ただし、レモンザメはサメの中でも好奇心旺盛な一面があり、飼育されている他のサメに噛み付いたり、あまりダイバーを怖がらずに向かってくるなど、やんちゃな行動をすることも多いようです。

先程レモンザメはニヤケ顔が特徴的と言いましたが、これはイルカのドルフィンスマイルと同じで、たまたまこのような口になっているだけです。

可愛らしい顔だから友好的だとか楽しんでいるというわけではありません。

人を食べないとしても鋭い歯を持つ大型野生動物なので、不用意に刺激するのは避けるようにしましょう。

ニシレモンザメとの違い

レモンザメと同じレモンザメ属に分類されるサメとしてもう一種、ニシレモンザメというサメがいます。

この名前で言う「ニシ」と言うのは、大西洋を指しています。

オンデンザメとニシオンデンザメ、ネズミザメとニシネズミザメのように、サメの中には名前に「ニシ」とついている仲間がいることがありますが、これは大西洋側に住んでいる種という意味です。

レモンザメも同様に、日本近海を含む太平洋やインド洋などに生息する種の名前はそのまま「レモンザメ」、大西洋側にいる種にニシと付けるわけです。

レモンザメとニシレモンザメの分布域まとめ

ちなみに、これらは愛称などではなく、遺伝子学的にも種分化した別種であるとされ、それぞれに別の学名がついています。

  • レモンザメ:Negaprion acutidens 
  • ニシレモンザメ:Negaprion brevirostris

ただし、こうした名前の付け方ははあくまで大西洋から離れた日本側の理屈なので、英語圏では全く別の視点から名前が付けられます。これが少しややこしいです。

アメリカ大陸側ではニシレモンザメの方が主流になるため、ニシレモンザメのことを「Lemon shark」と呼びます。

では、日本で「レモンザメ」と呼んでいるサメを英語で何と呼ぶかと言えば「Sharptooth lemon shark」または「Sicklefin lemonshark」となります。

Sickleというのは鎌のことです。レモンザメの方がニシレモンよりも胸鰭が若干強い鎌型になっているというのが由来です。ただし、非常に微妙な違いなので、目視ですぐ見分けられる人がいたら(良い意味で)変態です。

ニシレモンザメ

そのため、英語で書かれた図鑑や海外のドキュメンタリー番組で「Lemon shark」とだけ言っていた場合、ニシレモンザメを指している場合がほとんどです。

まとめると、「レモンザメはLemon sharkにあらず、ニシレモンザメはLemon sharkなり」という非常にややこしいことになります。

生息域と学名を覚えてしまえば混同する心配はないですが、海外のドキュメンタリーや論文ではLemon shark(つまりニシレモンザメ)がたびたび登場するので、サメ好きの方は十分お気をつけください。

レモンザメの繁殖

レモンザメは胎生のサメです。つまり、母親のお腹の中で赤ちゃんが育って、成魚と同じサメの姿になって生まれてきます。

その中でもレモンザメは、シュモクザメやその他多くのメジロザメ類と同じように胎盤を形成するサメです。

最初は外卵黄嚢と呼ばれる袋に入った栄養を吸収しますが、吸収し終えた後この袋が伸びていって母体の子宮壁にくっつき、臍の緒と胎盤が形成されて、母体から直接栄養をもらうようになります。

そして、約10ヶ月ほどの妊娠期間で大きく成長してから産まれてきます。

元々レモンザメは深くても100mもないような沿岸の海に住んでいるサメですが、出産の際は河口近くなど特に浅い場所に現れ、赤ちゃんはマングローブ林など、エサが豊富かつ天敵も入ってこないような場所で幼少期を過ごします。

レモンザメは絶滅危惧種?

レモンザメは現在、絶滅が心配されているサメの一種でもあります。

レモンザメは入江や珊瑚礁の海底付近をゆっくりと泳ぎ、長距離の回遊もあまり行わないサメです。一度に子供を産む数も10尾ほどと少なく、子供の生存もマングローブ林などに依存しています。

つまり、子供を産む数が少なく分布域も限定的なので、一度乱獲してしまうと、個体数が回復しにくいのです。

また、沿岸域は人間活動の影響を受けやすいので、開発によってマングローブ林や珊瑚礁が破壊されれば、乱獲がなくても個体数に悪影響が出てしまいます。

実際にインドやタイの沿岸では、地域的にレモンザメが絶滅してしまったと思われる事例があり、IUCNの評価もEN(絶滅危惧)となっています。

この愛らしい表情のサメがいなくなってしまわないように、乱獲や過剰な駆除の防止、および生息域の保全に努めていきたいですね。

参考文献&関連書籍

  • IUCN Redlist『Sharptooth Lemon Shark』(2022年10月19日閲覧)
  • David A. Ebert, Marc Dando, and Sarah Fowler 『Sharks of the World a Complete Guide』2021年
  • 仲谷一宏『サメ ー海の王者たちー 改訂版』2016年
  • 沼口麻子『ほぼ命がけサメ図鑑』2018年
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