野良猫の餌やりや放し飼いは完全に終わっています【外来種ネコ問題②】

この記事は以下の記事の続きになります。

目次

“可愛い”こそネコ最大の問題

前回の記事でネコが外来種であり、生態系保全や公衆衛生において深刻な悪影響をもたらすことを解説しました。

しかし、ネコにはその被害そのもの以上に厄介な点があります。

それが、あまりにも可愛くて多くの人に愛されているということです。

言うまでもないことですが、ネコは非常に可愛く、ペットして人気があります。もちろん猫が苦手な人、嫌いな人もいますが、全体で見れば少数派でしょう。

しかも、ネコはかなり馴染みのある存在であるため、外来種としてのネコ問題を取り上げても一般に認知されにくいです。

今回問題にしているイエネコ(Felis catus)は人間が作った家畜なので、壮大な生物の歴史の中では新参者でしかありません。

しかし、人類の歴史というごく限られた期間で言えば、だいぶ昔からいる存在です。

対して、”生物多様性の保全”や”外来種の対策”などの考え方は、人間社会の根底に関わる重大なものですが、その重要性が認知されたのはつい最近です(というより、まだまだ認知されていない気がします)。

そうした事情もあるためか、ネコという外来種はあまりにも放置・容認されています。そもそもネコを侵略的外来種と認識ている人自体が稀です。

現に、影響が深刻な外来種であるにもかかわらず、今も平然と放し飼いにされることがあり、道端でネコにエサやりをする人も多いです。アニメで野良猫が肯定的に描かれたり、野放しネコの写真集が販売されることもあります。

それどころか、生態系保全を重視する意見の方がマニアックで口うるさい難癖のように扱われることもあり、非常に嘆かわしい現状と言わざるを得ません。

ネコ狂信者たちの猛反発

まして、「ネコを排除するべき」なんて言い出したら大変です。

ネコを駆除や殺処分を肯定しようものなら、それだけで感情的な批判や誹謗中傷、デマや陰謀論まで総動員して袋叩きにする”ネコ狂信者”とでも呼ぶべき危ない人たちが現れます。

例えば、奄美大島では「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画 」というものが実施されていますが、週刊誌や動物愛護団体が「3000匹の殺処分計画」や「世界遺産目当ての虐殺」などのデマを流し、一部の愛猫家が奄美の人を誹謗中傷する問題も起きています。

冷静に計画書を読んで実情を調べれば批判のほとんどが頓珍漢でバカバカしいことはすぐに分かりますが、読む能力がないのか読む気がないのか、はたまた読んだうえでデマを流しているのか、未だに奄美の管理計画を杜撰ずさんな悪行のように非難する人は多いです。

アマミノクロウサギ
アマミノクロウサギ。奄美大島においてネコによる深刻な捕食被害を受けている動物の一種。

また、今回の記事の参考文献の一つである『ネコ・かわいい殺し屋―生態系への影響を科学する』の中でも、野放しネコの捕食被害について発表しただけで研究者が嫌がらせや脅迫を受けたエピソードが紹介されています。

僕自身もこれまで「野放しネコを完全排除すべき」や「飼い猫の完全室内飼育を全飼い主に義務付けるべき」などの主張をする過程で、様々な反発を受けてきました。

その度に対応するのは面倒くさいので、実際に僕または僕の知人が受けた反論と僕なりの回答を以下にまとめました。

反論自体が無理解や感情論にもとづいているので多少重複しているものもありますが、その分網羅的になっているはずです。

外来種ネコ問題における反論と回答20選

ネコ狂信者

【反論1】猫は何千年も前からいるんだから外来種ではない!

回答:外来種であるかどうかは移入時期に関係ありません。

仮にファラオや豪族の時代からその地域にいたとしても、人間が持ち込んだ、もしくは品種改良で作り出したなら外来種です。

ネコ狂信者

【反論2】ネコは野生動物なので屋外にいて当然!殺処分されたり室内飼育を押し付けるのは間違い!

回答:人間が作り出した家畜なので本来いるべき野生動物ではありません。

チワワが山林をウロウロしていたりするのと同じくらい異常事態です。家畜は人間が管理すべきです。

ネコ狂信者

【反論3】うちの猫ちゃんは動物を襲ったりしない!屋外で自由にさせても大丈夫!

回答:襲います。

複数の研究や映像記録、目撃情報によって、野放しにされた飼い猫も動物を襲うことが証明されています。室内で飼ってください。

そもそも、在来種の捕食問題の前に、大切なペットを一時的にでも放り出すのは飼い主失格です。

ネコ狂信者

【反論4】猫ちゃんよりも人間の方が環境を壊している!

回答:僕は今ネコの話をしています。話を逸らさないでください。

そして、「外来種を移入してしまう」も人間が起こした環境破壊であるため、ネコ問題も人間が責任をもって対処すべきです。

ネコ狂信者

【反論5】交通事故など猫ちゃん以外の要因の方が在来種の命を奪ってる!

回答:他の問題があることは、ネコ問題を放置していい理由にはなり得ません。

例えば、人間の死亡原因には交通事故、生活習慣病、ウイルス、戦争などがありますが、あなたは死亡原因ワースト1位が解決するまで他の問題には一切取り組まないのでしょうか?

交通事故など他の問題に取り組みつつ、野放しネコの排除を実施するのは不自然でもなんでもありません。

ネコ狂信者

【反論6】稲だって外来種だ!お前は外来種だというだけで猫ちゃんを悪者にするのか!?

回答:外来種と侵略的外来種を分けて考えましょう。

外来種だから問題視しているのではなく、生態系や人間社会に重大な影響をもたらす侵略的外来種だから対処が必要だと主張しているんです。

外来種、侵略的外来種、特定外来生物の定義は以前の記事にまとめました。

この記事をよく読みこみ、「明治時代より前にいたから猫ちゃんは外来種ではない」や「猫ちゃんは特定外来生物じゃないから外来種ではない」のような恥ずかしい反論は二度としないようにしてください。

ネコ狂信者

【反論7】外来種に罪はない!

回答:罪はないけど害はあります。

プラスチックや放射性物質と同じです。それ自体は悪いことをしようという意思のないものですが、害があるから処理しなければいけません。

そもそも「罪」というもの自体が人間社会が勝手に作った概念なので、人間以外の動物に対して「罪を犯したからバツを与える」とか「罪がないから命を奪うな」と論じること自体がズレています。

ネコ狂信者

【反論8】猫ちゃんを人間都合で駆除したり閉じこめたりするのは可哀想だ!

回答:捕食される在来種も可哀想です。

それまでいなかった捕食者をいきなり人間都合で撒き散らされるわけですから、在来種たちも可哀想です。

また、車にひかれたり、捕食者に襲われたり、病気になるかも知れない野生環境にネコを放り出すことは「可哀想」ではないのでしょうか?

ネコが好きだというなら、屋外でネコに及ぶ危険についても考えて欲しいです。

ネコ狂信者

【反論9】猫ちゃんが鳥とか小動物を襲うのは弱肉強食という自然の摂理だから仕方ないだろ!

回答:「狩る側が強く狩られる側が弱い」という弱肉強食の理屈自体が、生物同士の関りのほんの一部しかとらえていないものであり、自然の摂理でもなんでもないです。

また、何度も言うようにネコは品種改良で人間が作り出した動物なので、その影響を”自然の摂理”とするには無理があります。

あと、僕はネコより強いですが、「弱肉強食」の理屈でネコを駆除しても良いのでしょうか?

ネコ狂信者

【反論10】エサをあげれば野良猫もノネコも動物を殺さないから餌付けすればいい!排除する必要はない!

回答:ネコは食べるため以外の目的で動物を殺すことがあります。

人間から普段エサをもらっている野良猫や飼い猫個体でも、屋外で動物を仕留めていることが複数の研究で確認されています。

むしろ、エサやりは一時的に栄養状態を良くすることでネコを増殖させ、外来種被害の悪化や事故などで死亡するネコの増加につながります。

自然環境や地域社会に悪影響を及ぼし、野垂れ死ぬネコの数を増やし、起こった被害や猫の命に対して責任をとらない。それどころか「猫を助けている」という優越感に浸る・・・。

これほど自己中心的な迷惑行為も珍しいです。

野放し猫へのエサやりは、無責任な偽善であり害悪です。どうしてもそのネコを助けたいなら、正当な飼い主になり完全室内飼育をしてください。

ネコ狂信者

【反論11】猫ちゃんを室内飼育できない人はどうすればいいんだ!

回答:そもそも完全室内飼育が実施できないペットを飼おうとするのが間違いです。

サメを飼うなら大きな水槽が必要なのと同じように、ネコを飼うなら十分に運動ができて脱走不可の屋内環境が必要なんです。

屋外で放し飼いにすることを前提にした飼育は適正とは言えず、そんな選択肢を検討する時点でいかなるペットを飼育する資格もありません。

ネコ狂信者

【反論12】猫ちゃんを怪物みたいに言うな!

回答:ほとんどの小動物にとって、ネコは捕食能力と繁殖能力が極めて高い化け物です。

人間にとってネコが怪物でないのは、僕たちの全長や体重がネコよりも遥かに大きいからです。

映画『ジュラシック・ワールド』でウー博士が言った”Monster is a relative term. To a canary, a cat is a monster.”という言葉を頭に刻んでおきましょう。

ネコ狂信者

【反論13】お前が猫嫌いだから猫ちゃんを悪者にしたり愛猫家を攻撃しているだけだろ!

回答:ネコは好きです。

子供の頃はイリオモテヤマネコのことを「イリオモテニャーニャー」って呼んでましたし、外来種問題に無知だった頃は野良猫と仲良くなるために鳴き真似を練習したこともあります。

ネコが好きだからこそ、生態系や地域社会に害がなく、ネコを危険から守れる完全室内飼育を推奨しているんです。

ネコ狂信者

【反論14】猫ちゃんは愛護動物だから、駆除や殺処分は犯罪のはずだ!

回答:野放しネコのエサやりや放し飼いこそ動物愛護管理の精神に反します。

確かに、一般人が勝手にネコを駆除したり、必要以上に残酷な方法でネコの命を奪えば、鳥獣保護管理法や動物愛護管理法に違反したり、器物損壊罪に問われる可能性があります。

ですが、行政やその許可を得た団体が行っている捕獲や殺処分は、生態系保全や公衆衛生などを目的に制限された範疇で行われています。

こうしたケースは、動物愛護管理法における”みだりに殺し又は傷つけた場合”には該当しないでしょう。

また、動物愛護管理法では、飼育動物による被害、みだりな繁殖、感染症などを防ぐよう努める必要があるとされています

不妊手術も予防接種も受けていないネコにエサをやるだけの人や、飼い猫を放し飼いにする人は、明らかにこれらの務めを怠っています。

これらの行為こそ虐待や遺棄として罰せられるべきではないでしょうか?

ネコ狂信者をはじめとする動物愛護過激派は「愛護」の部分だけ強調しがちですが、「管理」の部分を蔑ろにしてはいけません。

ネコ狂信者

【反論15】猫ちゃんがだいぶ前から暮らしているのに固有種が絶滅していない島もあるぞ!

回答:固有種が絶滅してからでは手遅れなのに、「絶滅していないから問題を放置していい」というのは、論理の組み立て方が完全にアンポンタンです。

ネコに捕食されながら個体数を保っている動物でも、他の要因が重なることでトドメを刺される危険があります(もちろん逆もあり得ます)。

手遅れになる前に野放しネコを排除するべきです。

ネコ狂信者

【反論16】希少種がいる島とかなら仕方ないとして、そうじゃない場所ならネコが屋外にいてもいいだろ!

回答:お忘れかもしれませんが、日本の国土そのものが数多くの固有種が生息する島です。

また、リョコウバトをはじめ、当初捕りつくせないほど沢山いたはずの動物が、人間の影響で絶滅した事例もあります。

何十年か後に、ハシブトガラスのような動物が同じ道を辿らないという保証はどこにもありません。

ネコ狂信者

【反論17】猫ちゃんが屋外からいなくなったらネズミが増えて問題になるぞ!

回答:ネズミ駆除など公的な利益のためにどうしてもネコを屋外に放つなら、徹底管理すべきです。

避妊手術・予防接種は必須として、マイクロチップによる個体識別、バイオロギングによる行動範囲や捕食行動のモニタリングもするべきでしょう。

どこで何を襲い、何匹子供産んで、どんな病気を媒介しているか分からない膨大な数のネコがウロウロし、ネズミ駆除にどれだけ効果があるかも不明・・。

そんな現状を「ネズミ対策」だけで正当化するのは馬鹿げています。

ネコ狂信者

【反論18】野良猫を見て癒されている人が沢山いるんだぞ!

回答:侵略的外来種を放置しなければ成立しない趣味や産業など擁護する価値はありません。

また、野良猫やノネコに癒されている人がいる一方で、ネコに捕食される在来生物に心を痛めている人も多いです。

さらに、野放しネコの多くがロードキル、感染症、餓死、他の捕食動物、動物虐待者などによって命を落としています。

野放しネコが提供する癒しの影には、在来種やネコたちの膨大な屍が積みあがっていることを忘れないでください。

ネコ狂信者

【反論19】なんでサメの発信者が猫ちゃんについて語ってんだ!お前には関係ない!

回答:ネコ問題は海の生物と無関係ではありません。

ネコが媒介するトキソプラズマは川や雨水を通じて海に流れだし、サメの獲物である海棲哺乳類にも悪影響を及ぼします。

実際に、絶滅危惧種のアザラシがトキソプラズマで死亡した報告や、トキソプラズマに感染したラッコがサメに襲われやすくなることを示唆する研究があります。

そもそも僕がどんな発信をするか口出しされる筋合いはありませんが、海の生態系保全のためにもネコ問題の対処が必要だという点はご理解ください。

ネコ狂信者

【反論20】猫ちゃんは神聖な動物である!猫ちゃんには人権がある!

回答:帰れ。

TNRは何も解決しない

ここまで色々な反論を見てきましたが、最期に紹介したいのがTNRにまつわる議論です。

TNRという言葉は、以下の三単語を表しています。

  • Trap
  • Neuter
  • Return

つまり、罠でネコを捕まえ、去勢手術を行い、元いた場所に戻すという取り組みを指します。

TNRは不幸な目に遭うネコを減らし、ネコによって起こる騒音(鳴き声)や糞尿の被害を抑えることができるとして様々な地域で実施されています。

そのためか、

ネコ狂信者

TNRされたネコちゃんなら外にいてもいいだろ!

という反論を受けることもあります。

しかし、TNRは生態系保全や公衆衛生の問題に対し何の解決にもなっていません。

まず、去勢をしたところでネコの狩猟本能は削がれませんから、生きている間は在来種を狩り続けます(去勢したら大人しくなるという言う人もいますが根拠のないデマです)。

また、去勢手術のついでに予防接種を受けたとしても、ほとんどがその一回で終わってしまい、継続的な接種を受けることはありません。

結果的に、トキソプラズマや狂犬病のリスクがあるネコが野放しのままになります。

穿った見方かもしれませんが、TNRは

可愛い猫ちゃんの殺処分は許せない!猫ちゃんが周りにいる社会の方が絶対いい!でも糞尿被害とかで迷惑に思っている人もいるのは事実・・・。でも全部の猫は飼い切れないし・・・。

という人が行き着いた現実逃避・責任放棄ではないでしょうか?

在来種の捕食などの生態系被害が全く考慮されていませんし、殺処分という直接的な手段を避けるだけで救った気になるのはただの自己満足です。

TNRは人間を気持ち良くすることはできますが、在来種もネコも救わず、ネコ問題の根本的な解決にはなり得ません。

参考文献

※本記事は2022年3月までにWebサイト『The World of Sharks』に掲載された記事を加筆修正したものです。

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