『ディープ・ライジング コンクエスト』のネタバレあり感想&サメ解説【BGサメ映画レビュー】

邦題ディープ・ライジング コンクエスト
原題Shark Attack 3: Megalodon
公開年2002年
監督デヴィッド・ワース
出演ジョン・バロウマン/ジェニファー・マクシェーン/ライアン・カトロナ
制作国アメリカ
ランクB級(トンデモ設定や雑なCGなどのツッコミどころを楽しむ作品)
ストーリー★★★☆☆
演出や絵作り★★☆☆☆
サメの造形★★☆☆☆

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目次

あらすじ

メキシコのリゾートビーチで監視員をしているベンは、海底ケーブルに突き刺さったサメの歯を発見する。

それは遠い昔に絶滅したはずの巨大ザメ、メガロドンの幼魚の歯だった。

ベンからメガロドンの情報を受け取った古生物学者キャットは調査を開始。しかし、メガロドンの幼魚によって一人また一人と犠牲者が出てしまう。

さらに、海底ケーブルを敷設したエイペックス社が、ケーブルの漏電がサメをおびき寄せて死亡事故を起こしていると知っていながら隠蔽していたと判明。

ベンたちは被害を食い止めるためにメガロドンの駆除に向かうが、彼らの前に全長20mを超える成魚のメガロドンが立ちはだかる・・・!

これ以降の記載は映画の重要部分についてのネタバレを含みます。鑑賞前にネタバレを知ってしまったことに対する責任は一切負いかねますので、予めご了承ください。

もはや続編でも何でもないメガロドン映画

本作は「南アフリカで頻発するシャークアタックの裏にある陰謀に迫る」という内容のクライムアクション系サメ映画『シャークアタック』シリーズの続編3作目ということになっています。

しかし、もはやキャラクターから舞台設定に至るまで全てが過去作と無縁であり、全く無関係なメガロドン映画と考えた方が良いでしょう(実際この映画を初めて見た時、まさか『シャークアタック』の続編だとは思いませんでした)。

ヒロインを演じているのは一作目と同じジェニファー・マクシェーンですが、一作目ヒロインのコリンと本作のキャットは全くの別人であり、ストーリー上は何のつながりもありません。

そんな本作は太古の巨大ザメ・メガロドンを敵役に置きながら、そのストーリーは古典的なサメ映画の流れに沿っています。

作品の前半と中盤はメガロドンの幼魚(ということになっているが映像上はただのホホジロザメ)がビーチで人々を食い荒らすという内容で、巨大ザメ(成魚)が暴れ回るのは割と後半です。

同時期に作られた『メガロドン』や『シャーク・ハンター』、および後に作られる本格メガロドン映画『MEG ザ・モンスター』などでは深海探索や海底基地などのアドベンチャー要素を取り入れているのに対し、本作の全体的な雰囲気は一般的なサメ映画とそこまで変わりません。

映像面のチープさが目立つ

ストーリーは可もなく不可もないオーソドックスなサメ映画ですが、問題はその映像クオリティでしょう。

「絶滅していたはずの古代ザメが襲ってくる」という設定にもかかわらず、その映像の90%はホホジロザメのドキュメンタリー映像を流しているだけであり、しかも画質も色味もバラバラなので文字通り素材の寄せ集め感がすごいです。

本作の肝であるはずの巨大メガロドンについても、ホホジロザメの映像が大きく見えるように俳優や船をクロマキー合成しているか、ドアップのアングルでゆっくり泳ぐホホジロザメの映像を流して「巨大ザメが泳いでいる」という雰囲気を出すだけ。

合成自体もチャチな上、同じ素材を何度も使いまわしているため非常にチープな仕上がりになっています(ついでに言えば、『シャークアタック』と『ディープ・ライジング』で使われた素材も再利用されています)。

特に、恋人からライフジャケットを奪い取った眼鏡男と、クルーザーから自分だけ逃げだそうと水上スキーに乗った悪役が、そのままメガロドンの口にストレートインしていく様は必見です。

さらに、最後にメガロドンが魚雷で吹き飛ぶシーンをよく見てみると、同じヌー・イメージ社製作の『オクトパス』でタコが爆発する時のCG映像が使いまわされています。吹き飛ぶ肉片がどう見てもタコ足であり、もはやクオリティ以前の問題です。

シャークネード』のようにふざけて作られたふざけた作品ではなく、ある程度真面目に作られたふざけたクオリティの作品を観たいという方に、本作はかなり刺さるのではと思います。

その他見どころや豆知識

  • 本作の主人公ベンを演じたジョン・バロウマンは、後に英国の大人気SFドラマ(かつ僕が大好きな作品)である『ドクター・フー』シリーズにてジャック・ハークネス役を演じています。
  • 船の上で登場人物が会話するシーンにて、どの場面でも背景の海が全く動いていません。
  • カジキと熱いファイトを繰り広げるオッサンの後ろで激しくイチャつく男女。どういう構図だよ。
  • 手に持った歯を撮影するだけで、何故か手が映っていない白無地背景の写真が生成される最強カメラ。実在するなら僕も欲しい。
  • 普通サイズのサメにたった数回体当たりされるだけで『ジョーズ』のラストシーンみたいに浸水を始めるボート。絶対不良品でしょ。
  • 「君のマ〇〇を食べたい」という衝撃的な口説き文句。なお、この後ベンはキャットとの濃厚なラブシーンを披露していますが、演じているバウロマン氏は自分がゲイであることを公言しています。
  • 狙いも定めずに手榴弾を投げ込んでいく間抜けなトーリー。
  • 何故か救命胴衣もつけずに海に飛び込んでいく間抜けな乗客たち。
  • エアロックなどないように見えるのに、ハッチを開けても内部に浸水しない潜水艦。どういう仕様?

サメに関する解説

サメの造形

先述の通り、メガロドンという設定でありながら、そのほとんどはドキュメンタリー映像のホホジロザメでした(最後のシーンだけオリジナルのCGになります)。

本作が製作された当時は「メガロドンはホホジロザメの祖先」という説が主流だったはずなので(作中でもそのように言及されている)、「幼魚という設定ならホホジロザメが泳いでいるだけの映像で問題ないでしょ」という考えに至ったのだと思います。

メガロドンの正確な姿形はこの記事を書いている時点でも分かっていませんが、現在「メガロドンはホホジロザメの祖先」という説は否定されており、歯から想定されるアゴの大きさなどを考慮すればもっと吻が短いサメだったという推測もあるので、本作のようにホホジロザメと瓜二つのサメではなかったと思われます。

ホホジロザメがメガロドンの子孫という話は現在主流ではありません

サメの行動

本作で一番の問題点はサメの唸り声です。

このサイトにおけるサメ映画レビューで何度も触れていることですが、サメは吠えません。

前作『ディープ・ライジング』ではライオンの唸り声のようだった音なのに対し、本作はブチ切れた雄牛のような声で、その滑稽さが増していました。

また本作の設定について、メガロドンが出現した理由を「海底ケーブルから漏れた電磁波が海溝で生き延びていたメガロドンを引き付けてしまった」としていますが、もしそれが本当ならメガロドン以外のサメも多く集まってくる気がします。

サメが海底ケーブルを攻撃してしまう事例は過去にあったようですが、サメが電気を感じ取るのに使うロレンチーニ器官は比較的近い場所の電気を感じ取るため、深海の奥底からメガロドンだけを都合よく誘き寄せることは考えづらいです(そもそも僕はメガロドンが深海で生き残っているという説に懐疑的です。詳しくはコチラ)。

ヨゴレのロレンチーニ器官。

その他サメの解説

ビーチで素っ裸になり交わっているカップルにサメが近づくシーンにて、イタチザメの映像が出てきてメガロドンに襲われたことになっていますが、その後ベンたちが調べているサメがイタチザメではありません。

顔つきが違いますし、歯が細長い形をしています(イタチザメはニワトリの鶏冠やハートに見える独特の形状)。

さらに、そのサメを見たベンが「Sandtiger shark(シロワニ)」と発言していますが、全然シロワニではないですし、日本語字幕では「スナザメ」という未知のサメの名前が登場します。もう何もかも違う!

さらに言えば、サメが食い千切られた場合はサメは水面に浮かぶことなく沈むはずです。

イタチザメ
シロワニ

本作のシリーズ作品

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