水族館でラッコはもう見られない?可愛すぎるラッコ展示と国内繁殖の問題を解説!北海道の野生ラッコは希望なのか?

おはヨシキリザメ!サメ社会学者Rickyです!

今回は水族館でアイドル的存在のラッコについての解説です。

水面にプカプカ浮かび、時に二匹で手をつなぐラッコたち・・・。その愛らしいその姿に癒されるという人も多いと思います。

しかし、そのラッコたちは日本の水族館でもうすぐ見られなくなります。

一体ラッコたちに何が起こっているのでしょうか?

今回は水族館ラッコ問題をテーマに解説していきます。

目次

解説動画:水族館でラッコはもう見られない?可愛すぎるラッコ展示と国内繁殖の問題を解説!北海道の野生ラッコは希望なのか?

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2022年1月26日です。

国内水族館で飼育されているラッコたちの現状

水族館でラッコは大人気の動物で、よくお土産コーナーにもぬいぐるみが置いてありますが、現在その飼育頭数は激減しています。

1982年頃からラッコの飼育ブームが始まり、ピーク時の1994年の国内飼育数は122頭、飼育する園館の数は28施設にも上りました。

古くからの水族館ファンの中には、サンシャイン水族館や八景島シーパラダイスなどでラッコを見たことある人も多いと思います

しかし、繁殖の努力もむなしく年々その数は減っていき、飼育頭数の減少、そして残っている個体の高齢化が進みました。

ラッコはもともと繁殖力が高い動物で、鳥羽水族館で飼育下繁殖に成功したこともありますが、世代を経るごとに交尾をしなくなったり、母乳が出なかったりなどの問題が起きたそうです。

愛嬌があることで有名な鳥羽水族館のラッコ。

現在生きたラッコを国内で飼育しているのは、以下の園館だけです。

  • 鳥羽水族館(三重県)
  • マリンワールド海の中道(福岡県)
  • 鴨川シーワールド(千葉県)

※鴨川シーワールドのラッコは須磨海浜水族園から一時的に預かっている個体で現在非公開。

そして、2021年に鴨川シーワールドにいたオス個体(通称ラッキー)が死亡したことにより、オスメスペアで飼育されているラッコは日本から完全にいなくなりました。

さらに、残っている個体も10代後半か20歳以上(人間で言えば80歳超え)の老齢ばかりで、どのみち繁殖は困難だとされています。

ここまで来てしまうと繁殖は絶望的なので、他国からラッコを輸入して新しく展示したくなりますが、それも現実的ではありません。

何故なら、現在ラッコは絶滅危惧種であり、国際取引が厳しく規制されているからです。

何故ラッコは絶滅危惧種なのか?

では、そもそも何故ラッコが絶滅危惧種になってしまったのでしょうか?

ラッコの数を激減させた一番の原因は、人間による乱獲です。

元々ラッコは、日本の北海道から千島列島、カムチャッカ半島、アラスカ、バハ・カリフォルニア、メキシコなどの広範囲に分布していました。

1700年代初頭時点で、個体数は約15万頭から30万頭ほどだったと推定されています。

補足:ラッコという種の分類について

ラッコは食肉目イタチ科カワウソ亜科に分類される動物です。種としてのラッコは「Enhydra lutris」(インハイドラ・ルートリス)1種のみですが、現在生息地が分かれた3亜種がいるとされています。

このように、北太平洋に幅広く生息していましたラッコでしたが、18世紀後から毛皮目的に乱獲されるようになり、その数はどんどん減っていきます。

先ほど挙げた生息地はどれも寒い海というイメージがあると思いますが、ラッコは冷たい海に適応するため、極めて上質な毛皮を持っています。

ラッコの毛は、1㎠あたり10万本という驚異的な密度で生えており、1本の長く太い毛に対して約70本の細い綿毛が一つの毛穴から束になって生えています(人間の髪の毛が全体でだいたい10万本です)。

この哺乳類トップクラスの密度で生えた毛により、水に入っても体が直接濡れることはなく、さらに空気の断熱層ができるため冷たい環境でも体温を保ちやすくなっています。

ラッコの剥製。
ラッコの剥製。全哺乳類の中でもトップクラスのモフモフです。

このような毛皮は防寒具として優れ、触り心地も非常に良いため、各地でラッコは乱獲されていきました。

1911年にオットセイやラッコを保護するために膃肭獣(オットセイ)保護条約(international fur seal treaty)が締結されたのですが、この頃にはラッコの個体数はわずか2000頭にまで減少してしまいました。

乱獲以外のラッコに迫る危機

乱獲以外でも、ラッコを絶滅に追いやりかねない問題があります。

石油流出

タンカーやプラットフォームから漏れた石油に塗れてしまうと、ラッコの毛皮は断熱効果を失ってしまいます。

さらに、毛づくろいを通してラッコが石油を飲んでしまい、胃腸の病気になって死んでしまうリスクもあります。

トキソプラズマ

意外なもので言えば、ネコ類の糞を通して広がるトキソプラズマ症が挙げられます。

トキソプラズマ症は動物は警戒・回避行動に影響を及ぼし、免疫不全患者や妊婦さんが感染すると深刻な疾患、流産や胎児の形態異常などを引き起こす危険もある感染症です。

ネコとラッコが直接かかわる機会は少ないと思いますが、ネコの糞に含まれるトキソプラズマ・オーシストは川を経由して海に流れ出し、アザラシなどの動物が感染して死亡するなどの悪影響が出ています。

ラッコに関して言えば、1999~2001年にカリフォルニアで採集されたラッコの死体105頭を調べたところ、トキソプラズマ症とサメによる攻撃が死亡の二大原因でした。

また、サメに殺されたラッコは、他の原因で死亡した個体の3倍以上の割合でトキソプラズマに感染していることも分かりました。

このことから、トキソプラズマが引き起こすラッコの行動変化や病気が、サメなどの捕食者に襲われやすくしてしまう可能性が示唆されていています。

シャチによる捕食増加

アシカやオットセイの個体数が減少したことにより、それを襲っていたシャチがラッコを襲うようになり、個体数を減少させているという説があります。

ただし、この説については確証がないので「そういう可能性もある」程度で思っていただけると幸いです。

害獣駆除

ラッコはウニや二枚貝などを捕食する大食漢なので、一般人から見たらアイドルでも、漁師からしたら害獣です。

今では何かしらの規制が各地域にあるはずですが、それがなければ容赦なく駆除される危険があります。

ラッコの国際取引は実質禁止

以上のような危機的状況にあるラッコは、IUCN RedlisitにおいてEN(絶滅危惧)という評価を受けています。

動植物の国際取引を規制するワシントン条約では、カリフォルニア近海に生息する亜種は、商用取引を禁止する附属書Ⅰに記載されています。

さらに、日本にラッコを輸出していた米国は、1988年以降ラッコの輸出を禁止しています。

こうした事情により、ラッコを海外から展示用に輸入するということはほぼ不可能です。

したがって、今日本国内で展示している子たちがいなくなり次第、日本で生きたラッコ展示を見る機会はほとんど永遠に失われることになります。

北海道の野生ラッコは”希望”なのか?

こうした現状の中で一部の人が希望を見出しているのが、日本に再定着しつつあるラッコたちです。

もともとラッコは日本でも乱獲により数が激減し、北方四島を除く全域にて姿を消したと思われていました。

しかし、2014 年頃から北海道東部沿岸でラッコたちが目撃されるようになり、2016年頃から繁殖が確認されています。

こうしたニュースを知った一部の人たちが、「国内の野生ラッコを水族館で展示できないか?」という希望を持ち始めたようです。

僕自身ラッコは大好きなので気軽に見に行けるのであれば有難いですが、一部のマスメディアがラッコの展示減少と国内野生ラッコを関連付けようとすることに、個人的にものすごい違和感(不快感に近い)を覚えます。

というのも、野生ラッコ確認を伝えるニュースの中では、

日本のラッコの未来を救うかもしれない

保護を目的としたラッコの展示に期待を寄せる

などの表現が使われています。

何かおかしくないですか?

だって、別に水族館でラッコが見られなくなっても”日本のラッコの未来”とやらは終わらないですよね(北海道にいるんですから)。

「保護を目的としたラッコの展示」というのも、展示ありきで保護を考えているような感じがします。

もちろん、これまでの飼育ノウハウを保護活動で活かせるよう準備することは大事ですし、実際に保護するとなったら啓発・教育の観点から展示しても良いとは思います。

水族館で大人気のラッコ。

しかし、絶滅危惧種の個体群が日本で定着しつつあるというニュースを聞いたら、まず考えるべきは彼らの生態を解明すること、そして観光産業からの悪影響はないか?漁業者と競合しないか?を調べて、いかに生息域を保全していくかではないでしょうか?

保全の取り組みとして保護も選択肢の一つには入りますが、水族館展示が目的ではありません。

水族館は所詮切り取った自然を展示する啓発・研究施設ですから、保護せずに自然界で増えてくれればそれでいいわけです。

穿った見方かもしれませんが、これら二つのニュースの結び付け方をする人々は、ラッコを絶滅の危機にある野生動物ではなく、水面に浮かぶ動くぬいぐるみ程度にしか思っていないように感じます。

ラッコはカワウソの仲間という話をしましたが、野生環境と切り離してアイドル化して利用しようとする浅はかな精神は、カワウソペットブームにも通じるものがあります。

日本の水族館で近い将来ラッコが見られなくなることは悲しい。

北海道に野生のラッコが戻りつつあることは喜ばしい。

このどちらも僕は共感しますが、これらを安易に結びつけてよいかは疑問です。

仮に日本国内のラッコ個体数が順調に増えたとして、今後もラッコ展示を続けるために飼育すべきなのか?

展示すべきとすれば、その正当性の根拠は何か?

これらについて、よくよく考えた方が良いと思います。

参考文献

※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。

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