『ムーンシャーク』のネタバレあり感想&サメ解説【BGサメ映画レビュー】

邦題ムーンシャーク
原題Shark Side of the Moon
公開年2022年
監督グレン・キャンベル/タミー・クレイン
出演マキシ・ウィトラク/エゴ・ミティカス/タニア・フォックス
制作国アメリカ
ランクB級(トンデモ設定や雑なCGなどのツッコミどころを楽しむ作品。)
ストーリー★★★☆☆
演出や絵作り★★☆☆☆
サメの造形★★★☆☆

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目次

あらすじ

時は米ソ冷戦の時代。ソ連の科学者たちは対米生物兵器として、高度な知能と高い戦闘力を持つサメ人間兵士”ハイブリッドシャーク”を作り上げた。

しかし、ひょんなことからハイブリッド達が研究施設から脱走。ハイブリッドによる殺戮の中で生き残った研究員セルゲイは、スペースシャトルにハイブリッド達を乗せたまま月へと旅立ち、地球からサメ人間の脅威は消し去られた。

時は流れ、宇宙開発技術が発達したアメリカ。船長ニコール率いるクルー達が宇宙船で月に向かう途中、原因不明の障害により航路を妨害され、月の裏側へと不時着してしまう。

船が故障して地球との連絡も取れない中、ニコールたちは帰還する方法を模索するが、月面探索中に謎の生物に襲撃される。それは、より凶暴性と知能を発達させ、月面に文明まで築き上げたハイブリッドシャーク達だった・・・。

これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。

見どころ・ツッコミどころ

久しぶりのアサイラムらしい作品

ダブルヘッド・ジョーズ』や『シャークネード』などでお馴染みアサイラムによるサメ映画です。

ここ最近は『シャークストーム』や『シャーク・クルーズ』など普通のサメが出てくる作品ばかりだったので、「ネタ切れで普通路線に切り替えたのかな」と心配(?)していたのですが、ブランクを取り戻すようにぶっ飛んだ映画を作ってくれました。

しかも、アサイラムなりに気合を入れて作っていることが随所で伺えます。

まず、少なくとも前半~中盤にかけてのストーリーがちゃんとしています。

サメ映画では「とりあえず冒頭に捕食シーンを持ってきてサメ映画感を出すけど本編にはあまり関係ない」という尺稼ぎ的な展開も多いのですが、本作ではサメ人間が月に行くまでの経緯がきちんと描かれ、しかもそこで登場したセルゲイが後半でも活躍するという、それなりに作りこまれた流れになっています。

舞台が月面ということもあり、無関係な人間がサメに喰われるだけの無駄なシーンもありません。

荒唐無稽な設定ながら物語は全体的にシリアスであり、制作陣なりに「サメVS人類の月面戦争」という主題に向き合って作ってくれたのでしょう。

次に、サメ人間たちのビジュアルが独創的で良い仕上がりです。

クリーチャーとして普通にカッコいいデザインですし、筋肉ムキムキなものばかりかと思えば、細身の巨乳女ボスやジンベエザメの怪物など多様性に富んでいるのも魅力的です。

背ビレを出しながら月面を掘り進んで襲ってきたり、脚を噛み千切ったうえで傷跡を焼いて拷問するなど、サメという要素を活かした見所もあります。卵の中で小刻みに動くチビのサメ人間たちも可愛いらしいです。

また、トニックイモビリティや単為生殖などサメに関するマニアックな知識を作中に取り入れるなど、アサイラムなりのサメ愛が感じられるのも好印象です。

CGや細部の雑さは健在

ここまで肯定的な評価をしてきましたが、やはり万人におススメできる作品ではありません。

まず、CGやカメラワークが相変わらずチープです。

この点はB級サメ映画のほぼ全てに言えることではありますが、本作は月面という特殊な舞台設定のため、それがかなり目立ってしまっています。

前半の宇宙船のCGなどはそこまで悪くなかったのですが、乗組員が月面を歩くシーンの合成が信じられないほどチャチです。しかも、そんな加工をするコストも惜しいのか、登場人物がアップで話したり闘ったりするシーンでは、ただ真っ黒なだけの背景が用いられています。

さらに、月面の無重力感(より厳密に言えば重力が小さいだけ)を表すために登場人物を妙にスローにしている様子はもはや滑稽です(なお、同じ環境であるはずのハイブリッドのアジト内では途端に普通の歩き方になります)。

ついでに言えば、ニコールたちの通信機器の見た目がどう見てもairpodsですし、セルゲイの使う呼吸装置がただの酸素チューブにしか見えません。

ストーリーについても、「何故ニコールたちは月に向かったのか?」や「何故アクーラは他のハイブリッドと違いほぼ人間の姿なのか?」などが説明されないまま話がどんどん進みます。

一番衝撃的なのがラストシーンです。

シュモクザメ人間と闘っている途中のニコールたちをサメ人間ボスであるツァリナが次々に投げ飛ばし、一行はジンベエザメの怪物に飲み込まれてしまいます。その後、シャトルの爆発でマグマが大噴火。その勢いでジンベエザメが地球まで吹っ飛び、丸焦げに燃え尽きたジンベエザメの中から救命ボートに乗ったニコールたちが登場します。

この流れ自体も意味不明ですが、地球への戻り方についての会話が一切なく、ツァリナも一言も発しないまま唐突に投げ技を披露するので、色々な意味で理解が追いつきません。

サメ映画らしいというかアサイラムらしい展開ではあるものの、表面上シリアスに進めていたのに急に怒涛のトンデモ展開にしてしまうのは、いささか投げやり感が強いと感じました。

その他見どころや豆知識

  • セルゲイが育てたハイブリッドの少女アクーラ(акула)の名前は、ロシア語で「サメ」を意味します。
  • 管制塔などのサポートもなく、たった一人の人間が飛ばせる状態でシャトルが置いてある謎仕様。
  • エンジニアが体調不良というショボい理由のため発射の直前で乗組員が交代することに。月に行くという重大ミッションの前にこんなラフな人員変更が許されるのか。
  • 何故月の石で作った武器がサメを切り裂けるのか謎。
  • サメの単為生殖の話を聞いたマイケルのセリフ「自然は道を見出す(Nature finds the way)」は、『ジュラシック・パーク』のマルコム博士の「Life finds a way」のオマージュです。
  • 無線を使うとサメに位置を探知されると言われたのに船に連絡するニコールと、「船で待機しろ」と言われたのに船から出てくるエリー。人の話を聞かない奴が多すぎます。
  • ヘンリーが股の間にボンベを挟んでサメに突撃するシーンがシュール過ぎる。しかも、ハイブリッドを複数倒す設定ですが、爆発がショボ過ぎて一匹しか倒せていないように見えます。
  • ハイブリッドは卵を産む設定なのに、何故か赤ちゃんをそのまま出産するアクーラ。

サメに関する解説

サメの造形

人型になっている時点でリアリティも何もあったものではありませんが、怪物として良いデザインかどうかで言えば合格点でした。上半身裸だったり鎧を着ていたり、女部族のような衣装を着ているなど、ディテールに多様性があるのも面白かったです。

ボスであるツァリナはアオザメかヨシキリザメがモデルかと思います。吻の尖り方や真っ黒な眼はアオザメっぽいのですが、細身の体から受ける印象から、ヨシキリザメ説を捨てきれません。

また、ホホジロザメやシュモクザメがモデルと思しきサメ人間が多数登場する中、何ザメがモデルか分からない一角獣のようなサメ人間が出てきます。

もしかしたらノコギリザメがモデルなのかもしれませんが、それならもっとトゲトゲしていたと思います。他の候補としてはミツクリザメが挙げられますが、あれをミツクリザメと認めてしまったら負けな気がします。

サメの行動

月面で直立二足歩行するという常軌を逸したサメ(もはやサメなのか?)を登場させる本作ですが、作中にはサメの生態に言及する場面が度々ありました。

トニックイモビリティ

まず、仰向けになったサメが動かなくなる擬死(トニックイモビリティ)について。この行動は実在します。

サメの吻先を手で押さえた状態で逆さまにすると、麻痺したように動かなくなることがあります。

  • リラックスしている
  • 恐怖で動けなくなっている
  • 捕食者からの防御である
  • 交尾に関係がある

など様々な説がありますが、そのメカニズムについてははっきりとは分かっていません。

また、作中ではサメ全般に起こるような言い方がされていますが、どのサメでも起こる現象ではありません(というより、起こるのか実証できていないサメが多いと思います)。

実際のトニックイモビリティの様子はコチラ(YouTube動画)

単為生殖と無性生殖

次に、サメ人間たちの繁殖について。本作のサメたちは単為生殖で数を増やしている設定ですが、これも現実に起きています。

単為生殖を端的に言えば「メスだけで子供を産む」行為であり、ウチワシュモクザメ、トラフザメ、ドチザメ、カマストガリザメなど複数のサメで記録があります。

ただし、作中では単為生殖(parthenogenesis)と無性生殖(asexual reproduction)を同一の現象のように説明していますが、これは誤りです。

無性生殖では親と同じ遺伝子の組み合わせを持つ子供(いわゆるクローン)を作りますが、単為生殖は精子を用いないだけで卵の減数分裂が起こるため、遺伝子の組み合わせが変わります。

また、本作のハイブリッドシャークたちは卵を産む設定ですが、作中に登場するサメ人間のモデル(ホホジロザメ、シュモクザメ、アオザメorヨシキリザメなど)は全て胎生種です。

その他サメの解説

本作『ムーンシャーク』の原題は『Shark Side of the Moon』なのですが、実は同名の学術論文が存在します。

「月の照度とシャークアタックの頻度に関連性はあるか」という真面目な内容で、一定の相関関係があることが分かっています(因果関係は不明)。

以下の記事で詳細を解説しているので、気になる方は是非読んでみてください。

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