オーストラリアで被害増加?サメ事故の最新トレンドと事故を防ぐ方法とは?【危険生物】【獣害事件】

世界中のサメによる事故をまとめている、International Shark Attack File(ISAF)が昨年2025年に起こったシャークアタックのデータを公開しました。

結論から言うと、2025年はその前年より事故件数・死者数ともに増えており、海外の一部メディアでは「128%増加」などと、急上昇したかのように思わせるタイトルで報じられています。

しかし、サメと適切な距離感を保って共存していくためには、ただ事故が増えた減っただけ見るのではなく、どんな事故がどこで起きていて、長期的なトレンドはどうなのか?というところまで見る必要があります。

今回は2025年に発生したシャークアタックというテーマで、ISAFから公開された情報を元に解説をしていきます。

目次

解説動画:オーストラリアで被害増加?サメ事故の最新トレンドと事故を防ぐ方法とは?【危険生物】【獣害事件】

このブログの内容は以下の動画でも解説しています!

※動画公開日は2026年4月4日です。

International Shark Attack File(ISAF)とは?

まずはISAFと、シャークアタックの種類について解説します(2024年度版の記事を読んだ方は復習だと思ってください。)。

ISAFはサメ事故のデータベース

ISAFは米国のフロリダ州立自然史博物館が管理しているサメ事故のデータベースです。世界中で発生したサメ関連事故をまとめて、そのデータを公開しています。

多くのサメの専門家やサメ愛好家が

人間にとって危険なサメはごく一部

サメよりも雷で死亡する人の方が多い

などと紹介する時、このISAFのデータを根拠にしていることが多いです。

もちろん全ての事故を漏れなく網羅しているわけではありませんが、シャークアタックの統計データに関しては現状最も信頼できる情報ソースの一つだと思います。

ISAFにおけるサメ事故の分類

ISAFではサメ関連と思しき事故を「shark-human interaction」としています。

この中にはサメが人に噛みついた事故だけでなく、サメがボートを噛んだだけの事故や、サメが人間の遺体を食べたケースなども含んだ、とにかくサメ関連と思われる事故の件数です。

この「shark-human interaction」はさらにカテゴリー分けされるのですが、その中でも特に重要なのが「Unprovoked Bites」と「Provoked Bites」の二つです。

「Provoke」は誘発する・引き起こす・挑発するなどを意味する英単語です。

「Unprovoked Bites」は「provokeされていない噛みつき」、つまり人間側がエサや攻撃でサメを刺激していないのに噛まれてしまったケースを指します。なお、あくまで自然界で起きた事故が対象です。水族館内でサメが人を噛んだ事故には「Public Aquaria」という別カテゴリーが用意されています。

「Provoked Bites」はその逆です。ダイバーがサメを追いかけたり捕まえようとしたり、スピアフィッシングや餌付けをしていたり、人間がサメを刺激するような活動中に噛まれた事故などを指します。ただし、必ずしも被害者の自業自得というわけではないのでご注意ください。

この二つ以外の事例についても複数のカテゴリーがあるのですが、僕が紹介する際は「その他」にまとめさせてもらっています。

サメの生態への理解を深め、更なる事故を防止するためには、人間側が攻撃を誘発していないのに野生のサメに噛まれた事故、「Unprovoked Bites」のトレンドや詳細を知っていくことが重要となります。

2025年はサメ事故件数・死亡者数ともに増加

では、早速シャークアタックの件数を見ていきましょう。

ISAFの調査対象となった2025年の「shark-human interaction」は105件でした。そのうち、「Unprovoked Bites」が65件、「Provoked Bites」が29件、「その他」11件という結果でした。

2025年に発生したshark-human interactionsの内訳。ISAF『The ISAF 2025 shark attack report』をもとに作成。

こちらの数字を去年と比較してみましょう。

同じくISAFがまとめた2024年の「shark-human interaction」は合計88件、そのうち「Unprovoked Bites」が47件、「Provoked Bites」が24件、「その他」17件という結果でした。

なので昨年度との比較だけで言えば、「Unprovoked Bites」が増加してしまっていることになります。

2024年と2025年のshark-human interactionsの件数比較。

続いて、「Unprovoked Bites」中の死亡件数です。

「Unprovoked Bites」65件のうち、死亡事故は9件という結果でした。昨年の「Unprovoked Bites」中の死亡事故件数は4件だったので、短期的なトレンドとしてはこちらも増えてしまっていると言えます。

2025年に発生したUnprovoed Bites中の死亡者数を示すグラフ。ISAF『The ISAF 2025 shark attack report』をもとに作成。

では、どの地域でどんな「Unprovoked Bites」が発生してしまったのか?地域別データなどを元に紐解いていきます。

最も多いのがアメリカ合衆国の25件、次いで多いのがオーストラリアの21件、さらにバハマ5件、ニュージーランド3件と続き、それ以外の国は一件ずつとなりました。

2025年に発生したUnprovoed Bitesの地域別件数。ISAF『The ISAF 2025 shark attack report』をもとに作成。

オーストラリアでの死亡事故が増加

今回特に注目すべきはオーストラリアでの事故件数です。

米国が1位であることは正直例年通りなのですが、今回のオーストラリア21件というのは、同地域の過去5年間の平均13件と比べても多いです。

さらに他の国の死亡事故は0~1件なのに対し、オーストラリアだけ5件と断トツになっています。

ここからは当時のニュース記事などを元に、各死亡事故について簡単に紹介します。

豪州1件目の死亡事故

最初に事故が起きたのは2025年1月、場所は南オーストラリア、アデレードから車で8時間ほど離れたビーチです。

サーフィンをしていた28歳の男性がサメに襲われ、そのまま行方不明になりました。噛み跡のあるサーフボードは回収されましたが、遺体の発見には至っていません。

襲った種に関する確定的な情報は確認できませんでしたが、事故が起こる数時間前に同海域でホホジロザメが目撃されていたことなどから、ホホジロザメによるものと推測されています。

ホホジロザメ

豪州2件目の死亡事故

2件目の事故は2月、クイーンズランド州のブライビー島で発生しました。

夕方4時45分頃、ビーチで泳いでいた17歳の少女がサメに襲われました。

この女性は救出されたものの、上半身をひどく損傷しており、15分後には死亡が確認されました。

豪州3件目の死亡事故

3件目の事故は3月、場所は西オーストラリア州南部のビーチです。

サーフィンをしていた37歳の男性が、岸から50mほどの地点でサメに襲われ、行方不明になりました。

こちらはドローンで撮影された映像などの複数の情報から、ホホジロザメによる事故の可能性が高いです。

豪州4件目の死亡事故

4件目は9月、シドニーの北側のビーチにて発生。

サーフィンをしていた57歳の男性が岸から100mほど離れた場所でサメに襲われ死亡。男性は手足を複数噛み千切られ、サーフボードは真っ二つに割られていました。

サーフボードを確認した専門家は、3.4~3.6mほどのホホジロザメによるものだという見解を示しています。

豪州5件目の死亡事故

最後の事故は11月、ニューサウスウェールズ州にあるクラウディベイ国立公園のビーチで、20代のスイス人カップルがサメに襲われました。

この事故ではイルカの群れを撮影していた女性がサメに複数回噛まれて腕を失い、さらに彼女を助けようとした男性の方も脚を噛まれてしまいました。

男性はどうにか女性と共に岸まで戻って助けを呼び、男性の方は一命をとりとめることができましたが、女性の方は帰らぬ人となりました。

現地当局の調べによれば、この二人を襲ったのはオオメジロザメとされています。

オオメジロザメ

ここまで名前の挙がったホホジロザメとオオメジロザメは、イタチザメというもう一種のサメと共に、俗に”BIG3″と呼ばれる三大危険ザメです。というよりも、Unprovoked attackのほとんどがこの3種によるものとされています。

オーストラリアの沿岸にはこれら3種全てのサメが生息しているため、現地で海水浴やマリンスポーツが盛んになる10~4月くらいの時期に、どうしても一定数事故が起きやすいようです。

しかし、オーストラリアではその分、シャークアタックに対する対策が実施されていることも確かです。

今回のオーストラリアでの事故件数増加についてISAFの管理者の一人であるギャビン・ネイラー氏は、以下のようにコメントしています。

If these bites occurred anywhere other than Australia, they would probably have resulted in even more fatalities. Their beach safety is second to none. Within minutes of a bite, they’ve got helicopters airborne ready to respond.

(訳)これらの事故がオーストラリア以外の場所で発生していたら、おそらくさらに多くの死者が出ていたでしょう。彼らのビーチ安全対策は世界トップクラスです。咬傷が発生してから数分以内に、ヘリコプターを飛ばして対応準備を整えています。

Global shark bites return to average in 2025, with smaller proportion in the United States』より引用

サメによる死亡事故のリスクは、そこに生息するサメの危険性だけで決まるわけではありません。ライフガードが配備されているか、救急ヘリなどがすぐに駆け付けられるか等、社会的な要因にも左右されます。

オーストラリアでは一定数の不幸な事故は起きてしまっているものの、その対策も実施されているということは認識しておいていただきたいです。

南アフリカでドタブカによる死亡事故

個人的に気になったので紹介したいのが、南アフリカでの死亡事故です。

南アフリカと言えば、先ほども触れた危険ザメ、ホホジロザメが数多く生息する場所であり、シャチによるホホジロザメ狩りが話題になった場所でもあります(詳しくはコチラ)。

しかし、今回紹介する事故を起こしたのはホホジロザメではなく、ドタブカという比較的危険性が低いとされるサメでした。

2025年7月、南アフリカのクワズール・ナタール州で、イワシの群れの近くを泳いでいた3人の漁師のうち一人が、サメに襲われて水中に引きずり込まれました。

この時一緒にいたうちの一人が助けようとしましたが、少なくとも2尾のサメに阻まれてしまい、岸まで戻らざるをえなかったそうです。

襲われた男性は行方不明となっていましたが、後にサーフゾーンでサメの噛み跡のついた遺体が回収されました。

どのような経緯・手法で同定されたのか詳細は不明ですが、この事故で漁師を襲ったのがドタブカとされています。

ドタブカはメジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属に分類されるサメです。危険ザメ”BIG3″のオオメジロザメと同じグループのサメで確かに大型にはなりますが、そこまで危険視はされていませんでした。

ドタブカ

今回の事故を受けてISAFは、彼らの大きさと浅井沿岸域を泳ぐ傾向を考えれば、襲った種が不明とされているいくつかの事故はドタブカによるものである可能性もあるという見解を示しています。

なお、2025年にはイスラエルのビーチで男性がドタブカに襲われ死亡した事故が発生していますが、これは人間側が攻撃を誘発した「Provoked Bites」にカテゴライズされています(詳しくはコチラ)。

サメの事故は依然として稀

オーストラリアを中心に去年よりもシャークアタックが増加した2025年でしたが、長期的なトレンドとしては目立った増加はありませんでした。

2025年の件数は30年間の平均から大きく外れず

ISAFによれば、過去30年間におけるUnprovoked bitesの平均件数は71件、そのうち死亡事故は平均6件でした。

2025年の件数と比較してみると、全体件数はむしろ少なく、死亡事故件数が微増といったところです。

短期的なスパンだけ見れば2025年は増加傾向でしたが、長期的なトレンドからは大きく外れておらず、サメの事故件数はそこまで変動していないことが分かります。

ISAFもプレスリリースの中で、「溺れて亡くなる人数は米国だけで年間4000人以上、落雷で亡くなる人数は世界で24,000人程と推定されている」としたうえで、サメによる事故が以前として極めて稀であることを強調しています。

The chances of being bitten by a shark remain extremely low. Drowning and being struck by lightning are far more common. According to the World Health Organization, drowning is the third leading cause of death from unintentional injury worldwide. In the United States alone, the CDC reports over 4,000 drowning deaths annually. Globally, lightning causes an estimated 24,000 fatalities each year, with about ten times as many injuries.

(訳)サメに噛まれる確率は極めて低いままです。溺死や落雷による被害のほうがはるかに一般的です。 世界保健機関(WHO)によると、溺死は世界全体で非意図的な外傷による死因の第3位となっています。
アメリカだけでも、疾病対策センター(CDC)の報告では毎年4,000人以上が溺死しています。 世界全体では、落雷による死者は毎年推定24,000人に上り、負傷者はその約10倍にのぼるとされています。

Global shark bites return to average in 2025, with smaller proportion in the United States』より引用

同じ野生動物による被害を例に出すと、2025年に発生したクマの死亡事故は、”日本国内で”13件でした(環境省発表の速報値)。世界全体のサメによる死亡者数よりも、日本国内に限定したクマによる死亡者の方が多いのです。

もちろん個々のシャークアタックが恐ろしく、悲惨なことは認めますが、サメの危険性や駆除の必要性などを論じる際は、こうしたより広い視野を持つべきだと思います。

サメ事故を防ぐためのポイント

それでもサメが怖いという方向けに、ISAFが発表している内容を元に、シャークアタックを防ぐための注意点を紹介しておきます。

1.海に入る時は誰かと一緒に行動すること

単独でいる時の方が襲われやすい傾向があるとされており、サメに関係なく何かあった時に助け合えるので、海では誰かとっ所に行動するべきだと思います。

2.夜明けや夕方に泳ぐことを避ける

絶対ではありませんが、大型のサメが活発になる時間帯とされています。

3.釣りをしている人の近くで泳がないようにする

魚の暴れる音や魚から漏れた血が、お腹をすかせたサメを呼び寄せる恐れがあります。

4.ダイビングツアーに参加する時は、餌付けをしていないものを選ぶ

餌付けをすることによってサメが人間と食べ物を関連付け、不幸な事故につながるリスクを高める恐れがあります。これは諸説ありますし種にも寄ると思いますけどね。

この記事を読んでいるあなたがサメに噛まれるリスクは想像するより非常に低いはずですが、どうしても不安な方は、これらの点に注意して頂ければと思います。

参考文献

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