『海底47m』のネタバレあり感想&サメ解説【BGサメ映画レビュー】

モンスターパニックというよりスリラーに近いサメ映画です。意外なラストで賛否が分かれそうですが、個人的には好きです。

邦題海底47m
原題47 Meters Down / In the Deep
公開年2017年
監督ヨハネス・ロバーツ
出演クレア・ホルト/マンディ・ムーア/マシュー・モディーン
制作国イギリス/アメリカ
ランクA級(普通に映画として楽しめる。自信をもって勧められる。)
ストーリー★★★★☆
演出や絵作り★★★★☆
サメの造形★★★★★

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目次

あらすじ

メキシコで休暇を過ごしていたリサとケイトの姉妹は、海に沈めた檻の周りにサメを誘き寄せて鑑賞するケージダイブに誘われる。

間近でホホジロザメを鑑賞して興奮する2人だったが、檻を吊るしていたワイヤーが切れてしまい、一気に海底47mまで沈んでしまう。

暗い海底で船との連絡も途絶え、周りを人喰いザメに囲まれて身動きできない中、タンクに残された空気残量は無情にも減っていく。

果たして2人は生還することができるのか・・・。

これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。

見どころ・ツッコミどころ

閉塞感強めのサメ映画

サメがメインというより、海の底に閉じ込められる不安・恐怖を前面に出したソリッド・シチュエーション・スリラー映画です。

暗い海底に急降下する、檻の中に閉じ込められる、空気残量が減っていく、潜水病のリスクが高まる・・・。様々な困難が襲い掛かり、人喰いザメはその困難の一要素として登場します。

そうした構成もあり、サメの恐怖以上に、サメによって檻から抜け出せないことによる閉塞感の方が強く描かれている印象を受けました。

とはいえサメの出番が少ないわけではなく、むしろサメのビジュアルも演出も良質です。

また、「沈んだ檻の中」という狭い場所を舞台しつつ、外部との連絡や脱出のために檻から出るハラハラした場面が定期的に用意され、二転三転する展開は最後まで飽きさせません。

特に、「サメに襲われるリスクを承知で檻から出ないと外部に連絡できない」という設定が、姉妹二人の不安を高める上にサメの出番を増やすという、なんとも絶妙な味を出しています。

テイストはだいぶ異なりますが、少ない登場人物と限られたスペースを使ってスリリングな物語を仕上げた点では『ロスト・バケーション』に近いものを感じる良作のサメ映画です。

スリラー色で賛否両論?

先述の通り本作は海洋スリラー映画という側面が強いため、サメ映画の中では少し異質かもしれません。

まず、全体的に暗く息苦しい雰囲気で、しかも巨大ザメが暗闇からぬっと現れたり急に噛みついてくるなど、全体的にホラー色が強めです。

また、なんだかんだあった末にサメが爆発して終わる一般的なサメ映画と違い、本作はそもそもサメと闘いません。サメはあくまで姉妹二人が生還するまでの障害として登場します。

さらに、本作はサメ映画の中でも非常に独特なエンディングを迎えることで有名です。

サメに襲われて重傷を負った妹ケイトを助けるため、小心者だった姉のリサが文字通り立ち上がり、檻から出て決死の浮上を試みます。

複数のホホジロザメに襲われながらも命からがら船に辿り着いたリサがケイトに話しかけるも、実は彼女の脱出劇は窒素酔い(血中に窒素が溶け込むことで泥酔したような状態になる現象)による幻覚であったことが判明します。

直接的に描かれてはいませんが、ケイトの生存発覚は幻覚中の出来事だったので、結局ケイトは死んでしまったのでしょう。

こうしたやや救いのない展開はスリラー映画では割とあることですし、全体的なストーリー展開やサメのクオリティが高いため個人的には不満はありません。

ただ、一般的なサメ映画に比べれば陰湿でスッキリしない終わり方ではあるので、「水着美女が派手に食われて最後は爆弾でドカーン!」という展開を期待していた方はモヤモヤしてしまったかもしれません。

その他見どころや豆知識

  • ダイビングのライセンスがない人をケージダイブに招待するのは明らかに問題ですし、しかも彼女たちは前日の夜1時過ぎに酒を多く飲んでいます。無免許、前日の飲酒、睡眠不足・・・。ダイビングをするには色々とヤバいです。
  • 暗闇でサメに襲われ、喰われた男の死体まで観ているのに「タンクに空気が残ってるか」と確認し、ウィンチと水中銃を持ち帰るリサ。肝座り過ぎです。

サメに関する解説

サメの造形

海のグラフィックの影響も相まってややCG感が強めですが、全体的には非常によくできたホホジロザメでした。

顔の尖りぐらい、ドロンとした黒い目の丸み、各ヒレの形・位置・大きさ、背中側とお腹側の模様の境目など、かなりこだわりをもって作られていることが伝わってきます。

『ロスト・バケーション』と並び、世のサメ映画監督がお手本にすべき造形だったと思います。

実際のホホジロザメ。

サメの行動

本作ではケイトがリサに「海底に沿って泳ぐように」と忠告したり、岩場に伏せてサメをやり過ごす場面があります。

「そんなことで身を守れるの?」と思うかもしれませんが、確かにホホジロザメが大型動物を襲う際は、下から上に向かって奇襲をかけたり、水面に追い込むようにしていることが多い印象があります。

というより、多くの捕食者は海の深みから襲ってくることが多いです。これは、海底から海面の方を見上げた方が、影によって獲物を見つけやすいためだとされています。

サメを含む多くの魚のお腹側が白かったり、一部の深海魚がお腹に発光器をもっているのもこれが理由だと考えられます。下から見える自分の影を少しでも目立たせないような姿が進化の過程で有利だったのでしょう。

また、個人的な見解ではありますが、底の方にいる生物を多く食べるサメたちは、口が顔の前の方に位置していたり、吻が短いことが多いように感じます。

イヌザメ
トラザメ

こうした顔つきが進化の過程で形成されたのだとしたら、吻先が尖ったサメらしいフォルムのホホジロザメは、岩場などで伏せている動物の捕食が苦手な可能性があります。

もちろん、ホホジロザメが海底でどのように過ごしているかは解明されていないので、「伏せていれば絶対に攻撃を回避できる」とは言いませんが、海底の方でじっとしていることで、ホホジロザメからして食べづらいか、あまり食べ物っぽく見えない状態になれるかもしれません。

その他サメの解説

  • 日本語字幕で「8メールのホホジロザメが間近に来る」と訳されているセリフ、英語では25フィート(7.62m)と言っています。いずれにしろホホジロザメにしてはデカすぎです。
  • 船内にサメの顎標本が飾られていますが、上下が逆です。

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