『ジュラシック・シャーク』のネタバレあり感想&サメ解説【BGサメ映画レビュー】

サメ映画『ジュラシック・シャーク』レビュー記事サムネイル
邦題ジュラシック・シャーク
原題Jurassic Shark
公開年2012年
監督ブレット・ケリー
出演エマニュエル・カリエール / クリスティン・エメス / セリーヌ・フィリオン
制作国カナダ
ランクZ級(もはや映画ではない何か。サメ映画の沼であり闇。見ればZだと分かる。)
ストーリー★☆☆☆☆
演出や絵作り★☆☆☆☆
サメの造形★☆☆☆☆

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目次

あらすじ

広大な湖に浮かぶエルバー島で石油掘削に携わるグラント博士は、成果を急ぐあまり安全基準を無視して採掘を進めていた。

しかし、地下深くの氷床を砕いた結果、絶滅したはずの巨大ザメ”メガロドン”を解き放ってしまう。

メガロドンは採掘所を破壊するだけに止まらず、絵画を盗み出した逃亡中の強盗団や、違法採掘の調査に来た学生グループたちにも襲い掛かる。

メガロドンに襲われたせいで絵画を紛失した強盗団は、学生たちを利用して絵画を回収しようとするが・・・。

これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。

見どころ・ツッコミどころ

チープ極まる尺稼ぎに塗れたメガロドン映画

Z級サメ映画の業界ではお馴染みブレット・ケリーが製作したサメ映画です。

念のために述べておくと、1979年に公開された『ジュラシック・ジョーズ』という邦題のサメ映画とは何の関係もありません。

新生代のサメであるメガロドンを登場させるのにタイトルが「ジュラシック」の時点で嫌な予感しかしないのですが、案の定すごいクオリティ(悪い意味)の作品でした。

メガロドンというデカさが売りのサメを敵役に置きながら、前半は全くサメが出てきません。

チープなカメラワークの中に映る大根役者たちが「今脚に何か触った!」「今の見たか!」などと騒ぐ様子と、海草や砂地しか映らない水中映像のみで襲撃シーンが構成されています。

恐らくサメ映画の原点にして頂点『ジョーズ』を模倣して直接的なサメの表現を避けたのだと思いますが、あらゆるもののクオリティが低いため単に手を抜いているようにしか見えません。

ようやくサメが登場したかと思ったら、素材感丸出しCGの普通のホホジロザメ。冒頭で「全長16m」以上と言っているのに大きさは目測10mもありません。

メガロドン映画らしい派手な場面もなく、「強盗団が沈んだ絵を回収しようとする」→「誰かがサメに襲われる」という単調な流れを繰り返します。サメが泳ぐ場面もほとんど全て同じ素材の使い回しです。

一応設定上は「メガロドンが暴れたせいで採掘所のボートが全て壊された」というスケールの大きい話があるのですが、そういったものは全て登場人物の会話だけで済まされます。映像で再現する予算も技術もなかったのでしょう。

さらに、時間稼ぎとしか思えない描写が数多く存在します。

通常サメ映画で尺を稼ぐ場合はモブキャラが喰われる場面を挿入するのですが、本作の場合は

  • 冒頭で喰われる女性のシーンが本筋に関係ないのに長い
  • 事あるごとに秀逸でも何でもないスローモーション演出が採用される
  • ただシャツを脱いで水着になるだけ、ただ森を歩くだけという無言シーンが多いし長い
  • 本編が終わった後にメインストーリーと無関係な捕食シーンが挿入されてそれも長い
  • 大人数で製作しているわけでもなくせにエンドロールが12分もある

など、あからさま過ぎるシーンが散見されます。

本作を観終わった後はあまりの虚無感に「なぜメガロドンが登場するのに舞台が湖なのか」という疑問はどうでもよくなっていることでしょう。

普通のサメが出てストーリーがある時点でZ級の中ではマシ

以上のように一般的な基準で言えば酷評されてしかるべき本作ですが、Z級サメ映画を数多く見てきた人間からすれば、いくつか評価したいポイントも存在します。

まず、ちゃんとした普通の見た目のサメが出てきます。

  • 果たしてこれはメガロドンなのか?
  • なぜ湖で泳いでいるのか?
  • なぜ凍っていたのにすぐに活動を開始したのか?

など不可解な点はありつつも、正常なシルエットをしたサメが水中を泳いでいます。

突然飛び上がって陸にいた人間を食べるラストの謎展開以外は普通のサメとして活躍し、陸上を歩き出したりすることはありません。

次に、水中映像がある点も評価できます。

水中映像は手間やコストがかかるので、B級・Z級のサメ映画はなにかと陸を舞台にしがちです(じゃあサメ映画を作るなよというツッコミは野暮です)。

しかし、本作には低予算映画のくせに水面や水中の映像が多く含まれています。

しかも「水面と平行な視点で人の顔を映す」という『ジョーズ』から続く伝統的な手法も採用されており、製作陣なりに正統派に近いサメ映画を作ろうとした痕跡のようなものが見受けられます。

そして、本作には常人でも理解ができるストーリーが存在します。

「なんで逃亡中の強盗団が真昼間に湖を手漕ぎボートで逃げているのか」という疑問さえ封印すれば、そこまで無理のないストーリー設定で、登場人物のキャラクター性も整っていて把握しやすいです。

「島で大人しくしていればサメに喰われないのに」というツッコミどころを「絵を落とした強盗団が回収しようとする」という設定で解決しているため、一本の筋で繋がったサメ映画として一応成立しています。

以上のように、本作はZ級サメ映画の中ではまだマシな部類です。

ただ、逆に言えばこれらの要素が評価ポイントになるほどのクオリティなので、そのあたりは察して頂けると幸いです。

その他見どころや豆知識

  • 大爆発と大きな揺れがあったのに全く気にせずに泳ぎ始めるアホガール。
  • オープニングで表示されるタイトルロゴが引く程ダサい。
  • 「立つんじゃねえ!気付かれるだろ!」と喚く強盗団の女ボス。真昼間なんだから立たなくても気付くよ。
  • 「私は真面目に調査に来ている」的なことを言いつつ水着姿のジル。
  • 浅瀬に来てのんびりしている間に後ろから普通に迫っていたサメに喰われる兄貴。
  • 「何かぶつかった」「早く漕いで」などと騒いでいるのに全く波の立たない穏やかな水面。
  • リッチに無線機のことを秘密にしている様子だったのに後半では彼の目の前で堂々と使い始める。
  • サメに夢中になっている間に女学生たちに逃げられる間抜けな強盗団。
  • 強盗団が盗んだという絵画『ワトソンと鮫』は実在します。本当にサメが人を襲っている様子を描いた絵です。
  • 「ダイナマイトでサメを追っ払っている間に水中の絵を取る」という作戦について、水中でダイナマイトが爆発すると物凄い衝撃波が発生するので、本来ならジル達もただでは済みません。
  • 銃で腕を撃たれたはずなのに平然としていて血の一滴も流さないジル。

サメに関する解説

サメの造形

ホホジロザメを元に作られたであろう安物のCGで再現されていました。

「メガロドンがホホジロザメの祖先だった」という説は現在は否定されており、ホホジロザメそっくりの姿で再現すると古生物マニアから指摘を受けることが多いのですが、この作品にそこまでの再現を求めるのは難しいでしょう。

ちなみに、「メガロドン=20m級の巨大ザメ」という一般的な認識に反し、実はそこまで大きいサメではなかったのではないかという説もあります。

そう考えると、本作のサメのサイズは現実的なものだったのかもしれません。

サメの行動

オオメジロザメなど淡水に現れるサメ類は少数ですが確認されており、シーラカンスをはじめ「現生の近縁種は海にしかいないけど昔は淡水にも生息していた」という古生物の例は確かにあります。

しかし、メガロドンは海の生き物であり、体の大きさを考えても川や湖に適応していたとは考えづらいです。

本作のサメの再現で評価すべき点があるとすれば、水面近くをサメが泳ぐシーンで尾鰭上葉も水面から出ていたことです。

多くのサメ映画では第一背ビレだけ水面から出すことによってサメの存在を示しますが、実際にサメが水面近くを泳ぐ場合は尾鰭も水面から出ます。

B級映画やZ級映画で尾鰭の再現までされていることは大変珍しく、本作の数少ない評価ポイントの一つと言えるでしょう。

その他サメの解説

  • 先述の通り、メガロドンが生きていたのは新生代であり、ジュラ紀はおろか白亜紀も終わった後の時代です。
  • ラストシーンにて、囮になったジルに噛みつこうと水面から顔を出したサメの口にダイナマイトを投げ込んでいますが、もしサメが水中でジルに噛みついたらどうするつもりだったんでしょうね・・・。

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