サメは胎生なの?卵胎生って何?赤ちゃんを直接産むサメについて簡単解説!

今回はサメの生殖に関する少しだけマニアックな解説です。

サメ好きの方なら、サメには卵を産むタイプと子供を直接産むタイプがいるというのはご存知だと思います。

しかし、一部の図鑑やネットの解説を読んでいると「卵胎生」という言葉が出てくることがあります。

「サメやエイが赤ちゃんを産む場合は胎生ではなく卵胎生」だとか「サメには卵生、胎生、卵胎生の3タイプがいる」と紹介され、一体何が本当なのか分からなくなってしまう方も多いはずです。

そこで今回は、サメの胎生の基本と卵胎生について解説し、これらについてスッキリさせていきます!

目次

解説動画:サメは胎生なの?卵胎生って何?赤ちゃんを直接産むサメについて簡単解説!

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

サメの胎生の基本

500種以上知られているサメのうち、約6割が胎生・4割が卵生と言われています。つまり、卵の状態ではなく直性赤ちゃんを出産するサメの方が多いのです。

今回はこの胎生に絞ってお話をします。

胎生の中にも色々なタイプがおり、大まかには以下の4タイプに分けられます。

一口に胎生と言っても、卵を食べるもの、ミルクを吸収するもの、胎盤を通じて栄養をもらうものなど、種によって様々な方法が用いられています。

せっかくなのでいくつか例を出しましょう。

こちら、ホホジロザメの胎仔です。お腹が丸々としていますよね。

これは卵黄がついているわけではなく、母胎内で卵をたくさん食べて胃がパンパンに膨れている状態です。つまり、ホホジロザメは卵食タイプのサメです。

この胃を切り開くと、黄色くドロッとした卵があふれてきます。

これはシロシュモクザメの胎仔です。

お腹から紐が伸びていますが、これは臍の緒です。そして、その先についている袋のようなものが胎盤です。

この胎盤が子宮壁にくっついていて、母親から栄養をもらいます。これが胎盤形成タイプです。

ここで注意して頂きたいのですが、これらの生殖方法ははっきりと分かれている訳ではないです。

卵食や胎盤を使うサメも、最初は卵黄から栄養を得ます(そもそもサメの胎盤自体が卵黄の袋が変形して作られます)。

さらに、近年の研究でホホジロザメは食卵だけでなく子宮内ミルクでも栄養を得て成長することが判明しました。

一般向けの書籍やネットでは分かりやすくするために「母胎依存型・卵食タイプ」と書かれており、僕もそのように紹介することがありますが、実際はもっと複雑で、まだ解明されていないことも多いです。

サメ好き上級者を目指す方は、図鑑の記載の根拠や詳細までしっかり調べるようにしましょう。

卵胎生とは何か?

ここまで胎生のサメの生殖について簡単に紹介しましたが、では「卵胎生」とは何でしょうか?

卵胎生は「母胎の中で卵が孵化して、母親が赤ちゃんを産むという生殖方法」を指します。これだけだと胎生との違いが分かりにくいですが、卵胎生は「母胎から栄養の提供を受けない」というのが原則です。

卵胎生はメバルなど硬骨魚類、アナコンダなどの爬虫類で知られていますが、彼らの赤ちゃんは基本的に卵黄だけを使って親のミニチュア版まで成長し、母胎から産まれてきます。

一方、胎生とされるサメたちは確かに卵黄を使いますが、先ほど紹介したように卵食や胎盤という形で母胎から何かしら栄養をもらうケースが多く、卵胎生の原則からは外れています。

では、母胎依存型ではない卵黄依存型であれば卵胎生なのでしょうか。

実は、卵黄依存型と言われるケースでも、何らかの形で母胎から栄養を受けている可能性が高いとされます。

卵黄依存型として紹介されるサメたちも、卵黄がついた状態の胎仔と生まれてくる子供で明らかに重量が異なるからです。

例えば、ホシザメというサメは生まれるときに自分の持っていた卵黄の10倍の重さにまで成長します。

仮にホシザメが卵黄の栄養だけで成長していた場合、産まれてくる胎仔は卵黄とそこまで変わらない重量のはずです。10倍の違いがあるのは、卵黄以外にも何か栄養をもらっていないと説明がつきません。

ホシザメの成魚
ホシザメの胎内から取り出された胎仔。まだ成長途中ですが、産まれる頃には親とほとんど同じ姿になります。

一応ツノザメ目のサメで卵胎生のサメはいるようですが、何らかの栄養提供を母胎から受けているサメがほとんどなので、母胎内で自由生活できる状態まで発育するサメは専門家の間でも「胎生」とされています。

そのため、サメの生殖について議論する際は「サメやエイには卵生と胎生2タイプがいる」という理解でも大丈夫です。

もし誰かから「サメは卵胎生だ!」と訂正されても、上記の説明を伝えれば問題ありません。

胎盤を作らないと卵胎生になってしまう?

ここまでの知識で「サメやエイは胎生なのか?卵胎生なのか?」という議論はほぼ解決できると思いますが、ここから中級~上級者向けに複雑な話をします。

基本的に卵胎生かどうかは「母胎から栄養の供給があるかないか」という理解で問題ありません。

しかし、胎生か卵胎生かの基準として「胎盤を形成して栄養提供するかどうか」が採用される場合があります。

この基準に従えば、胎盤を形成しないものは子宮ミルクだろうと卵食だろうと卵胎生になります。

実際サメの生殖に関する英語表現にこれが現れることがあります。

英語で胎生は「viviparity」、卵胎生は「Ovoviviparity」と言います。そして、一部のサイトや図鑑では「Ovoviviparity」と同義の言葉として「aplacental viviparity」 が使われることがあります。

Placentalは「胎盤の~」という形容詞で、接頭語のaがこの場合否定を意味し、「胎盤を形成しない胎生」という意味です。

この二つの単語が同じ意味として使われているということは、胎盤を形成する一部のメジロザメの仲間以外はすべて卵胎生として扱われることになります。

論文や海外出版の図鑑を読む際は、今の説明を知っていないと惑わされるかもしれないのでご注意ください。

参考文献

  • Jose I. Castro 『The Sharks of North America』 2011年
  • 仲谷一宏 『サメ ー海の王者たちー 改訂版』2016年

※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。

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