2026年10月11日(日)に、テレビ東京で『巨大サメ捕獲大作戦』という番組が放送されました。
石垣島で行われているサメ駆除を取材したもので、大きなイタチザメをはじめとする現地のサメを漁師が捕まえる様子を流していました。
この番組について、

あの番組についてRickyさんの意見が聞きたいです



サメの扱いが酷くて心を痛めました
などの声を頂いたので、今回TVerというサービスで番組を全編観てみました。
そしたら内容に関してツッコミどころとか、補足したいことが結構ありました。
今回はテレ東の特番『巨大サメ捕獲大作戦のツッコミどころ』というテーマで、僕なりに解説をしていきます。
本記事は批判的な内容を含みますが、あくまでテレビ番組に関する批判であり、出演した漁業者や芸能人を誹謗中傷する意図はありません。本記事の内容を用いての個人攻撃や誹謗中傷をするようなことはないようにお願いします(起こったトラブルについて、一切の責任を負いかねます)。
解説動画:サメ駆除の特番『巨大サメ捕獲大作戦』の問題点を解説します【危険生物】【人喰いザメ】
このブログの内容は以下の動画でも解説しています!
※動画公開日は2026年10月28日です。
サメ駆除だけで2時間は長すぎ
番組を観てまず思ったのが、「ほとんど2時間ぶっ通しでサメの駆除だけ放送しようとよく思ったな」ということです。
番組の構成としては、サメの漁業被害が増えてるという問題提起を簡単に行い、夜の潜水漁で実際にサメが出てくる様子を映した後、漁師がサメを駆除する様子をひたすら流す・・というものです。
途中でハナフエダイなどの硬骨魚を釣ったり漁師が食事をする映像が少しは挟まりますが、後は底延縄漁で捕まえたサメを漁師がモリで突く映像が繰り返されます。
1時間程してようやく胃内容物を紹介したり、研究サンプルや加工品として利用しているという話が出てきます。しかし、それもだいぶあっさり済まされて、後半はまた同じようなサメ狩りの繰り返しです。
沖縄でのサメ駆除はこれまでもテレビでたびたび取り上げられていて、大抵は夕方のニュース番組のコーナーで10~30分ほど紹介されるくらいだったのですが、この特番はただそれを2時間に引き伸ばした感じでした。
当該番組より前に放送された宮古島でのサメ駆除を取り上げた番組↓
ずっと観ていて「サメが可哀想」とか以前に、同じような漁の映像ばかりで飽きてきて、サメ好きでも何でもない普通の視聴者は退屈ではないのか気になってしまいました。
世の中には「漁師が正義の被害者でサメが凶暴な悪者」という単純すぎる図式でしかものを考えられない人もいるでしょうから、そういう人たちがスカッとする番組として作ったのか、あるいはクマによる獣害事件とか話題なので「危険なサメを退治する」みたいな内容だけでも視聴に耐えると思ったのか・・・。
製作側の意図は分かりませんが、「よくこの構成で2時間の番組を作ろうと思ったな」と感じました。
ものすごく無理やり、好意的に解釈するのであれば、「サメ」という動物だけを扱った特番を2時間以上ぶっ通しで流しても視聴率をとれるとメディアが見込んでいる・・。つまり、サメはそれだけ注目されている存在だということです。
それ自体は良いことと言いますか、啓発活動をするうえで利用できるかもしれません。
石垣島でのサメ駆除の妥当性
番組を観ていてサメ愛好家が気になったのは駆除の妥当性でしょう。
番組ではサメを駆除する理由として、漁業被害と人的被害への懸念が挙げられていました。
サメ駆除で漁業被害は減っているのか?
まず漁業被害について。これは番組内の映像で示された通り、実際に起きています。
サメによって魚が食べられてしまったり、漁具が壊されてしまうという被害は石垣島以外でも起きており、漁業者にとって問題なのは確かです。
しかし、この駆除が本当に漁業被害を減らしているのか、誰も効果を検証していません。
石垣島のサメ駆除は毎年70~100尾前後のサメを駆除していますが、毎年サメの被害が問題だと報じられています。
番組内でも「被害が減ることを願うばかりである」というセリフで締めくくられていますが、願っているだけで誰も確かめていないので、この駆除に意味があるのか、本当に被害が減っているのかは疑問です。
では何故そんな駆除が毎年行われているかと言えば、駆除に対して補助金が出ているからです。
これは陰謀論とかでも何でもなく、ネットで調べれば資料も出てきますし、一部のニュースでは「公的補助を受け実施」と書かれています。
「離島漁業再生支援交付金」と呼ばれるもので、環境整備や養殖にも使われますが、サメ駆除に使われていることが、石垣市が公開している実績報告にも明記されています。
7月29日、八重山漁協の一本釣り研究会、カゴ網研究会、電灯潜り研究会の3団体によるサメ駆除が実施され、初日57尾のサメが捕獲された。
公的補助を受け実施されるサメ駆除は、漁業再生支援事業の一部の事業で、29日と30日の二日間に各漁師の漁場で実施される。
『57尾のサメ駆除 令和3年度』より引用(太字は筆者)
サメによる漁獲物の横取りや漁具被害等があるため、サメ駆除を実施して生産性の向上及
び安全操業の確保を図ることとした。『令和2年度離島漁業再生支援交付金漁業集落実績報告』より引用
今回の特番だけを観ていると、「深刻なサメ被害に対処すべく、漁師たちが自主的に団結して立ち上がった!」みたいなストーリーに見えますが、あの時期はサメ駆除した方がお金がもらえるので駆除しているという側面が大きいです。
人的被害でサメ駆除正当化はできない
次に人的被害の防止について。番組内では港に入ってきたサメの映像や過去に沖縄で起こったサメ事故を紹介しながら「漁業被害だけでなく人を脅かすサメを放ってはおけない」というナレーションが流れていました。
新聞記事を映して紹介されていた事故は、2000年9月16日に宮古島の砂山ビーチで起きたものです。この事故では20代の男性サーファーがサメに噛まれました。男性は病院に運ばれましたが、右上腕部と両ひざ下を切断されており、後に死亡しています。
その後、サーフボードに残された歯型から、体長2m前後のイタチザメによるものだと発表されました。


このように沖縄でサメ事故が起きたことはありますが、その件数は非常に少なく、極めて稀です。
番組内で紹介されていた通り、石垣島だけでも年間150万人が訪れていて、多くの人が海水浴やマリンスポーツを楽しむ沖縄県でも、数年に1~2件あるかどうかなのです。
もちろん番組内の一人の漁師が発言していたように、「何万件に1件の確率で(事故が)あった時に悲しい」から少しでも確率を減らせるように、という考え方もできなくはありません。
しかし、もともと雷に打たれるよりも低い確率で起きるようなシャークアタックの確率をさらに少しでも減らすという話になると、キリがありません。本当にサメを絶滅させるという極論になってしまうのではないかと心配になります。
また、人的被害を防ぐという目的なら、捕まえているサメの種が不適切です。
実際に事故件数の多いイタチザメならまだしも、番組内で漁師はシャークアタックの危険性が低いツマジロを多く捕まえていました。逆に、イタチザメに並ぶ危険ザメのオオメジロザメが全然捕獲できていなかったです。


番組内では、子供や観光客への被害をほのめかしていましたが、本当にその手の被害を防ぐなら沖の方にある無人島に延縄を仕掛けてサメを殺すのではなくて、例えばビーチにネットを設置したり、オーストラリアで使われているドラムラインのような罠を仕掛けるなど、もっと効果的な対策があると思います(これらの方法も、他の海洋生物や危険性の低いサメを捕まえてしまうなどのデメリットが指摘されてはいます)。
番組の演出上、「危険な人喰いザメを退治する正義の漁師!」みたいな構図を強調したくて人的被害の話を出したんでしょうが、元から事故が稀であるうえ、危険性の低いサメを多く捕まえている以上、人的被害を理由に駆除を正当化するのは、だいぶ無理があるように思えます。
サメ駆除が資源管理であるかのような不適切演出
個人的には石垣島の駆除そのものよりも、番組で行われた演出にだいぶ問題があるように感じました。
まず番組全体が「被害に遭って苦しんでいる漁師VS凶暴な人喰いザメ」という単純図式で、とにかくサメを駆除することが正義みたいな内容でした。
妊娠個体のサメを駆除して胎仔の命を奪っていることに関しても、「繁殖を抑えるために巨大ザメを狙う」と、完全に肯定的に紹介されていました。
「サメの赤ちゃんが死んじゃって悲しい!」という感情論ではなく、「可哀想だけど被害があるから仕方ない」のようなエクスキューズを番組側が一切入れないことに驚きました。そういう炎上対策的なものが不要だと思われるくらい、サメの保全が舐められている、もしくはサメの命が軽く観られているのだと、改めて実感しました。
個人的に一番問題だと感じたのは、とある漁師さんが「最高の海、資源管理して残していけば、後世にも良い海が渡せる」と発言するシーンです。
まず大前提として、この漁師さんの発言そのものは何も間違ってはいません。石垣島周辺の海は豊富な海の幸に溢れていて、それらを後の世代に残していくためには、適切な資源管理が重要です。
昨今、資源が激減しているスルメイカの漁獲枠が一時的な豊漁を理由に増枠されるなど、日本の資源管理には杜撰なところが多くあり、早急かつ抜本的な解決が必要です。こうした社会情勢を考えると、この発言自体はむしろ素晴らしいものです。
しかし、「凶暴な人喰いザメを駆除する」という特番の中で、これからサメを殺しに行く漁師の発言として切り抜いているという背景を考えると、だいぶ話が変わってきます。
まるで次の世代に豊かな海を残すためには、サメを駆除して行くことが重要で、それが資源管理の一環であるという印象操作に思えてきます。
本来のあるべき資源管理は、「漁業者の短期的な利益につながる生き物だけを生かして害になりそうな生き物を始末する」みたいな雑な話ではありません。
サメを含めたあらゆる海の生き物の関係が複雑に絡み合った、生物多様性の中に生きる水産資源を、いかに枯渇させずに長く利用していくかという取り組みです(少なくとも、そうあるべきです)。
もちろんサメが増えすぎていて、それを間引いているというなら別ですが、沖縄でサメが増えていると示す科学的なエビデンスは番組内で示されておらず、増えているという漁師さんの主観的な意見が紹介されているだけです。また僕が知る限り、そんなエビデンスは存在しません。
番組全体の趣旨を考えると、まるでサメは資源管理の敵であり、サメを駆除することが海を守ることだと言っているように見えてしまい、かなり誤解を招くものだと感じました。
意図して番組側がそういうメッセージを発信しているのだとすれば、非常に知性を欠く、気色の悪い演出だと思います。
駆除したサメを有効活用すれば良いのか?
番組の中で、駆除されたサメが有効活用されていると示す場面が出てきます。
解体現場には研究者が集まっており、サメの遺伝子や歯を調べたり、妊娠個体から出てきた胎仔を持ち帰る場面がありました。
また、駆除されたサメの革を利用した商品や、捕まえたサメを使った漁師飯も番組内で紹介されていました。
このように、駆除された個体を有効活用すること自体は素晴らしいと思います。イタチザメなどのサンプルは気軽に手に入るものではないので、こういう機会に少しでも研究に活かそうとか、少しでも何か経済効果を生めないかと事業を興すこと自体は否定しません。
僕だって混獲されたサメやその胎仔を標本にしたりして発信活動に利用することはあります。
ただし、有効活用すればなんでも許されるみたいな風潮には気を付けて欲しいと、あえてここで注意喚起をしたいです。
これはシュモクザメの記事でも触れていますが、日本ではサメ・エイ類の駆除が取り上げられると「厄介者を有効活用」という話になり、まるで捨てずに利用(特に人間の食用に)すれば問題が丸く収まるかの如く紹介されることが多いです。
しかし、駆除した個体を海に捨てようが肥料にしようが人間が食べようが、サメ達の命を奪っていることに変わりありません。獲りすぎれば数が減って、彼らを絶滅に追いやることになります。
研究サンプルや商品の原料として駆除個体を利用すること自体は否定しませんが、そもそも駆除に意味があるのか?駆除以外で解決する方法はないのか?という議論を、もっと盛り上げて行くべきだと個人的には感じています。
駆除は生態系に悪影響か?
最後に、石垣島で行われている駆除がサメを乱獲していないのか?生態系に悪影響が及んでいないかのか?という最も重要な問題に触れます。
これについては、正直分からないです。ただ、分からない現状をそのままに駆除が行われていることが大きな問題だと感じます。
減っているように見えなくても悪影響がある可能性
石垣島の駆除はだいぶ前から行われている毎年の恒例行事で、だいたい70~100尾位を毎年獲っているはずです。先程も触れた通り、これだけ駆除しても毎年サメが獲れるので、減っていない、つまり生態系に大した影響はないと考えることもできるかもしれません。
しかし、実態はどうなっているか分かりません。
例えば、減った分のサメが他の海域からやってきているから個体数が増えた、あるいは減っていないように見えるだけで、全体の数が減っていることも考えられます。
また、同じメスまたはオスが沢山交尾して数を補っているだけで、サメの遺伝子の多様性が減っているという可能性もあります。この場合、個体数自体は減っていなくても、病気や汚染に対して脆弱になっているかもしれません。
少なくともサメは硬骨魚に比べて子供を産む数が少なく繁殖にも時間がかかるので、そう簡単に増えたりしない、獲りすぎれば回復しづらい動物だという前提は認識しておきたいです。
もし獲りすぎによってサメの個体数や遺伝子多様性に悪影響がでしまった場合、例えばイタチザメのエサであるウミガメが増えすぎて藻場が荒らされたり網に絡まるなどの問題が増えたり、延縄で漁獲しにくいサメが増えすぎて魚を食べてしまうなど、結果的に漁業者の不利益になるリスクも考えられます。


問題は駆除そのものより効果検証や影響の調査がされていないこと
僕はここで、こうした個体数減少や遺伝子多様性現象の問題が起きていると決めつけるつもりはありません。
しかし、こうした問題が起きているかどうか検証されないまま、効果があるのかどうか・獲りすぎていないかどうか分からない駆除が継続されている現状は、極めて危ういと思います。
例えば妊娠個体が獲れた場合は子供の父親が何尾なのか遺伝子を調べたり、小型化が起きていないか記録を取ったり、そういうデータを取っていくべきです(もしかしたらサンプル回収している研究者の中にやっている人がいるかもしれませんが、まだ目立った研究成果は発表されていないはずです)。
この番組に違和感や不快感を覚えたサメ愛好家がもしいれば、サメを殺したり悪者扱いしていることよりも、この「ロクな効果検証や調査がされないまま駆除が継続されている」という実態、そして結果的に別の漁業被害を興すリスクというのを問題視して欲しいです。
サメが殺されていることに感情的に反発したり、獲りすぎだと安易に決めつけて糾弾すると、太地町でイルカ漁の盗撮や妨害をしている人達と同類だと思われてしまいます。
ネット上の議論を観ていると、残念ながら世間には、生物多様性保全や自然管理を科学的・合理的理由から推進していく人たちと、生き物の命を奪うことにただ感情的に反発している暇人の区別がついていない人たちが大勢います。
もちろん、どういう発信や活動をしようが「生き物好きとかいうマニアックな趣味を持ったオタクが、自分たちの価値観を押し付けているぅ~」という勘違いだらけの冷笑・嘲笑してくる人たちは一定数います。そういう人は手遅れというか、相手にしても無駄です。
しかし、そうではない人たちの理解を得るために、批判するにしても何をどう問題視するかという点は、しっかりと考えた方が良いと思います。
参考文献
- 石垣市『令和2年度離島漁業再生支援交付金漁業集落実績報告』2021年
- やえやまタイム『57尾のサメ駆除 令和3年度』2021年
- 琉球新報『襲ったのはイタチザメ/サーフゼ死亡事故』2000年
- 琉球新報『宮古島でサメに襲われ死亡』2000年
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