ブラックバス問題を解説!釣り人に愛される最悪の外来種の生態とバス業界の闇に迫る!【ブラックバス問題(前編)】

当サイトではたびたび外来種問題について解説を行っていますが、今回は外来種のイメージが強い生物、ブラックバスを取り上げます。

外来魚の代名詞とも言うべきこの魚は、侵略的外来種として深刻な問題を引き起こすだけでなく、一部の愛好家や業界が問題解決を難しくしているという厄介な側面を持っています。

議論の絶えない侵略的外来種ブラックバスの何が問題なのか?前後編に分けて徹底的に紹介していきます!

目次

解説動画:【前編】ブラックバス問題を解説!釣り人に愛される最悪の外来種の生態とバス業界の闇に迫る!【バス釣り】【ルアーフィッシング】【池の水】

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2021年7月29日です。

ブラックバスは総称

ブラックバスとはどんな魚なのか?バス問題に触れる前におさらいをしておきましょう。

そもそも「ブラックバス」という呼び方は総称であり、一つの種を指す名前ではありません。

ブラックバスはスズキ目サンフィッシュ科に分類される淡水魚のうち、オオクチバスをはじめとする複数の魚を表します。このうち日本で問題になっているのはオオクチバスコクチバスなどになります。

ブラックバスはあくまで総称。

これらの魚は北米原産で、本来は日本にいない魚ですが、1925年に食用として持ち込まれました。赤星鉄馬という方が、神奈川県の芦ノ湖にオオクチバスを放流したのがことの始まりです。

その後、食用魚として定着することはなかったですが、ルアーフィッシングの対象として大人気の魚になり、1970年ごろから急速に分布域が広がっていきます。

最初に移入されたのはオオクチバスだけで、当初は限られた都道府県の一部の水系に放流されていましたが、90年代ごろにはフロリダバスやコクチバスまで確認され、今や全国の淡水域にまでブラックバスは拡大してしまいました。

ブラックバスがもたらす生態系への悪影響

僕が外来種問題の解説をする際に毎回言っているのが、「外来種だから悪者扱いするのではない」ということです。

ブラックバスがここまで問題になっているのは、侵略的外来種としてそれ相応の悪影響があるからです。

ブラックバスの一番の問題点は在来種の捕食です。

食欲旺盛な彼らは小魚、甲殻類、両生類、昆虫など、口に入るあらゆる生物を襲うため、放たれた環境の様々な在来種が犠牲になります。

現に、モロコやモツゴの仲間、ワカサギなどがブラックバス移入後に激減してしまった事例が数多く報告されています。

また、琵琶湖ではブラックバス移入後の調査によって生存が確認できなかった、つまりその場所では絶滅してしまったと思しき魚もいます。

数々の在来淡水魚が、ブラックバスの被害に遭っています。

こうした悪影響だけでも厄介ですが、ブラックバスは1000〜10万以上の卵を産み、親が巣を作ってその卵を守るという習性があります。

おまけに30〜60cmと、日本に住む淡水魚の中では大型になるので、成魚になればほとんど天敵はいません。

つまり、一度繁殖してしまうと、とんでもない数に増えてしまう危険があるんです(実際、すでに国内でとんでもない数に増えてしまっています)。

ブラックバスは特定外来生物

日本の淡水魚に「珍しい」や「貴重である」という感想を抱く人は少ないかもしれませんが、失われたら二度と戻ってこない生物多様性の一部という点では熱帯雨林の希少生物と全く同じように価値があります。

また、日本の田園風景や川魚料理などの文化は、そうした生物多様性無くしては語れません。

ブラックバスのような侵略的外来種は、そうした生物学的・文化的に守るべきものを破壊してしまう威力を持っているんです。

そのため、ブラックバスは特定外来生物に指定されています。つまり、許可のない生きたままの運搬、売買、飼育などが禁止されていて、違反すれば刑事罰の対象になります。

さらに、外来生物法とは別に、釣りあげたブラックバスのリリースを禁止する条例やルールが定められていることがあります。

ブラックバス自体に罪はありませんし、彼らがカッコいい魚というのもまた事実ですが、日本の自然環境にいてはいけない魚です。

日本の生態系を守るために、彼らを排除しなければなりません。

ブラックバスを擁護する人々の問題

こうしたブラックバス自体が引き起こす問題も厄介ですが、さらに事態をややこしくするのが、ブラックバスを擁護して、対策を妨害する人々です。

ブラックバスはルアーフィッシングで非常に人気な魚であるため、バス釣りを楽しみたいバサーと呼ばれる人たち、そして彼らにモノやサービスを売って儲けたい企業・団体がブラックバスの駆除や規制に対して猛烈に反発してくることがあります。

もちろん、匿名の一個人がTwitterなどで環境啓発に難癖をつけてくるのはよくあることです。

しかし、バス問題に関しては実名と顔を晒している界隈の有名人、釣り業界企業の公式アカウントが堂々と駆除や規制への反対意見述べてきます。

さらに、釣り関連の財団法人が、ブラックバスのリリース禁止措置に反対の意見書を出す、バスの釣り場を規制されないよう署名活動が行われるなど、組織的に抵抗してくることがあります。ブラックバスが特定外来生物に指定される際も、他の外来種に比べて、指定に対する反対意見が数多く寄せられました。

ブラックバスを認めさせたがるバサーや業界人はいまだに多いです。

この記事自体も以前にYouTubeに投稿した動画内容をもとにしているのですが、コメント欄には誹謗中傷、的外れな反論、嘲笑や煽りなど、知性と民度を欠いたバス容認論者の下劣なコメントが湧いていました。

しかも「こんな炎上商法は無視しましょう」や「こんな底辺YouTuberにもまじめに反論している人がいることを知ってください」など、周りの呼び掛けるようなコメントが多く、徒党を組んで邪魔者を潰しにかかる習性があるように感じます。

さらに、自分が学生であると自称したり、僕(当時20代後半)のことを「オッサン」と呼んでいるアカウントが多いことから、おそらく子供や学生もかなり含まれています。バス釣りがブームになった当初の世代だけでなく、若い層までも毒されてしまっているようです。

後半記事で詳しく紹介する通り、ブラックバス擁護・容認論のほとんどが論点のすり替えや事実の捻じ曲げ、単なる感情論、生態系保全の軽視からくる、非常にお粗末なものばかりです。

しかし、それなりの人数と財力を持って対抗してくるので、バス業界が厄介であることは間違いありません。

密放流という犯罪行為も横行

反対意見を言うだけならともかく、ブラックバス容認論者の一部は明らかな妨害活動をしてくることがあります。

バスが釣れる環境を戻したい、あるいは保全活動に嫌がらせをしたいという理由でブラックバスを放流する、密放流という行為が現在も横行しています。

最近の事例では、2021年6月に宮城県伊豆沼・内沼付近の溜め池で確認されたブラックバスの件が挙げられます。

この場所は一度ブラックバスを駆除していて、絶滅危惧種であるゼニタナゴの復活も確認された池でした。にもかかわらず、2019年に存在を確認できなかったブラックバスが、2020月に7000匹もいることが確認されました。

駆除方法や増え方からして、先の駆除で取り残した個体が繁殖したという可能性は低いです。また、当然ブラックバスは陸を移動できません。乾燥や消化液などに特別耐性を持つ訳でもない彼らの卵が水鳥などに運ばれたということも考えづらく、人為的に持ち込まれた可能性が高いわけです。

密放流という特殊な行為を指すような言葉が出来上がっていますが、ブラックバスを含む特定外来生物は放流はおろか生きたままの運搬自体が禁止なので、ただの犯罪です。

バス釣りを楽しみたい、儲けたいという欲望を満たすために、環境破壊である犯罪行為を平然と行う、反社会的で頭の悪い犯罪者です。

この他にも、ブラックバス放流禁止と書かれた看板を持ち去ったり、リリース禁止の場所で釣ったバスをリリースするなどの迷惑行為をはたらくこともあります。

ハッキリ言ってダサすぎるチンピラでしかないのですが、実際に放流されれば保全の努力をぶち壊す恐れがあり、密放流は深刻な問題です。

犯罪だからダメなわけではない

ブラックバスの放流が違法だという話をしましたが、ここで重要なのは、「犯罪だからダメ」というわけではないことです。

犯罪であろうが無かろうが、侵略的外来種を野に放つというのは絶対にやってはいけないことだと肝に銘じ、問題について発信する際もこの部分をおろそかにしてはいけません。

例えば、飼っている猫を一時的に外に放置する行為は、現状日本の法律で裁くことはできません。

しかし、法律上の扱いがブラックバスと異なるというだけで、猫も生態系に重大な影響をもたらす侵略的外来種です。日本に生息する貴重な固有種が深刻な被害を受けています。

少しキツイ例えですが、ブラックバスの放流を人殺しに例えるなら、ミドリガメの放流や猫の外飼育はイジメによって自殺に追い込む行為です。後者を殺人罪で起訴することは難しいかもしれませんが、実質やっていることの悪質さは同等です。どちらも許してはいけない害悪行為です。

日本は遵法意識が高い(というより、ルールから逸脱した人をとにかく批判する風潮がある)ので、犯罪だと強調すればバスの放流が悪いことだと理解されやすいとは思います。

また、バス業界は反社会的行為の上に成り立っているというイメージ(イメージというか事実ですが)は、この問題に対処する際の武器に使えると思います。

しかし、「なぜ放流がダメなのか」「何を守るための禁止措置なのか」という問いに答えられないまま批判するばかりでは、知識や関心のない人からすれば、啓発するこちら側がいじめっ子のように見えてしまいます。

バス問題について発信する際は、「違法だから」ということだけでなく、なぜ違法なのか?なぜ許されないのか?も含めて紹介するようにお願い致します。

次回の記事では、実際にブラックバスを容認したがる人々から寄せられた批判の数々に、僕なりに回答を提示していきます。

参考文献




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