『ランドシャーク／丘ジョーズの逆襲』のネタバレあり感想＆サメ解説【BGサメ映画レビュー】

砂や雪の中を掘り進んだり、タコや人間と合体することで陸を歩くサメはこれまでも登場しましたが、その域にすら達していません。

邦題	ランドシャーク 丘ジョーズの逆襲
原題	Land Shark
公開年	2017年
監督	マーク・ポロニア
出演	サラ・フレンチ/ピーター・バルド/キャスリン・スー・ヤング
制作国	アメリカ
ランク	Z級（もはや映画ではない何か。サメ映画の沼であり闇。見ればZだと分かる。）
ストーリー	★☆☆☆☆
演出や絵作り	☆☆☆☆☆
サメの造形	☆☆☆☆☆

あらすじ

これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。

見どころ・ツッコミどころ

よく分からない曖昧な設定のサメ

かの迷作『シャーケンシュタイン』の監督であるZ級サメ映画の巨匠マーク・ポロニアのサメ映画です。

製作されたのは2017年ですが、Z級サメ映画の狂信的なファンたちが配給会社のコンマビジョンに働きかけ、2020年に日本にも上陸してしまいました。

しかし、そんな狂気の詰まった作品であるにもかかわらず、インパクトに欠ける上にクオリティが低いという、ただただ救いようのない作品です。

まず、サメのキャラクター性が弱いです。

雪の中を泳ぐという特徴に特化した『スノーシャーク 悪魔のフカヒレ』や、デザインに凝ったサメが変身して人型化する『シャーケンシュタイン』に比べると、本作のサメは見た目も地味で設定も中途半端であり、方向性が定まっていないように感じました。

Z級映画好きなら粘土細工かハンドパペットを思わせる低クオリティなサメの見た目だけでご飯三杯いけるのだと思いますが、そうではない人間からすると、ただ見た目が雑なサメでありインパクトに欠けます。

サメの設定についても、作中にはサメ視点の魚眼レンズのような映像や陸上でサメの背ビレが横切るシーンが何度かあるのですが、そもそもこのサメがどのように陸上に進出しているのか（歩いている、飛んでいる、掘り進んでいるなど）、本編の中で描かれていないので完全に謎です。

カメラアングル的に明らかに登場人物の視界に写っているはずなのに無視されていたり、人間の何十倍も重量がありそうなのにボロい屋根に音もなく乗っていたり、一体こいつは何なんでしょうか・・・。

「治療薬の開発で使用される実験ザメ」や「遺伝子改造された生物兵器」というネタもありきたりで、その荒唐無稽さに面白さを感じることもできません。

「サメが陸に現れる」というネタが当たり前になりつつあるサメ映画業界で勝負するには、発想のぶっ飛び具合が足りなかったと言わざるを得ないでしょう。

テンポが悪くシンプルにつまらない

そんなサメの登場シーンは多いものの、そのほとんどが本筋に関係なく、進行のグダグダ感がすごいです。

酒瓶を片手に一人で日中の砂浜を歩く水着女性（この設定も色々と謎）、漁師の二人組、プールでイチャイチャする頭悪そうなカップル、殺風景な場面でモデルを撮影するカメラマン、駅で彼氏に電話する女性など、メインストーリーに1mmも関係ないモブキャラが喰われるシーンが何度も挟み込まれ、サメ映画でも稀に見るテンポの悪さを発揮しています。

しかも、メインキャラ・モブキャラ共に無言のシーンが長すぎるため、「一体このシーンは何なんだろう」や「これは本編に関係あるのかな」などと考えて真面目に観ていると疲れます（真面目にこんなものを観る人は少数派でしょうが）。

肝心のメインストーリーについても、「実験を先に進めるために実験ザメを処分して研究所を移す」と突然言い出し、軍事利用するはずのランドシャークをいつの間にか始末する流れになり、話の進め方に雑さが目立ちます。

主要な登場人物が少なく、辛うじて起承転結が存在するために物語の理解は可能ですが、逆に言えばそれが長所に思えるほど構成がクソです。

とにかく全てがチープ

さらに言えば、絵作り、演技、小道具など、とにかく全てチープで、「よくこんなものを映画として世に出す気になったな」という代物です。

一部の映像が異様に暗い（明らかに明るさや露光の調整をミスっている）、血糊がただの絵の具にしか見えない、PCモニターやレーザー銃などあらゆる小物が3歳児のオモチャ並みにショボい、生きているサメの映像がYouTuberが使うような素材なうえに３回以上使いまわされている、追跡装置の音がやけにデカくて耳障りなどなど・・・。

挙げていけばキリがありません。探さなくても見つかるツッコミどころが満載です。

個人的に特に衝撃的だったのが研究所での一幕です。

フォスター博士がサメに対して実験をしているシーンなのですが、60～90㎝くらいの水槽に、完全に静止した状態のシロワニがすっぽり収まっています。

「水槽内のサメで実験してます」と言いたいのでしょうが、そもそもシロワニがそんな小さな水槽に収まるわけありませんし、水槽内の水が明らかにCGで、シロワニは映像ではなく画像の合成なのか全く動いておらず、水槽から飛び出ているサメのヒレの形がシロワニのものと全然異なっており、もう色々と凄いです。

設定がパンチに欠けてストーリーもつまらない本作を視聴する際は、こうしたトンデモ描写をいかに楽しめるかが大事なんだと思います（無理強いはしません）。

その他見どころや豆知識

• ポロニアの過去作『シャーケンシュタイン』では銃声が全てかすれたような音でしたが、本作では一応銃っぽい音になっています。
• 漁師の一人が喰われるシーンに『シャーケンシュタイン』の使い回しと思しきシーンがあります。
• 写真のプロを名乗っているくせに肝心の写真撮影で小さなデジカメを使うメガネ男。一眼持ってこい。
• モデルがサメから逃げるシーン、あまりにも遅すぎて、カメラマンに気を使っているように見えます。
• 日本語字幕で「床ジョーズなんだろ」と訳されているセリフ、実際は「I saw your tits（君のオッパイ見たぜ）」です。字幕を作ったサメ映画ルーキーさんが完全に遊んでいますね。
• モーテルで注射を打つシーンにて、トイレの便座の位置が明らかにおかしいです。
• アソコを噛み千切られても割と冷静な物乞いオジサン。
• 足を負傷した人間にさえ追いつけない陸ザメ。そして、足を噛まれたはずなのに平然と歩くフォスター博士。
• サメ人間に変身したフォスター博士の歩き方が間抜けすぎる。
• ラストで突然現れる超巨大ザメ。5～6mありそうな背ビレが水面から出ていて悲鳴の音声も流れますが、背景に映る人々は平然と歩いています。

サメに関する解説

サメの造形

粘土細工みたいな全身灰色のサメと、ゴムのオモチャみたいなサメの二種類が使われていました。

サメの全体像が映るときは全身灰色のサメが映り、人が襲われるシーンでサメの目や口元がドアップになるシーンはオモチャのサメでした。

灰色のサメはNHKの子供向け番組に出てくるような見た目なので可愛げがあるのですが、アップで映るサメは、黒目がやけにグロテスクで、吻先が変な方向に曲がっており、色々と気持ち悪かったです。

なお、ランドシャーク以外の実験ザメが泳ぐ映像は、どこかの素材サイトで集めたと思しき水族館のサメの映像が使われています。

サメの行動

陸に上がってくるという設定なうえに、本編でサメが動く姿がほぼないため、行動に関してはあまり言うことがありません。

強いて挙げるなら、何故か水中を泳ぐ時にタンを吐く直前みたいな声を出していましたが、サメは鳴き声を発しません。