イタチザメは人食いザメ?危険ザメNo.2は何を食べているのか?食性や危険性を徹底解説!

この記事は以下の続きになります。

ホホジロザメと並ぶ人喰いザメとして有名なイタチザメは、果たして本当に危険なのでしょうか?

僕のようなサメ好きがこの感じで話し始めた時は大抵「実はそこまで危険ではない」という結論に落ち着くのですが、イタチザメに関してはあまり否定はできません。

イタチザメは普通に危険なサメです。

ただ、いたずらに危険性を煽ると低レベルなテレビ番組と同じになってしまうので、体の特徴や食性の部分から真面目に解説していきます。

目次

イタチザメの歯の形

前回の記事でも少し紹介しましたが、改めてイタチザメの歯を観察してみましょう。

イタチザメの歯は先が尖っていて、縁がギザギザしています。幅が非常に広く長さ自体は短めな、完全な三角形ではない形をしています。

この形状は、獲物の肉を切り裂くだけでなく、骨や甲羅など硬いものを噛み砕くのにも適しています。

イタチザメの歯
イタチザメの歯単体で見るとこんな感じです。

イタチザメは海のゴミ箱?

こんな汎用性の高そうな歯でイタチザメが何を食べているかと言えば、あらゆるものを食べています。

「硬いものを砕き、かつ肉を切り裂く歯」という歯の形にふさわしく、イタチザメはよくウミガメを食べています。

しかし、それ以外にも様々な種類の魚、他のサメやエイ、カニ類、巻貝、エイの卵、ウミヘビ、イルカやクジラ、海鳥や渡鳥などなど・・・色々なものが胃から出てきます。

これだけでも幅の広さを感じさせますが、イタチザメの胃の中からは犬、猫、豚、羊、牛、馬なども見つかっています。恐らく水害や船の沈没で流された家畜たちだと思いますが、それにしても見境がないです。

これ以外にも、タイヤやドラム缶の一部、プラスチックなど、明らかに消化できないであろうゴミも見つかっています。

サメ社会学者Ricky

映画『ジョーズ』の中に、イタチザメを解剖しているときに胃の中からナンバープレートが出てくるシーンがありますが、あれは誇張ではなくて本当に起こり得るようです。

こんな感じなので、イタチザメは「garbage can with fins(ヒレのついたゴミ箱)」という、なかなかヒドイあだ名がつけられています。

本職の研究者が書いた本にも、以下のような愚痴が書かれれていました。

Listing all the animals that have been found inside tiger sharks would be a daunting task(イタチザメの胃から見つかった動物を全てリストアップするのは気が遠くなる)

『Sharks of North America』p469より引用

イタチザメは人食いザメか?

なんでも食べるイタチザメは、人間も食べるのでしょうか?

結論から言うと、食べることはあります。しかも、襲われる可能性も他のサメよりは高いと思います。

イタチザメの全長は3m以上、大きいものだと4.5m以上にもなるという大型なサメで、ウミガメや他のサメなど、人と同じ、あるいはそれ以上に大きな獲物を捕食します(というか何でも食べます)。

最大全長については諸説ありますが、最大で7mになるという説もあります。

そして、ウミガメを砕き切り裂くような歯と顎をもつため、人間を引き裂くのは雑作もありません。

さらに、イタチザメは熱帯や温帯域に生息しており、しかも、陸から離れた沖合からシュノーケリングができる浅瀬まで幅広い場所に現れます。

つまり、日本で言えば沖縄、アメリカで言えばハワイやフロリダなど、マリンスポーツが盛んなリゾートなどで人と遭遇する可能性が高いです。

実際に、世界で起きているサメの被害をまとめているInternational Shark Attack Fileによれば、イタチザメはホホジロザメについて、世界で二番目に多く人を襲っているサメとしてリストアップされています。

このように、生態・遭遇率・実績の3つを考慮すると、イタチザメが危険なサメであることは否定できないと思います。

イタチザメの危険性について補足

イタチザメが危険なことは間違いないですが、「人食いザメだ!殺人モンスターだ!」と大騒ぎする前に、以下のことも心にとめていただきたいです。

常に見境なく人を襲うわけではない

イタチザメは確かに危険なサメではありますが、常に人間を食べようと思っているわけではありません。

イタチザメをケージなしで観察するダイビングツアーはありますし、僕も水中でイタチザメに遭遇した人を複数知っていますが、皆さん普通に生きて帰ってきています。

実際に人を食ったイタチザメは実在しますが、常に食べているわけではないので、僕は「人喰いザメ」よりも「危険ザメ」のようなフレーズが適切かなと思います。

イタチザメが食べた人間には溺死体も含まれる

イタチザメの胃から人体の一部が見つかることは確かにありますが、泳いでいる人間を積極的に襲ったものではなく、溺死体を食べているだけのケースが多いようです。

イタチザメは他のサメよりも肉の腐敗具合を気にせずに食べるため、他の生物が食べたがらない状態の水死体も、彼らのメニューになっているのかもしれません。

そのため、イタチザメの胃から人の一部が見つかっても、必ずしも彼らが命を奪ったとは限りません。

イタチザメよりも危険な海洋生物は沢山いる

イタチザメと出くわす可能性のある場所として沖縄やハワイを先ほど取り上げましたが、こうしたリゾート地には、イタチザメ以外にも危険な生物がいます。

例えば、沖縄やハワイに生息する小さなクラゲや貝の中には、人間を死に追いやる恐ろしい猛毒を持ち、イタチザメよりも遭遇率が高い生物がいます。

ハブクラゲ。沖縄に生息している非常に危険なクラゲ。

また、イタチザメは世界で二番目に人を襲っているサメと言いましたが、あくまでサメの中では多いという話です。そもそもサメによる被害自体が他の生物よりも圧倒的に少ないということを忘れてはいけません。

危険な生物を危険なものとして警戒すること自体は間違っていないのですが、いたずらに恐怖心を煽って悪者扱いするのではなく、事実を知った上で、適度に正しく怖がるのが良いのかなと僕は思います。

さて、次回の記事では、そんなイタチザメの繁殖方法について紹介します!

参考文献

  • Jose I. Castro 『The Sharks of North America』 2011年
  • 矢野和成 『サメ 軟骨魚類の不思議な生態』1998年 










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